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王妃になりたかったのではありません。ただあなたの妻になりたかったのです。  作者: 鳴宮野々花@書籍4作品発売中


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11. 求愛

「どうでしたか?今日のレストランは」

「……ええ、とても素敵なお料理ばかりでしたわ。……本当にありがとうございました、ジェレミー様。この数ヶ月、たくさん楽しい思いをさせていただきましたわ」

「……?」



 翌週お会いした時、私は今後のことをジェレミー様にお話ししようと決意していた。このままの頻度でお会いしていたら、きっと本気で好きになってしまうと思ったから。


 私の物言いに、ジェレミー様は怪訝な顔をした。


「どうしたんですか?まるで今日で終わりみたいな言い方をなさって」


 うちの前で馬車を降りて、私の手を取り優しくエスコートしながら、ジェレミー様がそう言った。


「……ええ、その通りですわ。終わりといっても、もちろんこれからもジェレミー様は、私にとって大切なお友達です。だけど……、もうこんなに、私を心配してしょっちゅう来てくださらなくても大丈夫ですわ。おかげさまで、もう充分に立ち直りましたから。でもまた時々は、お会いできたら嬉しいですわ。その時は学園時代の皆で、ぜひお茶をしましょうね」


 私は努めて明るく言った。だけど反対に、ジェレミー様は神妙な表情をする。


「……私がこうしてあなたを誘って出かけるのは、迷惑ですか?」

「い、いえ、そんなつもりは全く。……ただ、ジェレミー様の貴重なお時間を、これ以上私のために使っていただくのが申し訳ないのです。……それに」

「それに?」

「……っ、」


 い、……言えるわけがない。これ以上お会いしていたら、あなたを好きになってしまいます、なんて。困らせるだけだわ。


「ジ、ジェレミー様には、想いを寄せる方がいらっしゃるのでしょう?その方のためにお時間を使った方がいいと思いまして」

「……え」

「ジェレミー様はとても素敵な方ですわ。あなたと一緒に過ごす時間が増えれば、もしかしたらその方も、あなたに想いを寄せてくれるかもしれませんもの」


 私でさえ、そうなりそうですし。


「……そうでしょうか」

「ええ!……ですから、その、」


 これ以上何て言えばいいのか分からず、私は口ごもってしまう。


「一緒に過ごす時間が増えれば、私を想ってくれるようになるでしょうか」

「な、なると思いますわ、きっと」


(……本当にお好きなのね、その方のことが)


 ジェレミー様の呟いた言葉に、ほんの少し、胸がツキリと痛んだ。


「それは、数ヶ月前よりもあなたが私のことを意識してくれている、という風に解釈してもいいのですよね?」

「そ……、……。……え?」



 ん?私?



 よく意味が分からずに彼の顔を見上げると、ジェレミー様はニコニコして言った。


「でしたら、あなたのアドバイスどおりにこれからも頑張ってみます、フィオレンサ嬢。いつか、あなたが私を心から想ってくださるようになったら、」


 そう言うとジェレミー様は、私の両手を優しくそっと握った。


「っ?!」

「その時は、私と結婚して下さい。あなたの愛を得られる日まで、私はこれからもずっと、あなたを愛し続けますから」

「……。…………は、」

 

 ……え。





 …………え?!






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