ハレルヤ
俺達はショッピングモール2階のファストフードに向かった
そこは学校の体育館と同じくらい広く全体を使って鬼ごっこができそうだった
そしてたくさんの看板が並んでいた どれも思い出せなかったが
「何にしよっかなー ハンバーガーかなぁ いやラーメンの気分かも
でも うーん」
「好きなもん食べればいいじゃん 金が許す限り」
「自分の食事は」
「「自分で決めるべき」でしょ」
彼が名言を言う前に答えた 名言は一回だけで十分だ
「あ、言いやがったなお前ー」
軽くコツンと俺の頭を叩く
「んじゃ 俺はハンバーガーにしますかぁ アラタはどうする」
「俺もそうする」
そうして注文受付に向かう俺達
あたりに満ちるジャンクフードの匂い
それが何故か俺にとって懐かしかった
数分後
「お前…何も俺と同じメニューにしなくたって」
「奇遇だなぁ」
俺達は同じチーズバーガーセットを頼んでいた
真似なんかしてない メニューに「一番人気」というワードを見つけたから
これにしたのだ
「近くの席空いてんじゃん ここにしようぜ」
幸運なことにすぐそばに椅子が二つの小さな机を見つけた
「そういやこのハンバーガー超人気で つい最近この店にできたらしいぜ」
「そうなの」
「いやー、食べてみたかったんだよね 日本で一番人気のハンバーガー
まあこれチェーン店なんですけれどもね」
「チェーン店かよ」
くだらない話をしながらハンバーガーを頬張る俺
食べた瞬間に口の中に広がる牛肉の風味 ゴマがかかったバンズ
染み渡るピクルスの酸っぱさが口に広がった
…美味い そしてなんだか懐かしかった もしかしたら俺はこのハンバーガーを
どこかで食べたことがあるのかもしれない
「おーい 何ボーッとしてんだよ」
放心状態の俺の目の前に掌をこちらに向けて手を振っているカイの姿があった
「疲れたのか」
「いや、少し考え事してた」
「そういえばさあ お前ってどこから来たの?」
…一番聞かれたくないことを聞かれてしまった
どうしても思い出せない
かと言って彼に記憶喪失だと言っても信じてもらえるはずがない
でも、本当に覚えていない
「もしかして引っ越してきたってやつ?」
「え、まあ そんなもんかな」
「どこから来たの」
興味津々に聞いてくるカイ
「え いや、あー」
「もしかして、答えたくないやつか」
「まー…ね」
「そっかぁ…ならごめんよ」
申し訳なさそうに謝ってきた
良かった もしここで記憶喪失だとか言ったら面倒くさくなりそうだった
「カイはずっとこの近くに住んでるの」
「いや、前は大阪にいた」
「え、そうなの?」
「その前が名古屋で茨城でそして愛媛で…結構いろいろなところに行ったなぁ
親の仕事でたくさんの場所を転々としていたんだ」
「え、じゃあここにきたのはどれくらい前なの」
「だいたい1年前かなぁ」
あんなにショッピングモールの場所を知り尽くしていたので
かなり長くいるのではないかと思ったがたったの1年だとは
「でも良かった 俺にはじめての友達ができて」
「え?」
「しかも帽子も気に入ってくれるなんてさ こんなに嬉しいことはないな」
驚いた あんなにフレンドリーだった奴が
俺のことをはじめての友達だなんて 俺の他にももっと良い奴がたくさんいただろうに
「俺さ 超ちっちゃい頃から親の仕事を手伝ってて遊ぶ暇なんてなかったんだ
というか遊ぶ相手を作れなかったんだ ファッションしか見てこなかった俺
誰もがウルトラマンやアンパンマンに熱中している当時の子供達の話に
俺はついていけなかった みんなも俺の帽子の話についていけない
ずっと一人ぼっちだった いざ友達を作ろうとしても
そこには俺の知っているものは何一つない
気がついた時はそこは全く新しい環境だった
金でも名声でもない 俺があの時一番欲しかったものは
くだらないことで笑いあえる友達だったんだ」
彼の力の抜けた微笑みには
どこか哀愁が漂っていた
さっきまでの活発な様子と打って変わり寂しそうだった
「そうだったんだ」
店の中を走り回る子供達
男女が手を繋ぎ青い春を謳歌する
俺達を囲む風景は和やかだった
「今日からお友達だろ」
「え?」
はじめての友達は今の俺にとっても同じだ
むしろ初対面で何もわからない俺に、ここまで親密に接してくれたんだ
感謝してる
「失う友達がいないなら あとは増えるだけだよ
それに 今日会ったばかりの俺にこんなにグイグイ話しかけるって
コミュ力あるよ それも心強い言葉ばかりだ
ファッションについても真剣だしね」
「そ、そうかなぁ//」
照れくさそうに顔を赤らめ後頭部を掻く
彼の暗い表情に明るい笑顔が浮かぶ
「そうだよ これからも思い出つくろうぜ
俺たちの春はまだ始まってないだろ」
「おう…その通りだな」
俺にしては頼れる言葉が言えたものだ
少し照れくさいがそれでよかった
どこからか 心地の良い鐘の音が聞こえた
気づけばすでに時計の短い針は5の数字を指している
「さて、もう帰るか 早く帰らなきゃ親が心配する」
「俺も仕事に戻らなきゃ 親父に怒られちまう」
食べ物が乗っていた空っぽのトレーを片付けて
わけもなく急ぎ足で出口に向かった
沈もうとしている太陽が雲に隠れていた
「なあ これからもきて良いかな
今度はもっといろんな店をまわってみたい」
「あったりまえよ ここの道案内なら任せな」
目の向こうには帽子屋が見えた
日が暮れて人だかりが増えたのか
客がたくさん入っている様子だった
「さ〜て 仕事仕事!」
全速力で仕事場へ走り出すカイ
まるで我が家に帰る子供のようだった
あいつはもうひとりぼっちじゃない
あいつには応援してくれる人がたくさんいる
あいつもお客さんもいい笑顔だ
そんなこんなで俺も少し笑えてきた
太陽はこの街をオレンジ色の暖かい光で
いつまでも照らし続けた
明日もきっといい天気だ




