みずうみ
女の子がまだ全然出てこないですがそのうち出るので許してください汗
それにしても、このバス、思ったより人が乗っている。家も見当たらないようなところなのに、座席は7割くらい埋まっているように見える。そのほとんどはおじいさん、おばあさんだが、ちらほらと中年や若者の姿も目に入る。
(田舎だから公共交通機関を使う高齢者が多いんだろうな)
しばらくそんなたわいのないことを考えていたが、ふと、自分のした大失敗に気がついた。
(まてよ、僕は、バス停でもなんでもないところからバスに無理やり乗せてもらったんじゃないのか!?)
なんにも記憶はないけれども、それが常識的におかしいことくらいはわかる。なぜこのバスにあんなにも乗らないといけないような気がしていたのだろう。
次のバス停が来たらすぐ降りよう。そして、ちゃんとお金を払って……。
焦ってポケットを探ると、薄手のピンク色のハンカチが一枚入ったいただけだった。なんてことだ。僕はお金を持っていない。
どうしよう、お金もないのにバスに無理やり乗せてもらって、どうやって償えばいいんだろう。家族がいれば呼んだりも出来るかもしれない。けど、そもそも自分が誰なのかもわからない。ケータイも無い。
あぁ、終わった。ひたすらに謝り倒そう。
頭の中が急な焦りでぐるぐると回り、冷や汗が出てきた。さっきまでの落ち着きは何処へやら、だんだんと苦しくなっていく。
そんなとき。
「えー、ただいまから五分ほどトンネルに入ります。トンネルを抜けるとまもなく目的地です。」
運転手のおばちゃんのハキハキした声が車内に響いた。もうすぐ目的地?
ということは、このバスは路線バスではないのだろうか。路線バスなら終点というのではなかろうか。
そんな思考は、明かりひとつない真っ暗なトンネルへとバスが突入したことで一気にかき消された。
「うっ」
トンネルを抜けると急に明るい世界が目の前に広がる。白い光が眩しくて目がチカチカした。
ぶわっと広がっていく視界。それは、今まで全く見たことのないような美しすぎる光景だった。
真っ青。ひたすらに青い、湖。その真上に渡された道路をバスは走行していた。
瑠璃色の澄み切った水面を、魚がからだをキラキラと虹色に輝かせながら泳ぐ。柔らかそうな水草の生えた水底の砂は白く、空を映すこの湖の青さをさらに際立たせていた。
どこからか、鳥たちが歌う声が聞こえる。遠くの空を飛んでいるのだろうか。
「すごい……。」
この世のものとは思えない光景に、僕は感動で唖然とするしかなかった。




