~深夜の告白~
第13話 青春の青のり
「性同一性障害って知ってる?」
うん。聞いたことある。
「オレな、男やねん。」
「お母さんも気付いてないけど。」
下を向いたまま、小さな小さな声で、仙人が言った。
肩がことこと震える。
なんだ、そっか。仙人はちゃんと男だったんだ。
雅之はホッとした。
ネットで語ったあれこれや、男同士の馬鹿な話。仙人が女だと分かっても、なんだかあれが
演技だと思えなくて。それだけが、モヤモヤ霧がかかったみたいになっていた。
と、同時に、色んな芸能人の顔が浮かんでは消える。
マツコデラックス、はるな愛、美川憲一もそうだったかな。違うかな。
ジャンルがよく分からない。
とにかく、中身と見た目が違うってことだよな。中身なんて、誰にも見えないけど、性別は、勝手に決められてる。産まれた時から。
「なあ、仙人、俺、いいこと思いついた!」
少し首をあげた仙人の目が赤い。
「仙人!芸能界デビューしようよ!」
ついつい興奮して、仙人の両肩を持ってガクガクさせる。
赤い目をしばしばさせて、仙人が笑った。
「なんでやねん!」
「冗談とかじゃなくて!」
「あのさ、仙人、キャラコスしたら、みんなびっくりする。絶対、モテる。」
「きれいな顔で、女の子かと思ったら、すんげー男前で、そんでもって、中身も男の。伯爵とか、戦士とか、執事とか!いいじゃん!みんな、びっくりする。すごく似合うと思う。」
「女子にモテる!」
自信満々に言い切った俺は、これ以上ないドヤ顔を決めた。
仙人が呆れ顔で笑っている。良い笑顔だ。
「ふじこ、お前、ぶれないな。」
意味が分からず、ボーとしていたら、いきなり頭をパーンと叩かれた。
「最高!てことや。」
ふたりで顔を見合わせて笑う。次は俺のターンだ、と思った。
「俺、この間、家の風呂で、魔法の杖拾った。」
「これ。」
「キャサリン。」
ごそごそキャサリンをパジャマの胸ポケットから取り出して見せた。
「うん。さっき見た。」
そうだ。バイキンマン小を紹介済みだったな。
「まだ、さっきのヤツ呼び出すのと、小さな風おこすくらいしか、出来ないんだ。」
「レベルが足りないんだと思う。」
俺は仙人に、自分の状態と、今後の目標を包み隠さず話した。
俺たちは、布団の上にあぐらをかいて、いつまでも語りあった。
「なぁ、不死弧CのCて、何?」
「ああ。とうとうそこに気付かれましたな。」
「俺の仙人も教えるから。」
「ぬぬ。」
「せーので、言おうか。」
「せーの」
「亀仙人。」「藤子不二雄。」
「「が、好きだから!」」
「何だよそれ!」
「しょーもなぁ。」
「次なる藤子不二雄は俺だ。藤子不二雄C。不死弧は当て字。カッコイイだろ。」
「藤子不二雄A、B、て順番だっけ?次はCか。うん。カッコイイやん。」
「次なる亀仙人は俺だ。不死身のエロじじいに俺はなる。」
「クイダオレは?」
「知らんの?大阪の心や。」
「何それ。」
「しょーもなぁ。」
ばあちゃんは、いつの間にか帰ってきてて、食卓からたこ焼きの匂いがする。
「腹へった。」
「ばーちゃん!たこ焼き!」
寝る前にたこ焼き食べられるなんて、贅沢だ。
青のりだらけのまま、川の字になって寝た。
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駆け出しですが、長くやっていきたいと思っています。よろしくお願い致します。