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TS巫女の祈りが世界に届くまで  作者: ゆの
第二楽章・ティエルの町のエチュード
13/21

長い一日はまだまだ続く…

 止まったような時間は元に戻り、数日ぶりに会ったヴェスタ様に別れを告げて噴水を後にしました。


 あっ、どうして止まっていたチキさんが突然動くことが出来たのかという謎をヴェスタ様に聞くのを忘れてた。 …まあいいか、もし次会えれば聞こう。


 そしてボクたちは1度宿に戻りました。 噴水で起きたこと、ヴェスタ様から伝えられた詳しい…? ボクの役割などを雑談しながらみんなに伝え終わっているところです。



「へぇー、ユズちゃんの説明だけじゃ全然目標がよくわからなかったけどそんな大層な旅だったんだ…」


「興味深い………つまり私たちはこれから世界中を旅して沢山の本を読むことが出来るという訳だ!」


「おいこらソル、なんかお前だけ目標違くねぇか?」


「はっ、いけない……ユズくんの度に同行するという大義名分を胸に自分の『あらゆる本を読みたい』という私利私欲で行動する所だった…」


「ソルくん……」


「えーっと、それでサーブリアってどこなの?」



 ソルさんの、知識欲に忠実でちょっと面白い一面が見れた所でボクが当初の話題に戻そうと質問を投げ込む。



「そ、そうだった…話題を戻そう。 ……サーブリアが何処か、という話だったが…」


「サーブリアなら私知ってるよ!」


「…えっ」


「リップさん知ってるんですか!?」


「知ってるって言うか… お母さんがそこの出身だったから! 私は小さい頃に一度行ったきりだから全然町並みは覚えてないけどね」



 ソルさんが言おうとしてたみたいだけど、リップさんが知ってるのなら話を聞いてみようかな。



「道は覚えてるよ!ここティエルの町から道なりにずっと南西に行くと たしか関所みたいな場所があるんだけど、そこを越えると一面砂ばっかりの地域に着くんだ! 」


「ああ…リップくん! …既にところどころ間違っている。……私が説明するよ、小さな頃の朧気な記憶より私の記憶の方が正確だよ」


「ぶぅ…ソルくんったらムキになっちゃってさ!」



 どっちもムキになってる感じがかわいい…。 ソルさんは自分の仕事が取られるのが嫌だったのかな。


 そんな感じにソルさんが自慢の知識でサーブリアについて教えてくれました。



 サーブリアはティエルの町からはるか南東、サブライア砂漠の中心にある大河と付近のオアシスを元に旅人や商人が徐々に集まり生まれた世界有数の商業の町。


 砂金や香辛料などがよく取れることが有名で、そういえばレイも知り合いの商人から香辛料などを買い付けることができて助かっているって今朝話してた気がする。


 説明の途中にリップさんが割り込んで来て 「忙しいらしくて中々会えないけど、私のお母さんはその町で有名な服飾のお店をやってるの!」 なんて言ってました。


 なるほど、だから初めて会った日はあんなにボクの巫女服に興味津々だったんだ。 …生地の触り心地が良いからか、町に移動してる時なんかに隙を見て裾を触りに来る時があるけどちょっとびっくりするからやめて欲しいかな……。 あっ、今も触られてる。



 話が逸れちゃったけど、サーブリアへの行き方とどんな所なのかが分かったのは大収穫と言えるかもしれない。


 いや、元々ソルさんが知っていた訳だから収穫というより地産地消…? ……植物方面に話を広げてもどうしようもなかった。



「それじゃあみんな! 話も終わった所だし、元々の目的だったギルドマスターに会いに行くよ!」


「なあチキ、もう日が真上に昇ってるぜ。 メシ食ってから行かねぇか?」



 朝早く起きたけど、もうそんな時間なんだ。 どうりでちょっとお腹が空いてきたのかな。


 あっちの世界から来て改めて思ったけど、時計が無いのすごく困る気がする…。



「むっ確かに……。 それじゃあ、スゥ………昼ご飯お願いしまーーっす!!」


「だからうるせえって言ってんだろう…が!」


\ぺちっ/


「アイタ!」


「わっ!?」



 またしても突然大声でレイを呼んだチキさんにびっくりする間もなく突然後ろからヌッと現れたレイにびっくりした。


 瞬間的に現れるのってレイ本人が忘れてるだけのヴェスタ様から貰ったチカラだったりするのかな…?



「ったく……普通に呼んでくれよ。 飯ならそろそろ呼ぶ頃だと思って準備できてる、今持ってくるぜ」


「イタタ……えっへへ、しばらく会えないと思うと寂しくてつい…あっ…」


「……その話詳しく聞かさてくれないか?」



 厨房に戻ろうとしたレイが振り返り、チキさんに聞き返す。


 肝心のチキさんは『やっべ』って感じの顔でボクに目線を送ってきました。 『やっべ』…じゃないよ!







 レイには明日町を発つ前には伝えるつもりだったけどまだ伝えていなかった。


 今朝ボクがこの世界に来た時のことを話した時に『世界に祈りを届ける』という大雑把な話はしたけど、レイ自身はボクがこんなにすぐに旅立つとは思っていなかったみたいでした。



「そうか……。 まだまだ話したいことがあったんだが、寂しくなるな」



 レイはちょっと悲しそうな目をしているように見える。 ……知らない世界で何年もひとりきり頑張って来た彼は、1日とはいっても同郷のボクと会えて嬉しかったんだと思う。


 それなのにボクには世界を巡る使命がある。 ヴェスタ様は『あいつは今やってる事を途中で投げ出す事なんて出来ないタイプだと思うよ』なんて言ってたし、この宿を閉めるという決断は出来ないだろう。



パンッ

「よしっ、とりあえず昼飯だ昼飯! 飯食ってさっさとギルマスに話付けてこい! それとユズ、今日の夜は腹空かして帰って来いよ!」


「おいリップ、今日の夕飯楽しみにしとけだとよ」


「ほんと!? 店主さんありがとう! じゅるり……」


「お前らのためじゃねぇよ! ……まあ、お前らの分もユズに同行するってんだからついでに作ってやるよ。 ついでだからな!」


「やった! 旅立つ前だし今日の夕飯でユズちゃんの【インベントリ】とかいう収納のチカラを使って根こそぎこの宿の食料持っていくわよ!」


「やめろバカリーダー! またデコピンされるぞ!」


「あー確かそんなチカラ持ってこの世界に来たって言ってたな…。 ああいいぜ、夕飯の食えない分はすきなだけ持っていきな!」


「おおお! いいね、話がわかるぅ!」


「…リーダー、この店主がそこまで気前がいいわけが無いよ。 なにか裏がある……」


「流石ソル、パーティの頭脳って言ったところか。 勿論代金は持っていく分しっかり貰うからな?」


「え゛!? くれるんじゃないの!?」


「当たり前、だ! バカ野郎! 」


\ぺちっ/


「アイタ!」



 レイは厨房に戻って行った。


 テンションを無理にでも上げてボクたちを送り出そうとしてるのがわかる。


 なんだかんだこのチキンクソリプとも長い付き合いだったらしいし思うところもあるんだろうかな。




 そんな感じで待っていると、戻ってきたレイが超特盛のスパゲティみたいな麺が載ったデカい皿を持ってきたのでみんなで平らげました。


 昨日はハンバーグのあまりの美味しさに我を忘れて食べ切ってそのまま寝ちゃったから他のみんながどんな食べ方をしたのか気が付かなかったけど、リップさんが実はパーティ1の大食いなことに驚きました。



───ティエルの町に滞在する最後の1日はまだまだ続く…。

ユズ

「レイ、やっぱり寂しい?」


レイ

「寂しくなんて……ない…訳ないだろ」



これからも柚流の祈りが読者様に届きますように!



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