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ハット帽

この街で暮らしてから一週間がたった

叔母との生活は少しずつ慣れてきたし

自宅の周辺の場所も把握できるようになってきた

だが あと一週間で入学式のシーズンである

「叔母さん、俺ってどこの高校に進学するの?

まだ制服も教材も買ってないけど」

叔母は食器洗いを終えこっちを振り向いた

「公立にしようかな〜と思ったけどやっぱ私立の"成明学園"にした

あそこ私の母校だし、幼稚園から大学まであるから生徒同士仲が良いし

友達もたくさんできると思ったからあなたにぴったりだと思って」

「もう決まってるんだ」

「うん、あそこ私服登校だし、施設も綺麗だし…」

叔母の母校への崇拝が止まらない 

さすが卒業生

「じ、じゃあ俺買い物行ってくるよ なんか買ってきて欲しいものある?」

「ないけど あ、そうだ」

叔母が長財布を鞄から出してきた

「え」

「あなたの財布とお金、私のはあるから大丈夫だよ」

「で、でも」

中には1万円札が3枚入っていた

また15歳の俺にとっては多すぎるほどの金だ

「それで服を買いな 自分の好きな服を着ていたいでしょ」

「ありがたいけど高額すぎるよ」

「学生が遠慮しないの 街中で買いに行きな

あ、そうだ あとボールペンと修正液買ってきてくれる?」




そんなこんなで俺は今 

街のショッピングモールにいる

最初は叔母に罪悪感を感じたのだが、

買い物をしていくうちにその罪悪感が消えていき

むしろワクワクしていた

店を包み込む新しい服の匂い 心地が良かった

ゲームで例えれば 冒険に出る前の最初の町で装備を探している気分と少し似ていた

何にしようか

まずは帽子だ

事故で頭の傷痕の象徴である包帯を見られてしまっては、お洒落な服の良さを無駄にしてしまう

まさに"玉に瑕"だ

俺には今の学生たちの性格や感受性がわからない

だが頭の傷を見られたら間違いなくみんなは俺をいじめの標的にするだろう

キャップ帽のブリムなんかでは小さすぎる

あらゆる言葉と現実から守ってくれるような大きな帽子が欲しかった

「お客様何をお探しでしょうか」

男性店員が話しかけてきた

身長は自分と比べて少し小さい

ロゴの入った黒いシャツに赤いキャップ帽

顔も何故か店員の割に若い

「帽子が欲しいんですけど…」

「帽子ですか なにかご要望は?」

「大きめの…」

「大きめか… あ、そうだ マネキンに 良いハット帽子を被せてるんだ

お手数ですけど、そこまで付いてってくれます?」

俺を案内する店員、何故かニコニコ

微笑んでいた

「こちらが当店で目玉の商品となってます ハット帽子です 

被っても良いですよ」

俺は店員の手に持った帽子にそっと触れて被った

農家で使う麦わら帽子のような

でかいブリム

頭のてっぺんを全て包みこむクラウン

ポッカリ隙間のできた帽子にはなんでも詰め込めそうだった

気に入った

「とてもお似合いですよお客様」

「そうですか? そんなこと言われたの初めてですよ あの…値段って」

「1000円ですが今日は店が10周年記念なので900円にしましょう」

「よし、これにします 買います」

「毎度ありぃ」

やった 俺は運がいい 気に入った帽子をいつもより安く売ってもらえるなんて

考えもしなかった 

「でもお客様 帽子だけでは物足りないのではないですか?」

「そうっすね…今から服を探すところです せっかくだからこの帽子を

ファッションベースにしようかな」

「わかりました 私もついていきましょう」

え? なんで?俺はこの店で帽子を買った

用事を済ませた俺にはもう用はないだろう それに自分の服のことだ

これくらい自分で…

「親父ィ ちょっと休憩とるわ」

そう言って店員はレジの奥で名前のカードを置いていき

赤いダウンジャケットを羽織ってまたこちらに戻った

「じゃ、行きましょか」

急にフレンドリーに接してくる店員

俺の手を引っ張って店の外へ飛び出した

店員と買い物?頭の理解が追いつかなかった 

そして数十メートル走って俺は手を振り解いた

「なんすかあんた勝手に初対面の人の手を引っ張って走って 気味が悪いな」

思わず驚きを表面に出してしまった すると店員は

「君、もしかして高1?」

「え、あ、はい」

「俺と同い年じゃん! 高校どこ行くの?」

「んなこと言えるわけ…」

「じゃあ俺から言うわ 俺"成明学園"なんだけど」

「え、俺と同じじゃん」

「ひょ〜っ 今年同じ高校に通う奴がいて感激ぃ〜

なあ、これからよろしくな!俺の名前は"金田 カイ" 気軽に"カイ"って呼んで!」

テンションが高い奴だ 

「あ あ〜…よろしく"新田 リンネ"です」

「敬語使うなよな〜 じゃ、服探そうぜ 俺、いい店知ってるんだ」

まさかの急展開だ

店員と出かけるとは

それももうすぐ高校生で俺と同じ学校に通おうとしている

もしかすると今の俺にとって最初の友達になるのかもしれない

そんな期待が心の底にひっそりと芽生えた


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