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TS巫女の祈りが世界に届くまで  作者: ゆの
第二楽章・ティエルの町のエチュード
9/21

至福の料理と料理長さん

食事シーン、もうすこしうまく書きたかった。

 カランカラン…


「お、お邪魔します…」


「いらっしゃい、お早いお着きで……キングか。 お仲間さんの話に聞いた通り小さいお嬢ちゃんとデートしてから来たのか?」



 宿屋に入ると黒髪の店員さんが受付をしていた。 地味にこの世界に来てから黒髪の人って初めて見たかも…?



「あいつら……俺が居ねぇからってあることないこと言いやがって…」


「やっぱ冗談だよなぁ。 お前、根は優しいが顔がな……。 いつもと違って先に顔出さなかったのは大方お嬢ちゃんに町の案内でも頼まれて遅れたんだろ?」


「顔の話は聞き飽きたが、大体そんな感じだ…。 いつもは俺がチェックインするからなんか調子狂うな……」



 キングさんと受付の人が親しい様子で話し始める。いつもチェックインしてるって………パシられてたりするのかな。



「巫女服……? ………ところで嬢ちゃん、名前はユズで合っているか? チキが宿帳に名前書いて行ったが一応初客だから確認させてもらおうかと思ってな」


「あっ、ボクは 柚流です! もう誰もユズルって呼んでくれないから昨日の今日でチキさん間違えてたの!?」


「お、おう……大変だな嬢ちゃん…ユズルちゃんも。 ユズ……柚?」



 なんだかボクの名前を聞いた受付の人が不思議な顔をしているけどどうかしたのかな?



「どうかしましたか…?」


「ん? ああ、なんでもないんだ。 それよりあっちで先に来てたお仲間が待ってるぜ」



 受付さんが指を指す方向を見ると大きな丸テーブルに先にチェックインしに行っていた3人が居た。



「きたきた、ユズちゃーん!こっちー!」


「あっ! チキさん! すぐ行きまーす! あっ、受付さんキングさん。先に失礼します」


「おう、いっぱい食えよ! お前の探してる…ハンバーグ、だったか? あればいいんだがな」


「店員のセリフなんだがなぁ。 ………おいキング、なんだって?」



 キングさんは 町中を移動中 「腹減ったなぁ…」 とか言ってたけど男同士で話が盛り上がるのかもう少し受付の人と話しているみたい。


ボクはそろそろお腹が限界だから早くあれを食べたい!



「ユズちゃん、キングはどうだった? 何か変なこと……はアイツに限ってする訳ないか」


「あはは……」



受付の人と話しているキングさんがすごい目でチキさんを見ていたことは気にしないでおこう…。



「わあぁ……! 見たことない料理ばっかりだ! ………あれ?」


 席に着いてテーブルの上の料理を見ると、大豆のような黄色い豆みたいなものにとろとろのソースがかかっている謎の料理 や 見たことない魚を塩焼きにした感じの料理、漫画でしか見た事がないような巨大な骨付き肉 など様々なものが並んでいる。


 美味しそうだけどどれも初めて見るものばかりだ、他のみんなの郷土料理ってやつなのかな。


 けどボクの目は様々な料理よりも、それぞれの席の近くにある調味料入れ…かな? それがなんだか気になった。


 塩みたいな粗い粒の赤っぽい白色の粉 や すり胡麻っぽいものが入ったガラスの小瓶があるのはなんとなくわかるんだけど、あのどろっとした赤い液体……それに極めつけはつんとした香りがするうすく黄色がかった白い液体だ。



「ケチャップ、マヨネーズ…?」


「え? この変なソースたちってユズちゃん知ってるの!?」



 疑問の声をあげたボクに気付いたリップさんが声をかけてくれる。



「し、知ってるも何もボクの居た世界では割とありふれた調味料です!」


「えっ本当!? ……このソース、特に マヨネーズ って言われてるやつはね、このお店でしか絶対に食べられないんだよ!」



 おどろいた。 リップさんの話だと、この2つの調味料はこの宿屋ができた頃からあるみたい。 当時からこのお店の料理は有名だったらしくて、特に調味料の影響が大きかったんだと言う。


 ケチャップは数年前に王都の商人たちに料理長さんがレシピを売ったらしいけど『マヨネーズだけは絶対に企業秘密だ!』と言ってマヨネーズの作り方はどれだけ金貨を積まれても渡さなかったようで、今でも定期的に貴族や商人がたまに交渉に来ているらしい。


 へぇ……。 マヨネーズが秘密のレシピ、かぁ……。



「どうしたのユズちゃん、『なんとなくわかったぞ…』って顔して」


「え゛っ。そ、そんな顔してた?」


「してたよ」 「してた」「していたね」



 3人が声を揃えて言う。 してたんだ……。



「まあ、調味料の話しててもお腹は膨れないよ?」


「あっ! そうだった!」



 とにかく、料理長って人に話をしなきゃ! 料理をする人だから台所……いや、厨房にいるのかな。



「よいしょ」



 … ん?


 チキさんが突然椅子の上に立ち上がった。 なんで…?



「スゥ………おーーいっ! レシピ提供だってーーっ!!」


「!? チキさん! そ、そんな大きい声で呼ばなくたって…!」


「ユズくん、あの人は『レシピ提供』って言うとすぐ飛んでくるんだ興味深いことにね。 ほらね、来たよ」



 興味深いかはともかく近くで大きい声出すなら前もって教えて欲しいよ……。



「馬鹿でかい声で呼んでくれてありがとうよチキ、でも他のお客に迷惑になるから呼び付けは直接来いっていっつも言ってるよ…な!」


\ぺちっ/


「アイタ!」


 すっ飛んで来てすぐにチキさんにデコピンをしたのはさっきの受付の人だった。 この人料理長さんだったの!?



「申し遅れました 受付兼、料理長兼、当宿屋【昇陽(しょうよう)光亭(ひかりてい)】店主のレイです。以後お見知りおきを……」



 役職が多いよ! っていうか外観に立て掛かっていた看板に書いてある文字は読めなかったからこの宿屋の名前は今初めて知った。 【昇陽の光亭】かぁ……いい名前だなぁ。



「役職が多いのは今に始まったことではなく、当初から一人で切り盛りしています。 それと、宿の名前を褒めて下さりありがとうございます」


「あれ、声に出てました!?」


「出てたよ」 「出てた」「出ていたね」



 出てたんだ……。



「それにしても料理長! その手に持ってる皿はなに!? またなにか美味しそうなものを作ったの!?」


「ああ、これは……」



 ボクも気になっていたけど、ツッコミに夢中で切り出せなかったことにリップさんが指摘してくれた。


 受付兼、料理長兼、店主のレイさんが持つお皿には、洋食でよくある銀色のアレ……名前なんだっけ? クロワッサンみたいな名前だった気がする。 それが被さっている。


 レイさんがおもむろに銀色のアレを持ち上げるとその中からはなんだかとてもいい匂いが………この匂いは、まさか!?



「───こちらは、ハンバーグになります」


「「「「───」」」」


挿絵(By みてみん)



 絶句、 その瞬間周りの音が消え去ったように感じられた。 否、実際にこの一瞬は間違いなく宿屋の中に静寂が訪れていた。


1人の巫女服を着た少女は、驚きと興奮で。


1人の神官の少女は、初めて見るそれへの食欲で。


1人の魔導師の少年は、ただ単純に興味深さで。


1人の額を腫らした少女は、おでこの痛みで……。



 そのほかガヤガヤと談笑していた客たちも、シン……と静まり返りそのプレートに盛られた肉塊を見つめている。 この時間は数秒だったはずだけど、かなり長い間そうしていたように感じられた。



「おいしそう……はっ…! そうじゃなくて……いや、おいしそうではあるけど! レ、レイさん!」


「…ユズルちゃん、だっけ、」


「はい……あなたは…」


「多分、君の想像の通りだよ。 でも今は…冷める前に食べちゃってくれるかな?」


「わわわかりました…! いただきます…」



 何故か作り方を教える前にハンバーグを持ってきたレイさんの正体については後から話を聞くとして、彼の言うとおりボクの目の前に置かれたお皿に乗る料理は温かいうちに食べるのが1番美味しい。


 テーブルに出ているナイフとフォークを手に取り、デミグラスソースがかけられた大きな肉塊に切れ目を入れると崩壊するダムのように肉汁が溢れ出して来る。


 中の肉までしっかりと火が通っていてボク好みの、 気のせいかもしれないけどお母さんの焼き方にそっくりだった。


 ナイフで小さく分けたハンバーグにフォークを刺し、口に運ぶ。



 ───おいしい。







 数分後、ハンバーグを平らげたボクはテーブルにうつ伏せになって眠っていたらしいです。



「むにゃ………おなかいっぱい……」


「流石にこれは想像してなかった……。 けど喜んでくれたみたいでよかった」



 やっぱりボクは疲れていたんだと思う。 1口目を食べたところからはほとんど記憶がなかった……いや、美味しかったという記憶は間違いなくあるけどお母さんのハンバーグを食べれなかった時から2日くらいおあずけをされていたようなものなので、美味しすぎて何も覚えていなかったのが正しいのかもしれない。


 これは後から聞いた話だけど、ハンバーグを食べてる時のボクは涙を流して 「お母さん、お母さん…」 とか、そのほかにもいろいろと変なことを言いながら綺麗に完食してたみたい。


  ……怖い。


柚流 (ユズ)


「お母さん……ありがと…むにゃ」(寝言)



リップ


「ユズちゃん1口目はめちゃくちゃゆっくり口に運んだのに、飲み込んでから人が変わったように、よく分からないことを言いながら食べ始めてたから少し怖かったよ……。 でも…すごく美味しそう…。ふふ、よかったね」



レイ(???)


「あ、紹介は次回…? ……そう」



◆                    ◆





【第1回(!?) 3/5巫女の日(とっくに過ぎてる)企画 】を開催します!


この小説【TS巫女】の世界観や設定などに対して何か質問があればこの話に感想を下さい!


回答はこの次の話に特別編として回答させて頂きます!


もし何も来なければ架空の質問を作って自問自答します!


期限は次話投稿まで! 投稿するまでに来た質問は できる限りまとめて回答させて頂きます。 頑張って書いてできるだけ早く投稿したいです!!


もし投稿以降に質問が来た場合、直接返信するか もしくは面白そうな質問だったりした時は第2回で回答します!!


質問の数は1人いくつでもいいです。


むしろ沢山来てもらえればそれほど頑張ります!



ご協力、よろしくお願いいたします!!!!




(2022.3.9 追記 TS巫女のバックトーク として質問回を別小説に移行致しました) https://ncode.syosetu.com/n6518hn/1/

◆                    ◆



これからも柚流の祈りが読者様に届きますように!



評価、感想、ブクマお待ちしています!

誤字報告も大歓迎です!


いいと思ったなら いいね もよろしくお願い致します!作者のモチベが上がって更新が早くなるかも…?)


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[気になる点] (^ω^≡^ω^) おっおっおっおっ まさかの柚流ちゃんと同郷のお方が·····?? 続き、めっちゃくちゃ楽しみに待ってます!!
2022/03/07 19:06 退会済み
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