☆ティエルの町でキングさんと
今まで19時ぴったりに予約投稿していましたが 今回は後書きに見てもらいたい物があるので、時間に間に合いませんでしたが勢いで投稿します!
「わぁぁああ……! なんだか外国に来たみたい」
「……外国どころかユズちゃんにとっては別の世界だけどね」
「むぅ……。 でも、ボクの世界にもこんな感じの国があるんですよ?」
「それは興味深いね…。今度詳しく聞かせてもらってもいいかな」
「いやぁ……ちょっと言ったことはないからそこまで詳しくはないと思うけど………」
今ボクは木組みの家が立ち並ぶとてもいい雰囲気な町に居ます。 地球でいえばヨーロッパにありそうな街並みで、某うさぎ喫茶店がある町に近い建物の作りになっている。
「じゃあ私たちは先に行ってるからユズちゃんはキングから町の案内でもしてもらいながら来ていいよ」
「あ、そうなんですね。 キングさんよろしくお願いいたします」
「面倒臭ぇな……まぁいつもは俺が先に行ってるからたまにはいいか」
チキさんたちは先に行くところがあるらしく、ボクとキングさんを置いて行っちゃった。何を話そう…… キングさんと2人きりだと何となく気まずい…。
「……俺たちはのんびり歩きながら行こうぜ。 この【ティエルの町】で気になる所とかあったら俺のわかる範囲で説明してやる」
「わ、わかりました…」
そう言われて周りを見渡してみると、チキさんたちが向かった方向の手前に周りの建物より大きめな建物が見える。
「……なんかあの建物だけ他と雰囲気が違うような気がするんですが」
「あれが冒険者ギルドだ。わかるぞ、初めて見るならなんとなく物々しい感じするよな……」
キングさんがうんうんと頷きながらボクの指差す建物が冒険者ギルドだと教えてくれる。日も沈んできて周りにあんまり人が居ないのにあの周りだけ武装してる人が多いのが何となく感じた違和感かもしれない。
ギルドの入口らしい大きな扉の横に掲示板みたいなのが見える。
「あれは昼間は依頼内容と報酬が書かれた紙がいっぱい貼られるんだ。 今はもう夜だしギルドの人が回収したんだろうな」
顔に似合わず意外と分かりやすく丁寧に教えてくれる。 キングさん、案外説明好きなのかな。 もう少し気になった建物のことを聞いてみよう。
「あれは?」
「えーっとあれは武器屋だな、ギルド横にあるから装備の手入れや買い付けに役立ってる。あそこの店主は怖い顔してるが根は優しいいいおやっさんだよ」
「…キングさんみたいだね(ボソッ」
「なんか言ったか?」
「ナンデモナイヨ」
その後も歩きながらキングさんから町の紹介をして貰っていたけどいつの間にかギルドを通り過ぎていることに気が付いた。
「あれ? ギルドに行くんじゃないんですか?」
「ああ、いや今からギルドに行っても多分ギルドマスターは酒呑んで酔っ払ってるだろうからもし会っても話にならねぇんだ。今夜は俺たちがいつも泊まってる宿に行くぞ」
「ギルドの長がそれでいいんでしょうか……」
「あの人相当酒好きだからな……。 それでいて元Sランク冒険者だったって言うから信じられねぇぜ」
たしかあのオークのことで色々あったあと再び出発して町に向かう途中、リップさんから改めてギルドマスターさんについて説明されてたね……。
◆
『顔は怖いけどいい人だよ。 あはは……説明これだけだとキングみたいだね 』
『なんか言ったか!?』
『……今は歳を召してほとんど前線に出たりはしないけど、昔は町に攻め込んできた大勢の魔物と半分以上を1人で倒したんだって。 その時の魔物から負った引っ掻きキズで片目を失ってるから【隻眼の熊】って異名で町最強の冒険者として有名なんだ』
◆
「……カッコよさそう」
「お前おっさんとかの方が好みなのか…?」
「キズだらけの男の人ってカッコよくないですか? なんだかこう……歴戦の戦士って感じで」
「たしかにカッコいいが………なんかお前男みたいな感性してるよな」
「え!? そ、そう? あはは…」
実はまだ、ボクが転生する前は元々男だったということは教えてないんだよね。 これだけは本当に仲良くなってからじゃないと何となく伝えづらい……。
……もし、気持ち悪がられたりしたら……。この優しくしてくれるみんながボクから離れて行ったらボクはこの世界でひとりぼっちになってしまう。
とはいうけど、いくら優しい人たちと言ってもいつまでもお世話になりっぱなしじゃ居られない。 この世界に転生させてくれたヴェスタ様への恩返しとはちょっと違うかもしれないけどボクはとにかく、ヴェスタ様から授かった【祈り】と【癒し】のチカラを少しづつでも高めていかなきゃ。
そのためにもたくさんの人と接しながら色々なところを旅してボクも誰かのチカラにならなきゃいけないんだ。
そもそもボクのことをギルドマスターに伝えられたらボクはどうなるんだろ。 ……事情を説明したらわかってくれるかな?
「おーいどうした? 変な笑い方をしたと思ったら微妙な顔つきで考え込んで。 もう宿に着くぞ」
「あっ! ごめんなさいキングさん! ちょっとギルドマスターの顔を想像していました」
「そんなに気になるのかよ……」
キングさんを軽く誤魔化しながらようやく着いた目の前の宿を見ると、周りのほかの建物と違った造りの建物で 木組みと言うよりはレンガで出来たような石造りの建物だった。
「それにしても、お腹減りましたね……」
「まぁ、依頼先とかで食べるメシなんか保存食ばっかりだからな。 大体固くてパサパサの黒パンとか塩辛い干し肉、遠出しないなら果物とか鳥の卵とかでもいいんだが高いしかさばるからなぁ……」
何を隠そうボク、この世界にきてから エイプの実って言うリンゴみたいな果物と黒パン、あと干し肉と水しか口にしていないのでとってもお腹がすいているのです。
「でも、来る途中にリップさんから聞いてた話だとこの宿屋は美味しい料理が安く食べられるって言ってたような…」
◆
『ユズちゃん、お腹すいてない…? ごめんね、うちのリーダーのチキさんは 依頼中はお金の節約のために食費を長持ちするけど安上がりのそこまで美味しくない微妙な保存食で済ませるから…』
『なにか言った!?』
『………まぁでも、楽しみにしててね。 何をって? 私たちが拠点にしてる【ティエルの町】にはとっても料理が美味しい宿屋があってね…』
『あそこの宿の料理長すっごい料理好きでね、お客さんから知らない料理を注文されても レシピさえ教えてもらえば食材が足りる限りなんでも作ってくれるからどんどん宿のメニューが増えていくみたいなんだ』
『私たちの故郷の料理だって作ってくれたんだよ。あっ…思い出したらよだれが…。ジュルリ』
◆
………リップさん、怖いもの知らずなのかな。
それはそれとしてそれだけ美味しい料理を出してくれるならすっごく楽しみだ!
来る途中に話を聞く限りこの世界にはボクが大すきなあの料理は無いみたいだけど、ここならボクの食べたい料理も出してくれるかも!
ボクは期待に胸を踊らせ、既にあたり漂うおいしそうな香りにお腹も鳴らし、宿屋のドアノブに手をかけた。
掲載が遅れましたがなんと、 湊みらい 様から この作品の主人公、柚流ちゃんのファンアートを頂きました!
この方は この小説と同じコンセプトのTSをテーマにしたお話【TS美少女は魔法の力でぐうたらしたい】を投稿していて、作者も楽しみに読んでいる作品です!
本当にありがとうございます!!!!
柚流 (ユズ)
「作者さんすっごい筆が遅いのに見てくれていつも本当に感謝しています!」
これからも柚流の祈りが読者様に届きますように!
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