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~賢者はトランジスタグラマー~

第29話 オレンジジュースとイチゴショート




 はじめてうちに、女の子が遊びに来た。




 妹の美幸は、自分の散らかった部屋を友達に見られるのと、そのために片づけるのを嫌い友達を呼ばない。




 そんなことはどうでもいい。




 雅之に、あの雅之に。女の子のお友達ができた?


いや!万に一つの可能性で、彼女かも知れない。




 母は興奮していた。




 大事に大事に育ててきた長男。母的には目元が豊川悦史、もしくは最近でいうと綾乃郷に似ている男前だと思っている。




 高校生になり、チャームポイントの目元を前髪で隠しだしたからか?なんだか少しオタクっぽくなったことが、災いしているようで。なかなか彼女を連れてこない。




 今か今かと待っていたその瞬間が、とうとう訪れた。




 涙で前が見えない。崩れた化粧を直すのも忘れ、ケーキを買いに普段は行かない高級スーパーへ向かう。




美幸は出かけている。家には雅之と敦美の二人しか居ない。




「ね、雅之君。なんて呼んだらいいかな?」




 雅之が秋川氏と信じ込んだ敦美は、少し緊張気味に尋ねる。




「そうだな、普通に森川君でもいいし、山田が呼んでるもっちゃんでもいいよ。」




本心では、ご主人様、もしくはダーリンがいいなと思いつつ、学校でそう呼ばれると、他の女子が焼きもちをやく可能性がある。ここは、ハーレム完成までは我慢をすることにした。




 雅之君、完全に調子に乗っちゃってるね。神様、この方向性は大丈夫なのかな?




 そうじゃな確かに浮かれすぎではあるが、これまでの幸運な流れは雅之の実力がついてきた証拠じゃ。今はこのまま突っ走っていいじゃろう。




「じゃ、親しみを込めて、もっちゃんって呼ぶね。」




「ふふ。」




「えへへ。」




 何だか照れる。幸せってこういうことを言うんだろうな。この幸せで満足できない自分は、やはり王者にふさわしい器だ。雄の中の雄だ。




 敦美の壮大な勘違いを知る由もない。




「ね、もっちゃんが変身してることは、私以外知らないの?」



 ああ、顔面変化魔法のことは気づいていたのか。



やはり前田さんは賢い。賢者だ。


 

少し焦ったが、これはこれで好都合だと思い直す。



「ん、知っている協力者が一人だけ、大阪にいるんだけど。また紹介するよ。」




 秋川様に協力すると決めたものの、雅之にに成りすましている理由は見当もつかない。そこに触れていいものか?と思いつつ、おずおずと質問した。




「ね、もっちゃんが変身する理由ってなに?」




 おお、確信を突いてきたな。どうする?ハーレム構築のためと白状したら、また焼きもちビンタをくらう可能性が高く、最悪愛想をつかされる。


ここは、オブラートに包むか。




「聖カルタス城亜高校の女子たちの目を覚ますためだ。」




 そう、眠りの美女たちの目を覚まし、俺が王として君臨するためだ。




「学校の女子みんなが、何かに洗脳されてるってこと?」




 そう言われたらそうだ。サッカー部の大野がカッコイイだの、美術部の澤部が星野源に似ててイケメンだの。皆悪い夢をみているんだ。メディアの流行に洗脳されている。目を覚まして俺に魅了されればいい。




「うん。俺はその為に、全力を尽くすつもりだ。」




 敦美は、秋川氏が何か大きな悪と戦っている。その戦いに自分は協力し、最終的には勝利してもとの秋川氏にもどった森川雅之、いや、秋川氏と結ばれる。そんな夢を追いかけることに決めた。




「私に何が出来る?」




「そうだな、女子の気持ち、を教えて欲しい。」




「女子の目を覚ます為には、女子の心理を知らなければならない。」




「分かった。協力する。」




 ティラリリラリラ~リルルルルル~ 柔らかなメロディが鳴り響く。




 賢者・前田敦美LV1が仲間になった。




コンコンッ




「ケーキ買ってきたわよ~。」




 母が嬉しそうにケーキとオレンジジュースを持って入ってきた。




二人で頬張ったイチゴショートは、甘酸っぱい青春の思い出だ。



この作品に目を通してくれて、ありがとうございます。ほんと、嬉しいです。


ブックマークつけてもらえたら、いちいちびっくりして大喜びしてます。評価ポイント入れるのもひと手間かかるのに、本当にありがたいです。


だんだん登場人物が増えてややこしくなってまいりました。次話で登場人物紹介をさせてもらいます。

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