☆初めての干し肉は硬いけど美味しかった
作者、コロナワクチン3回目にて副反応で絶賛ダウン中です……。
頭痛で続きが書けていないため、次の更新は少し遅れそうです。
サブタイトルの幅が狭くなってしまうため この話以降『○○、そして△△』の文体でなくなります。ご了承ください。
今回はそろそろ森を抜けそうな柚流からスタートです。
それでは!
エルフさんが指さした方向をひたすら真っ直ぐに進むが、どこまで行っても緑色ばかりだった。 ボクが彼女たちと初めて出会ったのは、日も暮れてきてちょっと疲れてきた頃だったと思う。
「……? スンスン、 何かいい匂いがする……ような?」
ここまで草と土の匂いとあとオークさんの鼻息の匂いくらいしか嗅いでいなかったから、何かを焼いているようないい匂いは新鮮な感じがしてテンションが上がってきた。
「……スンスン…あっちだ!」
匂いのする方へひたすら走り、向かっていくと やっと念願の開けた場所が見えてきた。一応ここからは慎重に……。またオークさんみたいなのだったら大変なことになっちゃうし、今度は誰からも助けて貰えないかもしれない。
「ボクと同じ人間……かな? ………4人か」
そこには4人の男女が焚き火を囲っているのが見える。 男の人は見た感じ重装だし、旅人というより冒険者って感じがする。
このまましばらく観察しようとしていた時、僕のお腹は大きな音を立てた。
ぐ〜〜〜きゅるる……
「…だ、誰!?」
「おっリップ、お前もやっと気づいたか」
「えぇ…! キング、気付いてたの!?」
「ったりめぇよ!どれだけこのパーティの斥候やってると思ってんだ」
ボクのお腹の音が鳴ると、びっくりした様子の軽装の女の子と最初からこっちに気付いていたような反応をした重装備の男性が おどけた感じに会話を始めた。
「……どうする、リーダー」
「そんなの、当たり前でしょ! おーい! 草むらに隠れてるつもりの子! バレバレだから出ておいでー!」
眼鏡をかけた少年が リーダーと呼ばれた小さい女の子と相談すると、すぐに小さい方の子が大声でこちらを呼んできた。
「大丈夫だよ! なにも悪いことなんて考えてないから、お腹減ってるんでしょー! 出てこないならこっちから行くよっ!」
「わっわっ、出ます! 行きます!!」
大声の少女から促されて急いで草むらから飛び出ると、それぞれの特徴的な反応が帰ってきた。
「はっはっは! 思ってたより可愛らしい嬢ちゃんじゃねえか。変な格好だけど 」
「こら、キング! あんたのでっかい声で話しかけたら可愛い女の子が逃げちゃうでしょ!」
「リーダーも、うるさい……」
「か、かわいい! その服は……」
「あの……ボク、柚流って言います!」
パン、パン!
「ハイハイ、みんな静かに!そろそろ収拾がつかなくなるよ。」
大声の少女が手を叩いて一言告げるとすぐに静かになった。リーダーっていうのは名前のことじゃなくて、本当にこの集まりのリーダーなのかもしれない。
ボクが困った様子で彼女たちを見ていると リーダーちゃん(?)が話しかけてきた。
「わたし、チキ! こんな見た目だけど このパーティのリーダーなんだ! ほら、みんなもあいさつ!」
私が怖がっていると思ったのか、チキと名乗る少女は優しく元気な声で自己紹介してきた。
彼女につづいて残りの3人も順番に口を開く。
「俺はキング。このパーティでは斥候と前衛を受け持っている」
「………ソル。……魔導士」
「は、はわわ…神官です!……違った! リ、リップですっ!」
「わたしたち、4人で『チキンクソリプ』ってパーティやってるんだ。」
「ゴホッ!ゴホッ!! ………なんでもないです。」
思わずむせてしまった。流石に不意打ちで笑わせてくるとは思わなかったのでびっくりした。
「あっ!やっと笑ってくれた!キミずっと不安そうな顔してるんだもん、笑顔の方がもっと可愛いよ! ……なんで笑ったのかはわからないけど」
「あ、あはは……」
なんとか誤魔化せたのかな。よく見たらみんな優しそうな感じで居心地がいい。
……ぁ。緊張が解けたらまた………。
ぐぅ〜〜〜〜
……
………。
「ぷっ」
「「「ははははは!」」」
◇
彼女たちはボクに少し夕食を分けてくれた。携帯用の食糧なのか、お世辞にも美味しいとは言えない味だけど 異世界に来て初めて他人と焚き火を囲って食べる干し肉はキャンプみたいでとても楽しい時間だった。
「あっはっは! お前面白いな! そういえば名前は? なんて呼べばいい?」
みんな自己紹介してくれているのにボクだけ名乗らないのはおかしい。ボクも名乗らなきゃ!
「ふふ… ボク、柚流っていいます! 職業は多分巫女で、旅をしています。 実は昔の記憶がなくて 変な事聞いたりするかもしれないけど許してください! 」
「ユズル……ユズって呼んでもいい?」
「はい、別にいいですよ!」
「記憶がない……? 興味深い……」
「巫女ってなんだ? その妙な格好からして祈祷師かなんかかと思ったんだが違うのか?」
「わ、私も気になってたんです! その服とっっても綺麗! 何処で見つけたの? あ……ご、ごめんなさい! 記憶がないんだっけ……」
「はは……いえ、大丈夫です。 そのシャーマン っていうのは分からないですが、ヴェスタという神を信仰しています。効果はそこまで高くないけど、回復魔法を使えます」
「へぇー 回復魔法使えるんだ! うちのリップみたいだねー」
「ヴェスタ神か……。俺は別に神に興味無いけど、たしか炎の神……いや 暖炉の神だったっけか……? そういえばリップは狩りの神を信仰してたんだっけ?」
「そ、そうです。狩りの神、ディアナ神です。」
自己紹介から始まり、チキさんたちとは色々な話をした。1部、異世界から来た なんてことは信じられないだろうし記憶喪失と嘘をついちゃったけど それでも優しく話を聞いてくれた。
夜も更け、1日中森の中をさまよっていたボクの意識は疲れと安心からか、そのまま心地よいまどろみの中に落ちていきました……。
◇
森の中から現れた謎の少女が確かに眠ったことを確認し、私はほかの仲間とこの子のこれからについての相談を始めることにした。
「ソル、ありがとう。こんな女の子に眠り薬を盛らせるなんて変なことさせちゃって」
「……私は大丈夫。………体に害は無いし、朝起きた頃には彼女の疲れも取れているはず……」
「さてと、どうするんだリーダーさんよぉ こんな小さい子拾って……。大体森の奥のオーク討伐を依頼されてるのに面倒ごと増えちまったなぁ…」
「キング、そんなこと言うんじゃないよ。ユズちゃんはなにも悪気はないんだから。このまま1度町に帰ってギルドに伝えなきゃ。」
「う、うん……私もそれに賛成ですっ。 ……この子、記憶がないと言うのは嘘じゃないかもだけど旅をしていると言っていたのは多分嘘だよ…。 ギルドカードはもちろん バッグや荷物、女の子のひとり旅なのに護身の武器も何も持っていないのはいくら何でも怪しすぎる。服は興味深いけど 」
服についてはあまり興味はないけどリップの言うとおりだ。
「ったく……。面倒だなぁ…」
「キング」
「わーったよ!」
「……むにゃ………お母さん…」
「………とにかく、明け方より『チキンクソリプ』は町に帰還することとします。異論は? ……ないわね。 では私が初めに火の番をするから、 みんなは休んでて」
私の命令で各自休息を取った。 さて、面白いことになりそうな予感がする。 この子はしっかりと守ってあげなきゃ!
───ボクとチキたちとの出会いは、こんな感じだったらしい。 後からチキから聞いた話だから間違いないはずです。
チキ
年齢:17歳
職業:槍術士
性別:女
種族:ドワーフ
髪型はピンクのポニーテール。一件小さな幼女に見えるが、ドワーフとしてのパワーで体に似合わぬ大きな槍を振り回し魔物を薙ぎ倒す。 大きな声と彼女の胆力は、間違いなくパーティのリーダーに相応しいと言えるだろう。
キング
年齢:25歳
職業:斥候 及び 重戦士
性別:男
種族:人間
髪型は赤褐色の角刈り。大きな体型を生かし タンクとしてパーティを守っている。他に斥候として いち早く敵の襲撃に気付くことが出来る彼は、パーティの要であると言えるだろう。時には最年長者として厳しいことを言うが、なんだかんだ根は優しく困っている人を助けずにはいられない性格。
(今回の挿絵は2022.2.27 8話投稿時に追加しています)
これからも柚流の祈りが読者様に届きますように!
評価、感想、ブクマお待ちしています!
誤字報告も大歓迎です!
いいと思ったなら 新機能 いいね もよろしくお願い致します!作者のモチベが上がって更新が早くなるかも…?)
作者Twitterをフォローするとたまに没カットなどを投稿するかもしれません
https://twitter.com/Yokoyuno1210