~孤高の魔法戦士~
第六話 魔法陣
思いつきで描いた簡単な魔法陣がバイキンマン(小)を召喚したことは、驚くことじゃなかった。むしろ何かしらが召喚できる自信はあった。いつになく絶好調な自分に酔いながら、魔法戦士になりきっていたからだ。
気の毒なマクドナルドのバイトちゃんは、店内の全ての人間が見守る中、「スマイル」を提供した。その後、厨房に引っ込んで二度と出てくることはなかったのだが、ざわつく店内で後に伝説となったREIWAのTシャツBOYは、渾身のスマイルをスルーして、大急ぎで帰宅した。
「魔法陣、魔法陣、魔法陣」
狂ったように呟きながら、階段を駆け上がる。
小学一年生の頃におばあちゃんに買ってもらったコクヨデスクの鍵付の引き出しをあけ、鉛筆のカスで黒く汚れた表紙の自由帳をひらいた。
「今こそ封印を解く時だ。」
少し興奮気味にページをめくる。
「これだ!!」
ひらいたページには、もちろんアレが描かれている。
アレ、とは、厨二魂に火をつける起爆剤とも言える、ソレである。2Bで描かれたソレは、雅之オリジナルの自信作だった。
「大人になったら特許を取るつもりで、今まで封印していたが。思ったより早く日の目を見ることになったな。」
特許の意味を理解する知能は持ち合わせていない事には今は触れないでおこう。
魔法陣。
妖精や魔物、悪魔などの召喚、魔力や体力の回復、魔物なを避ける結界、主にそんな役割を果たす誰もが憧れる魔法陣。そのデザインを寝る間も惜しんでひたすらに描いた経験は誰しもあるだろう。
雅之少年は、小学校の休み時間を、ほぼそれに費やした。色んな魔法陣を真似して、何度も何度も棒で地面に描いてみたが、召喚に成功したことは無かった。
その原因は、デザインがパクリだからだ。
そう考えたクレバーな雅之少年は、世界一恰好良い、オリジナルの魔法陣を求めて、ただひたすらに描いた。
頭の悪い担任が、おかんに何を言ったかしらないが、学校から帰ると、書き溜めていた(魔法陣ノート)が全て消えていた悪夢を思い出す。
今でも怒りが込み上げ、手が震える。家出をしたものの半日で腹が減り、帰宅後おかんの大切にしていたルビーの指輪を、バナナに突っ込んで飲み込んだ。
「これは俺の最高傑作だ。キャサリン、これだろ?お前が求めていたのは。」
愛しげにキャサリンを撫で、指でノートの魔法陣をなぞる。
「キャサリンは、魔法陣が好きなんだな。」
ふざけて、裸の大将がおにぎりを食べる的なイントネーションで言葉にだす。
ふふふ。もう、笑みがとこぼれて止まらない。
羨ましがる山田が目に浮かんだ。
「出でよ!ラムちゃん!!」
雅之の手の先のキャサリンが、踊るようなステップで魔法陣を描く。
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