エピローグ
マリアが、そろそろ宿屋に戻ろうと、手紙を封筒に入れていた――、
そのとき。
「シャーロット!」
突然、若い男性の声が聞こえてきた。
長らく呼ばれていた名前に、つい反応して、顔を上げるマリア。
そして、視線の先にいる、旅人風の服装をした長身の男に目を留めて、思わず息を呑んだ。
「カ、カルロス!」
無造作な金髪に、楽しげな青色の瞳、整った顔立ち。
それは、王都にいるはずのカルロスであった。
マリアは思わず立ち上がった。
何か言おうと口を開けるが、驚きのあまり声が出ない。
カルロスは、ゆっくりと近づいてくると
少し距離を取ってマリアの正面に立って、嬉しそうに笑った。
「久し振りだな、元気だったか?」
「ひ、久し振りって、一体、ど、どうして?」
目を白黒させるマリアに、カルロスが微笑んだ。
「シャーロット嬢に聞いたんだ」
彼は、元に戻ったシャーロットに、強い違和感を覚えたらしい。
「まるで別人のようだったからな」
そして、これは別人に違いないと追及した結果、
「実は、タナトスに住む女性と中身が入れ替わっていた」
という話をされたらしい。
「それで、矢も楯もたまらず飛んできた、という訳だ」
「え、その話、いつ聞いたの?」
「3日前だ」
「3日前!?」
カルロスが、馬を走らせてきた、と涼しい顔で言う。
マリアは信じられないという風に口を開いた。
「ど、どうして、私がここにいるって分かったの?」
「分からないが、ここに君がいる気がした」
「どうして私って分かったの?」
カルロスが微笑んだ。
「どうしてだろうな。見てすぐに分かった」
マリアは赤くなってそっぽを向いた。
驚きが消え、心の奥から嬉しさがジワジワと湧いてくる。
しかし、彼女は目を伏せた。
「会いに来てくれたのはすごく嬉しいし、感謝してる。……でも、私、平民なの。外側が公爵令嬢だった時とは違うわ」
カルロスが、真面目な顔で言った。
「俺もここに来る途中に考えた。俺は、シャーロットに入っていた君のことが本当に好きで、会いたくてたまらなかった。でも、それは、君がシャーロットの中に入っていたからじゃないかと」
マリアは黙ってうなずいた。
それは正に彼女が気にしていることだ。
カルロスが微笑んだ。
「でも、こうやって会ってみて確信した。俺は、ずっと君のことが好きだったんだ。君に逢いたくて、ここに来たんだ、と」
カルロスの嘘偽りのない真摯な瞳が、マリアを射抜く。
彼女の視界がぼやけた。
温かいものが胸の奥からこみ上げてくる。
カルロスが跪くと、片手を胸に当てて微笑んだ。
「改めて、名乗らせてくれ。俺の名は、カルロスだ」
「……私の名前は、マリアです」
恥ずかしそうに名乗るマリアに、カルロスが嬉しそうに目を細めた。
「ああ、君にぴったりだ。――マリア、会えて本当に嬉しい」
「……私もよ、カルロス」
潮の香りがする春風に吹かれながら、微笑み合う2人。
会えなかった日々を埋めるように、話し合い笑い合いながら、寄り添うように、街へとゆっくり歩いていく。
青い海が、2人を祝福するように、美しく輝いていた。
これにてWeb版の完結です
お読みいただきありがとうございます!
ちなみに、書籍化にあたりラストをかなり変更しております。
コミカライズは書籍に準拠するためかなり違ったものになりますが、
書籍に準拠しているとご理解頂ければと思います。(,,ᴗ ᴗ,,)ペコリ
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