~REIWAの魔法戦士洞窟へ挑む~
第14話 ふたりならやれる
「ふじこ、いつ帰るん?」
「明日の夕方五時くらいかな。次の日プールの補講があるから。」
「そか。」
ぐー
さっきバナナかじっただけだったから、さすがに腹が鳴る。
こんな早朝から、始発の地下鉄で移動。今から、仙人と修行だ。
「亀仙人と修行。」
ぽつりと呟いて、横からバシーとはたかれた。
「いじりすぎや。」
俺が藤子不二雄を目指して漫画を描きためている秘密も、昨夜話したし。
仙人がいかに亀仙人を尊敬しているかも、共感できる話だった。
俺は、自分の生み出した漫画の主人公の魔法少女に激似のアシスタントを住み込みで雇い、寝食を共にしつつ、締め切り前のイライラを抑えるためにキスをねだり、そして、ハーレムの夫人として迎え入れる。新連載を書く毎に、一人増やす。
まずは、高校を卒業したら漫画家のアシをしながら、魔法の腕を磨く。
終わることのない壮大な夢だ。なにしろ、ハーレムだから。沢山の人材が必要だ。
仙人と約束をした。
「俺は俗世でハーレムの王となり、仙人は天界でハーレムを構築し、いつの日か統合させ、俺たち二人の楽園を作る。」
仙人は、俺の提案を気に入ってくれた。仙人なら、絶対に夢を叶えるはずだ。そして、俺も。
「な、キャサリン!」
「な、キャサリン!」
「真似すんなよー。」
グダグダ言いながら歩いていたら、目的地に着いたらしい。
とうとう、こんな世界の果てまで来た。北新地。声に出すのも恐ろしい.
東の銀座、西の北新地。女王様達が支配するという夜の街だ。
正直、来たくは無かった。恐ろしくて足がすくむ。が、しかし。
「なあ、足がくがくしてんで。大丈夫か?」
俺にはキャサリンと、相棒がいる。
「大丈夫だ。ただ、装備を整えてくれば良かったかもしれぬ。」
二日目のREIWAーTは、おろしたての張りを失い、ファブリーズをもってしても隠し切れない俺の香りをまとっている。
こんなところで一体、なにをすればいいのか、見当もつかない。草食動物のテリトリーは、梅田駅500メートル圏内のビックカメラまでだ。
「この辺でええかな。」
駅地下から上ると、早速モンスターに遭遇してしまった。
真っ白で頬がコガネムシみたく光っている、やたらとまつ毛がふさふさしていて不自然な顔の、おそらく、これがあの、キャバ嬢という生き物か。足は速くなさそうだ。これなら逃げられる。
こちらから動かずして、タクシーで逃げた。不戦勝だ。
「危なかった。武器が異常に高価な生物らしいから、パワーはなくとも、正面から戦うとたたではすまなかったな。」
「戦わないでレベル上げなんて、出来るわけないやろ。先手必勝や。次は逃がさへんで。」
「いやさ、あのさぁ、バイキンマン小と風の呪文でどう戦うんだよ?いくらなんでも無茶だ。」
「アホか。なんでこの時間に来たか考えてみろよ。あいつら、朝方はぼろぼろやわ。HP、MP共にゼロに近い。」
「なんでそんなこと知ってんだよ。」
「おかんの姉ちゃんがな、ここらでホステスしてたんや。近所に住んでたんやけどな。親族みんなの疫病神扱いで。面倒おこして警察が連れて帰ってくれ言うておかんに電話かかってきたこともあるねん。」
「今は行方知れずやけど。」
「そうか。」
「色んなおもろい話、聞かせてくれたで。俺のことも、唯一、気付いてくれたんや。大好きやった。亜矢ならも少ししたら、新地でナンバーワン取れるって。」
「そうか。」
「やからな、一緒に奴ら倒そうや。この街におばちゃんに乱暴したヤツおるんや。引っ張り出して、ぼこぼこにやったる。」
「そうか。」
ん?それ、俺、関係あるか?と少し思ったが、レベル上げには申し分ない冒険になりそうだ。
俺たちは、恐ろしい洞窟に足を踏み入れた。
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