~いざ地獄の舞台へ~
第20話 覚醒
雅之は焦れていた。あと10分経てば、仙人から指示された通りに警察に通報する。
それまでに決着をつけると言っていたが、魑魅魍魎の蠢く巣の中で一人、どう戦っているのか。
見えない分、余計に嫌な想像ばかりが膨らんでいく。
警察に「未成年の友達が男たちに連れられて店の中に引きずりこまれた。自分は逃げてきたから、助けて欲しい。」と通報する。
五分と経たず、曽根崎署の警官たちが駆けつけるだろう。
ん?
ちょっと待てよ。
そしたら、仙人はどうなるんだろう?
「気を付けて帰ってね。」で、めでたし、めでたし?
「そんな訳ない!」
雅之は大事なことにやっと気が付いた。
俺たちは未成年だ。繁華街にいるだけでも、補導される。ましてこんな場所で何をしてたんだって、問い詰められる。少なくとも、親に電話されて迎えに来るように言われるだろう。
俺はいい。別に、どうせ落ちこぼれでおかんに呆れられてる身だし。怒られたって平気だ。
それに、学校に連絡されて、万が一停学くらっても、高校卒業後は漫画家のアシスタントだ。進路に影響は無いもんな。
そこまで考えて、気が付いた。
「やばい。駄目だ!」
仙人には夢がある。
芸能界でコスプレして、天下とってハーレムは、俺が考えた思いつきだ。
いいな!って、将来一緒にでっかいハーレム造ろうなって約束もしてくれた。
「駄目だ。仙人の夢が壊れる。」
雅之は鼻水を垂らして号泣しながら、再びエレベーターのボタンが壊れるくらい、叩きまくった。
「オレな、実は夢あんねん。」仙人の声が頭で響く。
うちの学校、幼稚園からのエスカレーターの私立でな。
偏差値も学校のランクも高いから、このまま大学まで上がって、安定した職につけるし、ハイクラスな結婚相手も見つけられるて。
親が決めてるねん。オレの道。
やけどな、大学行って、死ぬほど勉強して、スウェーデンの大学に編入するねん。そこな、世界でもトップクラスのAI知能の研究してるラボがあるねん。
「オレな、理想のアンドロイド作るんや。」
「ほほー!なら、ロボット界でもハーレムを!ということになりますな。」
「ほんまな!それもええな。」
あいつの学校は校則が厳しいはずだ。停学ですむかどうか分からないし、万が一、内申に響いて将来の夢が閉ざされたら?
「そんなん、許さん。」
鼻水だらけの魔法戦士は、地獄のモンスターの巣く戦いの舞台の扉を気合で蹴り飛ばして入場した。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
前も見ずに、キャサリンを振り回しながら突進する。方向は誰もいない壁に向かっている。このままでは体当たりして気絶するのでは、という勢いだ。
「なんだなんだ?うわ、なにこいつキモ!」
「おいおいおい。なんかヤバそうやん。一発キメてトンデんのか?」
「ナイフもってんじゃね?」
雅之の前には心ばかりの風が吹いている。冷房にかき消され、特に意味をなしてはいない。
雅之の入場で、場は騒然としたが、ぐったりしている仙人の肩を抱いている専務とかいうボスだけは落ち着いていた。
「何やってんだ?つまみ出せ。」
「すんません!すぐ!」
一番下っ端であろう地獄の黒騎士Aが、不気味に笑いながら雅之に向かってきた。
その時、目を開けた雅之の視線の先に、仙人が映る。息をしているのかどうかも分からないくらいに弱っている。
「ぷこすこめりまげ!ちきれびのゆし!」「ばんぼ!」「やぎうぃ!」
泣きながら。鳴きながら。涎を垂らしながら。獣のように。モンスターのように。
キャサリンは自分の身体が引きちぎれるかと思った。
雅之の手の先、キャサリンの身体から、エネルギーが溢れだす。
ギュンギュンギュン
空を引き裂くような音がして、地獄の騎士Aの頭から金色の塊が落ちる。
一瞬、ほんの一瞬の出来事だった。
誰もが息をのむ。
と。
「ぎゃー、ううう!」
「無理無理無理無理!」
地獄の黒騎士B・C・D・E・Fに30のダメージ。
地獄の黒騎士G・H・Iは痺れて動けない。
半数以上はその場を転げまわり、残りは固まった。
「何だよ、何なんだよ!」
一人意味の分からないという様子の地獄の黒騎士A。
恐ろしいことに、奴の自慢の肩まである金髪のてっぺんは、コンパスで描いた円のように綺麗に消えていた。
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