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TS巫女の祈りが世界に届くまで  作者: ゆの
第二楽章・ティエルの町のエチュード
10/21

おいしいご飯のあとに…

前回の 【巫女の日質問回 l】ですが、読者さまの没入感が下がってしまうと悪いので、別の小説として分けて再投稿致する事にしました。

https://ncode.syosetu.com/n6518hn/1/


良ければそちらもブックマーク等して頂けるとうれしいです。

 俺は和泉 怜司(いずみ れいじ)、 料理系の専門学校に通っている20歳………だった。

回想とか面倒だから手早く終わらせるぞ?

ある日後輩から飲み会に誘われた。 その日はなんだか気分が良く酒が進んでいていつの間にか酔い潰れて眠っていたんだが、気付いたらこの謎の世界に居た。


 手元にあったのは帰宅してから研ごうと思っていた自前の包丁と料理の知識だけだった。


 その後は魔物に追い回されたり、空腹を紛らわす為に見たことも無いリンゴのような木の実や山菜のような雑草を食べながらひたすら歩いた。


 そしてたどり着いたのがこのティエルの町……。 その後3年ほど経った頃、大変なことも色々あったが俺はこの【昇陽の光亭】の店主になった。


 同時に料理長やら受付までこなすこの街の名物のような存在になっていたが、なんだかんだ4年くらいはそんな暮らしを続けていたんだ。



 え? 端折り過ぎだって? いいんだよこれくらいで別に。俺の過去がどれくらい壮絶だって、あの娘の物語とは関係がないんだ。 そうだろ? 柚流…いや、ユズ。








 なにか長い夢……は見ていないと思う………。朝を告げる騒がしい音は今回は何もしない………目覚ましのアラームももうないんだっけ。



「ふあぁ……朝…? ええと……ハンバーグを食べて、その後どうしたんだっけ……?」


「よっ起きたかユズルちゃん」


「うわぁ!? ………レイさん!」


「シッ……静かに。 まだ朝早いから他の奴らは寝てる。 ユズルちゃんにはいくつか聞きたいことがあるんだ、でも女の子だから朝は色々支度があるんだろ? 俺は1階で待ってる、ゆっくりでいいから準備が出来たら昨日の約束通り話をしようぜ」


「えっあの……行っちゃった…」


 レイさんはなんだか沢山言ってドアの向こうに行ってしまった。 要は 「話があるから1階に来い」 って伝えたかったのかな。


 周りを見ると僕が眠っていたものを含めてベッドが3つ並んでいるのが見える。 右にはいびきをかいて眠っているチキさん、左にはすやすやと眠るリップさんが居た。


 状況的に考えれば昨日ハンバーグを食べたボクはそのまま寝ちゃって誰かがこのベッドまで運んでくれたって言うのが妥当……というかそうじゃない訳が無いと思う。


 キングさんとソルさんは別の部屋かな? …そりゃあそうか、男女別々だもんね。



 ボクはこっちの部屋でよかったのかな? って言うかあれ? レイさん、ボクが起きるまで女性部屋に侵入してた………?


 ……これも深く考えないでおこう。


 性別の件やレイさん不法侵入説はとりあえず気にせず2人を起こさないようにゆっくりと部屋の外に出ていくことにしよう。




───ボクの考えに間違いがなければレイさんはやっぱり……。







───俺の考えに間違いがなければ彼女はやっぱり……。



 ユズルちゃんに声をかけた後、あいつらの宿部屋から一階ヘと降りて彼女を待つ。早朝と言ってもまだ日も昇っていない。 夕べハンバーグをすごい勢いで食べてすぐに寝たからあんなに早く起きたんだろうか?


 料理長の癖に朝から料理の仕込みしなくていいのかだって? 今日誰も起きる前に彼女と話をするため、昨夜のうちから朝メシの仕込みは終わっているので何も問題はない。


 ……誰にこんな言い訳をしてるんだ俺は…。 漫画の異世界モノのように誰かがこの世界を覗いてたりするわけなんてないのに。


 そんなこと、この7年でしっかりと身に染みている。 そもそも何故俺がこの世界に来たのか、もし神とやらから召喚されたのしても何ひとつ能力も与えずに放り出されたのか、わかるはずも無い。 いくら調べても……。


 もう元の世界に帰ることなんて諦めかけていたが、今日……いや昨日か。俺の耳に 『ハンバーグ』 という懐かしい響きが聞こえてきたんだ。



「……さん、 レイさん」


「うおっ! ユズルちゃん、思ったより早かったな……」


「あはは……これと言って準備も特にないので…」


「おおそうか…? とりあえずこっちだ、案内する」



 窓に頬杖をついてだいぶ低くなってきた月を眺め、夕暮れでもないのに黄昏ていると後ろから彼女が声をかけてきた。


 女の子だからもう少し朝の支度とかあるものだと思っていたが、そうでもないのか……。それとも俺のぼーっとしてる時間が長かったのか…?


 カウンターの奥へ進んで彼女を呼んだのはベッドと小さなテーブル、それと俺のレシピやここに来てから調べた書籍などがいくつも並んでいる本棚くらいしかない部屋だ。



「ここは俺が寝泊まりしてる部屋だ。 ここなら誰も来ないだろ、じっくりと話が出来る」


「へぇ……。それで、話って言うのは…」


「ああユズル、お前…日本人……だよな?」



 単刀直入に聞く。 俺の一人語りが長くて話が進まん。







「ああユズル、お前…日本人……だよな?」



 すごい単刀直入に来たけど、予想通りだし一番嬉しい質問だった。 話が早くて助かるかもしれない。



「…はい、ボクは『元』日本人です」


「っっ! ………やっぱりか、明らかに巫女服みたいな服装の地点でまさかとは思ってたがハンバーグで確信した。 ………長かった………この世界に来て初めて同郷と出会えた…!」


「あはは……」



 レイさんが小さくガッツポーズをしながら 「ウオオ!!」 って唸っている…。この世界、初対面とイメージが違う人多くない?



「それで、『元』ってのはどういうことだ?」


「それは……」






 ボクは、この世界に来てからのことを語りました。 ボクの前世の名前が 琴音 柚流 であること、女神 ヴェスタ様から色々な能力を授かったこと、そしてそのヴェスタ様から『世界を巡り、沢山の祈りを世界中に届ける』という使命を受けたこと……など、チキンクソリプのみんなにはまだ話していない事も話しました。


 あ、性別の話はしていません。 絶対にややこしくなるから……。







「…じゃあ、柚流ちゃんは、この世界に来てからまだ3日ほどしか経ってないんだな」


「そうですね…。怜司さんは7年も………。 凄いです…」


「まあ俺は学んだ料理の知識と、ただ運が良かっただけだ」


「でも、怜司さんハンバーグを作るのめちゃくちゃ早くなかったですか…?」


「慣れだ慣れ。 あれくらい誰でも」

「できないです」


「そ、そうか……。 多分久々にハンバーグを作ろうと張り切って何かトランス状態にでもなってたのかもしれないな…」



 トランス状態とかよくわからないけど、ハンバーグって火を通すのに時間がかかるのはどうにもならないような……?



「それはそうと柚流ちゃん、名乗ったはいいが 怜司 じゃなくて 今まで通り レイ って呼んでくれないか? 何年もレイと名乗っていたから今更元の名で呼ばれても違和感が凄い」


「わかりました、レイさん」


「む……柚流ちゃん。同郷同士、ふたりでいる時くらいは敬語をやめないか? さん付けもいらない」


「えっでも年上ですし……」


「いいんだ、頼む。」


「………わ、わかったよレイ……さん」



 多分今めちゃくちゃ顔が赤い気がする。 恥ずかしい……。



「ぶっ、ははははは!」


「な、なに笑ってるんですかレイ……さん!」


「はははは!! 戻ってる戻ってる!」


「うう……それならレイもボクのこと ユズ って呼んでよ! ボクだけが恥ずかしい思いをするなんて…!」


「わかった。いいぞ、ユズ。 今度からそう呼ばせてもらう」


「〜〜〜っ! もう!!」




 その後も、ロビーの方から声がしてくるまでの間ふたりで色々と話をしました。


 レイは思っていたよりサブカル系の話題が好みみたいで、某少年誌の漫画が相変わらず全然進んでいないこと、某有名RPGのアニメが再リメイクしていたこと、最近の流行りのアニメは○○……とか。共通の話題もあって良かったと心から思いました。



 ボクは気付かなかったけど、ロビーの方が流石に無視できないほど騒がしくなって来ていたみたいです。



「っと、そろそろ料理を出さんと暴動が起きるかもしれんな」


「えっ! そんなに話してたっけ!? うわ、外明るい!」


「ほら行くぞユズ。 あっそうだ、お前女神が祈りとかなんとかって言ってたけどふわふわした使命に困ってるっても言ってたよな?」


「うん…なにか心当たりあるの!?」



 そう、ボクはこの世界に来てから最高に困っていることがいくつかあるけどそれがそのひとつだ。



 【世界に祈りを届ける】…って一体具体的に何をすればいいの……?



 大問題である。


 とにかくなにか情報交換ができる相手が出来、その相手から欲しかった情報を貰えるだなんて嬉しすぎる。



「おお……すげぇがっつくな……。心当たりっていうよりは、関係ありそうな場所を知ってるんだ。俺はこれから野郎共に飯作らねぇといけねぇから 一緒には行けないが、場所は教えてやるよ」


「あ、ありがとう! ボク、この世界に来たばかりでなにも返すものも無いけど…」


「対価はもう貰ってるぜ? …懐かしい話や最近の向こうの話が聞けて楽しかった。ありがとな」



 レイはとても満足そうな笑顔でボクにその『場所』について教えてくれた。 意外と近いみたい。


 そうと決まれば朝ごはんなんてたべていられない!



「じゃあちょっとそこまで行ってくるよ! もう一度…レイ、ありがとう。 大すき!」



「おお!? ………なにか分かったら…いや何もわからなくても戻ってこいよ! メシ作って待ってるからな!」




 ボクはレイの部屋を出て、沢山の冒険者たちの間を縫って宿のエントランスから飛び出して行った。


 途中チキさんの呼び止める声が聞こえた気がしたけど、今はとにかくこの世界に来て初めてできた具体的な目標にすっ飛んで行きたかった。







「……今のアイツの笑顔………めちゃくちゃかわいいな…。 大すき……か……」



 ふ、俺もそろそろ恋人とか……………待て待て、早とちりはダメだ。


 …というかそもそも相手は15歳の女の子だぞ!? ……でもこの世界だとおかしくはない…のか……?


「まてよ……? なにか違和感があるような…」




「オラ! 店主!!! メシを出せ!!! 」

「そうだそうだ!!! 腹減ったぞ!!!」

「ユズちゃーん!? どこ行くの!?!?」



「そんな考えてる場合じゃなかった……! よし、今日も気合い入れていくぞ!」

レイ (和泉 怜司)

年齢: 27歳

職業:【昇陽の光亭】店主 料理長 受付

性別:男


E:愛用の包丁


加護

【???】



柚流より7年も前にこの世界に流れ着いた日本人。 料理の腕や知識は凄まじく、ある人物の協力があったとはいえたった3年で宿屋を建て、ティエルの町の名物のような存在になっている。


本人は全く知らないらしいが過去にある神物(じんぶつ)から加護を受け取っており…?




これからも柚流の祈りが読者様に届きますように!



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[一言] ユズちゃん罪な子よのぉ……
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