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I can decide

「帽子っていうのはさ、服の着こなしの

抜群の存在感を発揮してくれるんだよ

だから帽子は今のファッションにとって

大事な存在なんだ

日差しも雨も防げるし髪型もうまく工夫

できるし…」

さっきからカイの帽子に対する熱い思いが止まらない

もう歩いてから10分間この状態だ

人間は好きなことに依存せずには

いられない生き物なのだろう

「へぇ 帽子に詳しいんだね 

ところでさぁ」

「よし着いた ここだよ 

その帽子に打ってつけの店は」

質問しても自分の話だ

こいつは人の話を聞く耳を持っていないのか

結局自分は話したいことを話せずに終わった

「ハットが黒だからなぁ モノクロファッションが似合うかも いや…」

服を選ぶときのカイの目つきが違う

服装の品質 デザイン 

そして特性を見抜いている彼の目はまるで職人のようだ

「ブーツとかも合わせたら…うん 

これだ このファッションにぴったり

いや、やっぱり黒一色かな 

カラフルな格好は…」

服の候補を次々とカゴへ入れていく

それもひとつではなく三つもカゴを使って

「ねぇ、別にそんな本気で悩まなくても…」

「洋服はその人の名刺でもあり、歴史でもある

そして心とも繋がっているんだ」

カイは服を選びながら真剣な表情で語った

その表情の目の中には彼のファッションへの熱意が輝きとなって表れていた

「よし この中からアラタが決めて」

カイは俺の前に全てのカゴを差し出した

「自分の服は、自分の人生は自分で決めるべきだ」

彼のセリフは俺に服の選択を求めた

そして、俺の人生の決断を求めた

「最初が肝心なんだよ、人生って 

服はその人の生き様だ

"終わり良ければ全て良し"確かにそうだ

でも終わりっていつなのかわからない 

未来なんてわからない

俺らは"今"を生きている

その始まりの"今"の決断をあやふやにして

"未来"の自分を苦しめたくない 

お前には"決断する"権利があるんだ

君の未来は今のお前が決めろ」

彼は俺の手に全てカゴを持たせて試着室へ押し込んだ

…大袈裟だが確かにその通りだ

過去が不明な自分にも未来を変えることはできる

俺はカイが自分のために選んでくれた服を試着しながら

ひたすら考え続けた



「終わりました」

「お疲れ様です ご購入されない服は

こちらで預かり片付けておきます」

「あの この服を着て帰っても良いですか」

「構いませんよ 全品合わせて2万5000円です」

会計を済ませた俺は店の出口へと向かう

カイは出口のドアのそばで

壁に寄りかかって立っている

俺に気づいたカイは駆け足で俺の方に

向かった

「これで良かったのかい」

「うん 君が俺のために一生懸命に

選んでくれた服なんだ

これで正解だと思う」

白いワイシャツ 黒いガウチョパンツ 

黒いブーツ 

鍵型のアクセサリーがついたネックレス そして黒いハット帽

カイが最初に選んだ服である

「超似合ってるよ 気に入った?」

「うん 超気に入った」

「それは良かった」

「…」

「…」

「…ブッ」

「…ハハ」

「アハハハハハハハハハハハハハ」

訳もなく俺達は笑いあった 

特に理由もない 

でも何かが心に湧き上がった

笑わせてくれるような楽しい何かが

「ハハハ…なぁ飯でも食いに行こうぜ 

近くにファストフードあるからさ」

「うん いいね」

これから先のことなんて俺にはわからない

でも 

きっと楽しいことがこれから待ってるさ

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