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唇は赤ければ赤いほど赤い  作者: ヘルスメイク前健
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花盛りの季節

 オーイエー! あの時、あの娘は十七歳だった。


 私は、誰もいない海でふたりの愛を確かめたかった。


 もし彼女が十五歳だったならば話は別だ。盗んだバイクで走り出すことを優先したであろう。


 何はともあれ、私はあの娘と誰もいない海で愛を確かめたかったのだ。強い衝動を持っていた。


 あの頃から長い年月が経った今でも、彼女の前髪の垂れ下がり具合や二つに編んだ横髪(後ろにひとつだけ編んでいたこともあった)、額の中央やや右寄りに付いていた黒子、なかんずく決して派手ではないが全く屈託のない笑顔を鮮明に思い出すことができる。「人生の幸福」をいつまでも記憶に留めておける人間の脳の玄妙なること!


 あの娘に初めて会った日は、とうに桜は散り、そろそろ紫陽花が咲く時分であった。花鳥風月に無頓着な私だが、やはりこれまた覚えているのだ。嗚呼、床しい。


 彼女は私の言動に対して、いちいち笑みを浮かべた。「クスクス」という嬌笑をも伴い。私は十七歳の少女に菩薩を見たような心持ちだった。


 なぜかあの娘は私の腕をすりぬけようとした。私はこの時とばかりに彼女の手を握りそして抱きしめてダンスをした。真っ赤な太陽の下で一日中踊りまくった。彼女の踊りは最高にイカしていた。私のダンスも人生最高のものだったと思う。


 体を揺すり踊って踊って……踊った。二人は鴎になったようだった。興奮が極まり、ツイストし、大きくシャウト。大きな風が吹いていたけれどもどこ吹く風。びくともしないでツイスト&シャウト! 真夏の白昼夢。


 あの娘はあの時生きていた。


 今となっては彼女の行方は知らない。蒲公英の咲く季節に、彼女はどこかへ旅立った。美しきものは一つの場所に居続けるわけにはいかない。


 そういうわけだから、あの娘は私の心の中では永遠に十七歳なのだ。少女はやがて大人の女になるのであろうが、彼女は私にとって永遠の十七歳、そして菩薩なのである。


 花も実も咲かない極寒の真冬に、そのような思い出を懐かしむ。ウクレレを弾きながら。


 あの娘はあの時生きていた。


 オーイエー! オーイエー!


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