目覚め、そしてヴェスタの手紙
数日ぶりです、ゆのです。
(本当に)じわじわとPVが伸びており嬉しい限りです!
今回は説明回のような感じの構成となっております。
さて、今回も寝ている柚流が目覚める所からスタートです。
それでは!
(2022 2/2 : 2話 ヴェスタのセリフ「貴女の望む容姿に〜」を修正しました)
………チュン……チュンチュン、チュンチュン
なにか長い夢を見ていたような気がする。朝を告げる騒がしい音を止めるために手を伸ばし…………手を……手を伸ばして………。
………?
なんかいつもより布団がチクチクする……。って言うか肌寒くてくしゃみが……
「ひゅ……ひくちっ…!」
バサバサバサバサバサッ!!!
「うわぁあっ!!」
大きな羽音にびっくりして飛び起き、音がした方を向くと見たことも無いスズメの様な小鳥がボクの真上の木から飛び去っていくのが見えた。
いやそれどころじゃない、今ボクの口から出た声なんかいつもより高くなかった…?
「あ、あ〜。」
……やっぱり高い気がする。風邪でも引いたのかな、寒かったし。
………なんてひとりで冗談を言ったりしているけど、本当はもう分かっている。
「夢じゃなかったんだ………」
柚流はひとり、異世界の未知の森の中で目を覚ましたのだった。
◇
………とりあえず今わかる状況を整理しよう
・ボクは1度死んで異世界に転生した
・ヴェスタという女神様からふたつのご加護を貰った
・目が覚めたらシャツとズボンだけで森の中
・なんだか声が高い(風邪?)
・………あと、目の前にある謎の RPGで見るような宝箱
なんで森の中にこんな宝箱が……?
怪しいと思いながらも、今できることなんてこれを調べることくらいしかない。
まさか、『なんと 宝箱は ひとくいミミックだった!』なんてことはないと信じて開けることにした。
『なんと 宝箱は ひとくいミミックだった!』
「──────っ」
突然聞こえてきた誰かの声に驚いて後ろに飛び下がる。自分が思ったより素早く後ろに飛んだけど、今はそれを気にしている場合じゃない!
……………?
しかし なにもおこらなかった!
何も起こらなかったけど警戒しながら恐る恐る箱の中を覗くと、1枚の折られた紙と綺麗に畳まれた服 などが一式入っているのが見えた。
「これは……手紙?」
手紙らしき紙を手に取って開くと、綺麗な日本語でたくさん文字が書かれていた。
《やっほー! ひとくいトラップドッキリにひっかかったな!……これを読んでるってことは柚流ちゃん、無事転生出来たみたいだね! あ、ヴェスタだよ。》
……どうしよう。想像以上にテンション高い女神様から手紙が来ちゃった。なんか神界で出会った時と雰囲気違うくない?
《……今『神界で出会った時と雰囲気違うくない?』とか考えたでしょ! 女神様にはなんでもお見通しだよ! 》
お見通しだった。
《……うん、わかってる。キミが心配に思ってることも勿論わかっているよ。》
ボクが今心配に思ってることってなんだろう。これからのこと? それとも、喉の調子が悪いことかな?
《……実は、キミを間違えて女の子にしちゃったんだ、てへっ》
「『てへっ』てなんだよ…!!」
思わず天に向かって声が出てしまった。
『…やっぱり高い気がする。風邪でも引いたのかな、寒かったし。』
……気付けよボク………。っていうかヴェスタ様全然お見通しじゃないよ!?
《驚いているよね。困惑しているよね……。 これもキミが可愛かったから、いや 私の責任だ。》
ヴェスタ様本音漏れてませんか!? そこに驚いているし困惑しているよ!
確かにボクは前世よく『柚流くんって女の子みたいだよね』……とか『俺…お前が女だったら絶対に告白してるよ』
……とか言われてたけど、まさか神様にまで間違えられるとは思わなかったよ!
《正直に言うと、あのクソ長ったらしい神界没者記録を読むのが面倒で、一目見た時から女の子だと勘違いしてたんだ…。キミを見送ったあと、アルとベイに言われてようやく気がついたよ。》
このクソ長ったらしい手紙も破り捨てようかな……。唯一の手がかりだからそんな事しないけど。
《ってことで、今のキミの体は女の子のはずなんだ。異世界でもある程度の旅とかはできるように少し丈夫にさせてもらったけど、魔物は勿論 同年代の男の子とかに力で勝とうだなんて考えないでね。》
「そうなんだ……」
自分の元より細くなった腕を軽く動かしてみるけど、本当だ。あんまり力が出ない感じがする。…これは慣れるまで少し時間がかかるかも。
《さてと、次の説明に移るよ。 まずはキミに与えたふたつの加護についてだ。ひとつは【祈り】。これは簡単に説明すると『困ってる時に祈れば奇跡を起こしてある程度のことは大体解決する』って感じだね。おっと残念ながら性別については解決しないよ。流石に性別は ある程度のこと の範疇には入っていない。》
お見通しだったりお見通しじゃなかったりするなぁこの女神様。 ……試してみようと思ったけど。
それはそうと、【祈り】を使ってみようかな。
それじゃあ試しに、『お腹空いた…ハンバーグが食べたい…!』
片膝を地面につき、両手を組んで天に祈る……。
……。
………ポトッ
「………りんご…?」
真上の木からりんごみたいな木の実が落ちてきた。
《えーっとたぶん『ハンバーグとテーブル、ついでにナイフとフォーク!』とか祈ってるかもしれないけど、いくら何でもその森の中で起きる奇跡は精々 エイプの実 か なんとなく食べれそうなキノコ くらいじゃないかな。》
半分くらいしか合ってないし、ボクそこまで強欲じゃないよ! ヴェスタ様の勘が少しでも良くなりますように!
エイプの実とやらをかじりながら皮肉を込めた祈りを天に飛ばしたけど、大体のこと の範疇外な気がした。すっぱい。
《次は【癒し】だね。これは、その名の通り 傷や火傷、病気や手足の欠損まで治すことができるようになれる加護だよ。 でも、今のキミは軽いすり傷くらいしか治せないんじゃないかな。旅をして色々なことを経験すれば、【祈り】や【癒し】のチカラはどんどん高まっていく。 いずれは神にまでなれちゃったりするかも……? おっとこれは言い過ぎかな。》
なるほど。とにかく世界を巡るのがボクの目標ということはしっかりとわかったかな。
《ちなみに、暖炉や神炎を司る私が与えた加護だから 暖かくやさしい心を持つほどきっとどちらも効果は高まるはずだよ。》
地味にヴェスタ様が何を司っているかを知ったところで 次は宝箱に一緒に入っていた服についての説明が始まった。
《その服は、巫女服さ。言うなれば私の趣味だね。ただの布に見えるかもしれないけどかなり頑丈にできているし、もし破れたりしても そのときココロが生きていればキミの【祈り】ですぐに直るはずだと思う。 巫女服なんて着たことないって? 大丈夫、もうひとつ、性別の件で迷惑をかけたお詫びにプレゼントがあるんだ。》
ヴェスタ様が包み隠さず性癖を暴露したことは置いておくとして、もうひとつのプレゼントってなんだろう。
《その名も【インベントリ】……ってあれ? なんとなく反応が薄そうな気がするぞ…。ああそうか、君の前世の創作物語などではこういうのはよくあったんだっけ。そこに1度服をしまってから装備するように念じればあっという間に早着替えだよ。》
インベントリは、察した通り自由に物を出し入れできる空間を持てる加護みたいだ。取り出したり装備したり、かなり便利そう。早速インベントリに食べ終わって芯だけになったエイプの実を入れてから巫女服に着替えてみる。
その後もヴェスタ様の説明文は続き、だんだん飽きてきた頃にようやく終わりの兆しが見えてきた。
《…さて、そろそろこのクソ長い手紙に飽きてきたんじゃないかな。私も同期の女神に見られながら書くのにウンザリしてきたところだよ。最後に、一言言わせてもらうよ。『性別の件、本当に申し訳ない。けど、女の子になって色々得することもあるかもだよ。てへっ。』
PS.またいつか会えたら暖かい暖炉のある私の部屋でココアでも用意して待っているよ。 Vesta 》
「『てへっ』てなんだよ…!!」
ボクはまたしても届かない声を天に向かって上げるのだった。
琴音 柚流 (ことね ゆずる)
年齢:15歳
職業:巫女
性別:女
E:ヴェスタ特製巫女服
加護
【祈り】
【癒し】
【インベントリ】
容姿について
身長: 156cm
少し明るめの 桃色掛かったオレンジの髪色で、髪型は外ハネ気味。少しだけタレ目気味の目の色は黄色で頭頂部に1本のアホ毛がある。
巫女服はヴェスタの性癖……もとい動きやすくなるために袴でなく膝上程の丈のスカートで、白いニーソックスを履いている。
これからも柚流の祈りが読者様に届きますように!
評価、感想、ブクマお待ちしています!
誤字報告も大歓迎です!
いいと思ったなら 新機能 いいね もよろしくお願い致します!作者のモチベが上がって更新が早くなるかも…?)
作者Twitterをフォローするとたまに没カットなどを投稿するかもしれません
https://twitter.com/Yokoyuno1210