逃走、そして出会い
2日続けての更新!
私の創った物語を見てくれている人が意外といて嬉しいです!
今回は早速ピンチの柚流からスタートです。
それでは!
「うきゃああああああっっ!!!」
走る、走る。後ろから追いかけて来る化け物から追い付かれないように全力で。
この巫女服、意外と走りやすい作りになっているみたいで木々の合間をすいすいと縫って風のように駆け抜けることが出来ている。
……でもそれもボクのスタミナが続くまでの間だ………!
今でこそ異世界転生の副産物で少しだけ上がった身体能力と 元より更に小柄な体型で逃げ続けることが出来ているけど、いくら何でも少女の体ではスタミナが持たない。というかもうすぐ限界。
前に気をつけて走りながら後ろを振り返ってみると
GYUUUUUUUU!!!!!
怖い! 追い付かれたら食べられるっ!
………こんなことになったのは、ボクが取った不注意な行動が招いた結果だ……。
◇ 数分前 ◇
「ふぅ……。ヴェスタ様の手紙は読んだし、そろそろここから移動しよう!」
ちょっとばかり目とツッコミ精神が疲れたけど、僕のこれからの目標とこれからするべきことはわかった。
目標は世界の旅! 今すぐするべきことは森を出ること!
「いざ出発!」
なんだかんだあったけど、ヴェスタ様には感謝しきれない程の恩がある。ちょっとアホだけど……。
罰当たりな考えを頭に浮かべながら、ボクは少しでも早く世界を見て回りたい気持ちで森を進む足取りは軽い。
「〜〜♪ 〜〜〜〜〜♪」
ぐにゅ
……ぐにゅ?
今踏んだ地面、なんかすっごい柔らかくて変な感じがした。間違いなく土ではない……。何を踏んだんだ……ろ………。
後ろを振り向いたボクの目の前には、イノシシと人間を足して2で割ったようなもっさもさの化け物が居た。ボクが踏んだのはこいつの尻尾だったのか……。
FUSHUUUUUU!!!
起き上がった化け物の身長は2.5mほどあり、尻尾を踏まれた怒りかボクのことをすごい形相で睨みつけている……!
怒る化け物の放つ鼻息はとてつもない悪臭で、鼻が曲がりそうだ…!
「く、臭い……。お、オーク(仮称)さんごめんなさい! 今すぐ痛みは引くから、【ヒール】!」
ボクは踏んでしまったオーク(仮称)さんの尻尾に癒しを与え、暖かい光で包んだ……。これで怒りが収まればいいんだけど。
………GYU!? ………。
少し驚いた様子のオーク(仮称)さんは尻尾とボクを交互に見て、僕が治したことを理解したみたいだった。ある程度の知性はあるんだったらきっとわかってくれるはず…!
そうなればよかったんだけど、ちょっと考えた様子でオーク(仮称)さんは口にニヤリと笑みを浮かべた。
…………GYAGYAGYA!!!
「な、なんで!?!?」
ボクの予想は悪い方向に向かい、怪しい目付きをしたオーク(仮称)さんは鼻息を更に荒くしてそのままボクを追いかけて来た!
「うきゃああああああっっ!!!」
◇
………こうして今に至るわけだけど、さっきも言った通りもう限界だ! 追い付かれて食べられちゃう!
『だ、誰か助けてっっ!!』
───後から考えると、この時のボクは無意識に【祈り】を使っていたのだと思う。この思いはやがて祈りとなり───
「伏せろっっ!!」
「えっ!? はい!」
ヒュッ………トンッッ
G……YA………?
………ッッッッドオォォォン!!!!
……そして、祈りは現実となって、突如飛んできた矢がオーク(仮称)さんを一撃で地に倒したのだった。
◇
ほとんど同刻、一人の少女が同じ森の木々を飛び回っていた。
「フゥ……。今日も暑いな……」
その日、ワタシはいつものように森の見回りをしていた。
毎日毎日里の周辺の見回りをし、危険そうな魔物が居たら自慢の弓で討伐する。1人で倒せなそうな相手なら他の守人を呼ぶまで。
里に帰ってみれば頭の固い偏屈爺たちの『人間は怖いものだ…』だの『魔物を見たら必ず倒すのだ…』だの毎日同じことばかり聞かされる。
ワタシの家系は代々耳長族の守人として魔物から里を守っているのだが、代わり映えしない毎日にワタシは飽き飽きしてきていた。
「何か心動かされるような出来事はないものかねぇ…」
「うきゃああああああっっ!!!」
「誰だ! ……?」
森の奥から甲高い悲鳴が響き渡る。間違いなく里の者では無い。この耳では1度も聞いたことのない声だ。
声のした方を観察しているとそのとき、巨大なオークに追いかけられているの人がいるのが見えた!
「待ってろ、今助け……なんだ…?」
耳長族の特徴である耳が長くない。人間!?
『人間は怖いものだ』
偏屈爺たちの言葉に従うのは癪だがそれは事実。かつて昔は耳長族と人間が一緒に暮らしていた時代もあったらしいが何らかの理由で仲違いし、袂を分かったという。
大方里で取れるミスリルに目が眩んだ人間が独占目当てで攻撃したとかだろうがそんな過去によって、年寄りの耳長族は人間が大嫌いで目の敵にしているようだ。
『人間は敵』……それは耳長族では幼少期より聞かされる御伽噺で、うんざりする程耳に残っていた。
ワタシ自身、人間を見るのは初めてだが 耳長族でないのならばわざわざ人間を助ける義理なんてない。
「……一応、武運を祈る………。」
礼儀として目を瞑り片手で印を結びその場を離れようとしたその時だった。
『だ、誰か助けてっっ!!』
───瞬間、考えるより先にワタシの体は動いていた。
「──いくら里の教えと言えども、目の前で魔物に襲われている者を見放すことなどできるか!!」
弓に矢をつがえ、狙いを定める。標準は勿論…………人間の後ろのオークだ。
「伏せろッッ!!」
「えっ!? はい!」
結果的にワタシは里の教えに背き、人間を助けたことになる。
だがこの人間との出会いがなければワタシ、ピース・ヴェルヴェットの退屈な生活が変わるなんてことは無かったハズだ。
◇
突然聞こえてきた声に反応して急いで屈むと同時に風を切る音が鳴り、大きな音とともにオーク(仮称)さんは倒れた。
………頭の中だろうと(仮称)を付けるの疲れてきた……。やめよう。
倒れたオークさんに恐る恐る近付いてみると眉間に1本の矢が刺さっていた。誰かが弓矢の攻撃で助けてくれたんだと思う。
先程声が聞こえた方角を見ると、木の上に青髪で耳の長い女性が立っているのが見えた。
「た、助けてくれて……ありがとう!!」
お礼に気付いた女性はボクに近づいて来た!
「えぇと………に、人間……ここは危ない。森の外、あっちだ………。……です」
「あなたが居なかったらボクはあの化け物にどんな酷いことをされていたか……。助けて下さりありがとうございました!」
「あ、あぁ……。今日はいい天気だな! あはは、は、……じゃあな!」
感謝を伝えると、女性は絶妙に噛み合っていない返答をしたあとすぐにどこかへ行っちゃった。
まだ名前を聞いてなかったのに……。恩人の名前をしらないだなんてもどかしいな…。
『いつかまたあの人に会えますように…』
実際に彼女と再会するのはもう少し先になるのだけど、この時のボクはそんなことを知る由もなく 森を抜けるため、噛み合っていないエルフさんから教えてもらった方向へ先を急ぐことにした。
あ、勿論オークさんの死体は 刺さった矢と一緒にインベントリに回収したよ。なにかに使えるかもしれないし。
……今回学んだことは、森を歩く時は気をつける ことと 何にでも優しくしちゃいけない ってことかな。しっかり心に刻もう。
◇
「うぅ……。目が合って恥ずかしくてつい隠れてしまった………。 よく見たらあんなに可愛い女の子だったなんて……!」
耳長族の守人、ピース・ヴェルヴェットは 初めての人間との会話で緊張してしまっていたのだった…。
「……また会えるといいな。」
奇しくも助けた少女と同じ思いを抱き、彼女もまた 里へと帰路につくことにした。
ピース・ヴェルヴェット
年齢:215歳
職業:耳長族の里の守人
性別:女
真面目に見回りはしているが、里の年寄りの事は大嫌い。
今回の出来事で人間への思いはだいぶ軟化したと言えるだろう。
弓の扱いは同世代の耳長族の中でも上位に位置し、かなりの命中精度を誇っている。
これからも柚流の祈りが読者様に届きますように!
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