4
………ーーーーィ…。
四人の騎士がハッと顔を上げる。今、何か聞こえたのだ。顔を見合わせ確信を持つ。二人が隊長に報告するため隊の中央へ向かった。
残った二人は息を潜めて耳を澄ます。余計な音が邪魔しないよう、剣も押さえる。
しばらくの静寂の後、先ほどより少しハッキリと音が聞こえた。
…ーーーーーーーィ!
「あっちだ!」
方角を確認し合い、静かに前進する。音を見失ってはならない。報告へ行った二人が足跡を見失ってもいけない。慎重に笛の音を目指す。
夕食後の捜索が始まって、三時間が経過していた。お告げでは、いつ星が落ちるのか正確な時間は分からない。歴史的に、お告げから五日後に落ちると分かっているが、王都から最も遠い聖域であるこの北の地まで早馬で五日かかることを思えばギリギリの時間であり、神の配慮に感謝すべきだろう。
聖域の端から端まで見落としが無いよう、広く横に散開して捜索している。
山の麓を陣から奥の方へ向かわせた隊員たちは、まだ山の中腹までも登っていないだろう。ここは中腹を超えて山頂が見え始めたところだ。聖域の中心に近づいているが、未だ手掛かりはない。
麓を振り返って広がる隊員達の灯りを見渡した時、雪を撒き散らしながら駆け寄ってくる者がいた。まだ幼さの残る若い騎士が、寒さと興奮で顔を真っ赤にして叫ぶように報告する。
「隊長!笛らしき音が聞こえます。ここから500メートルほど東の沢沿いで、微かに聞こえて来ました!」
「コナー班!俺と一緒に来い!他の者は引き続き捜索を続けよ!」
医療部隊に声を掛け、ざわつく他の騎士達には捜索の続行を告げる。唯一の手がかりだが、星の発見とは限らない。
年若い騎士に案内させ、彼らがかき分けて来た道を走る。
これ以上時間がかかっては生死が不安だ。星であってくれ!!!!
案内された場所へ向かうと、遠く静かに前進する騎士が見えた。時々止まって耳を澄ましている様子がわかる。音がまだ聞こえて来ているのだろう。
沢の地形に音が集まるのか。ここから山頂方面の何処かが音の発生源だろう。
ーーーーーーーーーーイ!
聞こえた!!!確かに笛の音が聞こえる。全員直ちに装備を押さえ、なるべく音を立てないように広がる。
子供の頃から雪に親しんで育った自分が最も東へ歩を進め、はやる気持ちを抑えきれず雪をかいてドンドン前へと向かう。
ピーーーーーーーーーーー!!!
音がハッキリすると同時に、ついに尾根の上に影が見えた。
月の光を背負い、長い髪が風になびく様は正に神の御使いが舞い降りたような神々しさだったーーーーー。