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ハンバーガーショップの店員になって店を経営するゲームだった。またハンバーガーかと思う。横浜から戻り空いた時間、さっそく金朗はそれをやった。客に納豆バーガーなんてものを食わせることもできた。しなかったが居心地の悪い店を経営することもどうやらできたらしい。
ふと、時計を見た。七時四十五分だった。それから、ヴェルニー公園に金朗は向かうことにした。特に理由はない。急な思い付きだ。
アパートを出て、夜空を眺める。もう暗いのか、と金朗は思う。山の辺に星が浮かんでいる。一等星だ。これでいいのか、と思う。これに、意味があるのか?
――日記を書けよ。
これも思いつき。だが、悪くない思い付きのように金朗には思えた。それから、それから――文章がある程度貯まったらそれを本にするんだ。書店に並べよう。金はかかるが稼げばいい。そのために今から文章を書きためていくんだ。
将来の展望が開けたような気がし、一気に金朗は目が覚めた心地になった。夜空の星は美しく、立体的に闇夜はせまってくる。だが耳の片隅に金朗は声を聴く。ぼそぼそ声で、それは金朗が以前助けた老婦人のことを話しているようだ。
――ばあさんを置いて逃げた、とか、犯罪じゃね、などと声が言いあっている。
金朗は混乱した。突然、彼は頭になかにあった考えをごじゃごじゃっとかき回した。声は次第に力弱くなり、もう、聞こえなくなった。
――俺にとっての逆境だったんだ。金朗は思った。戦っていたら、何かが手に入ったかもしれなかったのに。俺は、バカだ。
2024・2・20