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プロローグ『俺のラブコメの始まりはどうやら最悪らしい』

 ――最悪のタイミングだ。

 そう考えた時にはもう遅かった。彼、瓜生巧(うりゅうたくみ)の前には自分のことを睨み、敵意をむき出しにした真島冬華(ましまふゆか)の姿があった。

 彼女が自分のことをその軽蔑する目で見てくる理由はわかっている。しかし、彼の中でも一人の男としてどうしても譲れないものがった。

「―—なんか用があるんでしょ?早く言いなさいよ」

 教室の中心で繰り広げられている男女の睨み合いを周りの生徒たちは殆どが、その異様な雰囲気をみていた。

 その二人が醸し出す独特のピリついた雰囲気に圧倒される者、または、その重苦しい雰囲気に耐え切れず教室から他人事のようにそそくさと逃げる者。

 瓜生は、同級生たちの光景を視界の隅にいれながらこの状況に焦っていた。

 ―—時間がない。

 しかし、人が大勢いるこの状況でこの要件を発言することによって、今後の彼のキャンパスライフは平穏と呼べる今までのものには戻れないだろう。

 瓜生は小さく深呼吸をし、一つの決心をした。

「さっきから私の話聞いてるの?用があるんでしょ?」

 だんだん彼女表情にも苛立ちが見え始めた。そして、それまで自然と逸らしていたその視線をしっかりと彼女の透き通るような薄茶色の瞳孔に合わせて、

「―—あのさ」

 ここまで口から言葉がこぼれてしまったら引き下がれない。先陣を切った言葉を繋ぐように残りの言葉を言い放った。

「お前のパンツ…見せてくれないか?」

 ――時間が止まった。

 もう、これしかなかった。こう聞く以外には残されていなかった。

「こ…」

「へ?」

「こんのっ!!変態痴漢男っ!!」

 彼女の強烈な右ストレートが顔面にクリティカルヒットした。

 その反動で思いきり重心が後ろに傾き、体が重力によって自然と地べたに近づいていく。意識が遠のく中、視界の隅に映った同級生たちの顔は様々なものであった。女子からは汚物を見る眼差しを向けられ、男子からは尊敬とよくやったといわんばかりの健闘を称える眼差し。

 最後に見えた、目の前の彼女の眼差しは恥ずかしさと怒りと軽蔑の様々な思いが複雑に混じった、そんな風に見えた。

 ―—…どうしてこうなった。

 その直後、意識が消えた。





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