黄色い小人と雪の舟
お子様に読み聞かせられるお話を意識しております。
小人の住む原っぱがありました。
ある冬の日、たくさんの雪が降りました。
原っぱは一面、銀世界。
雪はキレイですが、小人たちは大変です。
雪が積もりすぎると家から出られなくなってしまいます。
赤い小人が家の前を雪かきしていると、上から雪が降ってきました。
なんと隣の家に住む青い小人が屋根の雪下ろしをしています。
「おぉい、うちの上に雪を落とすな」
赤い小人が怒ります。
青い小人が雪下ろしをしていると、上から雪が降ってきます。
なんと裏の家に住む緑の小人が屋根の雪下ろしをしています。
「こら、うちの上に雪を落とすな」
青い小人も怒ります。
緑の小人が雪下ろしをしていると、家の前に雪が積まれている事に気が付きました。
なんとななめ向かいに住む赤い小人が雪を積み上げていました。
「おいおい、うちの前に雪を積むな」
緑の小人も怒ります。
「何をするんだ」
「お前が悪い」
「お前こそ悪い」
三人の小人はケンカを始めてしまいました。
そこに黄色い小人がやってきました。
「こんにちは。雪がいっぱいあったから、良い物を作ったよ」
三人の小人は、黄色い小人がどんな良い物を作ったのか見てみようと思いました。
「これだよ」
案内されたのは黄色い小人の家の横にある、小さなかまくらです。
「ちょっと狭いけど、暖かいんだ」
気付けば三人の小人は手も足もすっかり冷えて、鼻の頭も真っ赤です。
少し迷った後、皆でギュウギュウとかまくらに入りました。
「これは凄い」
「なんて暖かいんだ」
「かまくらか、とても良い」
皆に喜んでもらえて黄色い小人も大満足です。
そして、もっと良いことを思い付きました。
「雪はまだまだいっぱいある。もっと凄いものを作ってみよう」
「それは良い」
赤い小人が言いました。
「ただ雪かきするより面白い」
青い小人も言いました。
「ケンカするよりよっぽど良い」
緑の小人も言いました。
皆すっかり仲直り。
せっせと雪を集めます。
黄色い小人も、せっせと雪を積み上げます。
皆の家のまわりがスッキリした頃、凄いものが完成しました。
とても大きな、立派な舟です。
水の上は進めないけど、雪の舟は本物の舟みたいにステキです。
「凄い舟だ。十人は乗れそうだ」
黄色い小人はとびはねて喜びます。
「ちゃんと舵もついてるぞ」
赤い小人が手を叩きます。
「狭いが船室も入れるぞ」
青い小人は鼻の下をこすります。
「溶けてしまうのがもったいない」
緑の小人も嬉しそうです。
黄色い小人は船室に、ちょんちょんちょんっとロウソクを飾りました。
赤い小人は、家から温めた花のミツを持ってきます。
青い小人は、干しブドウを持ってきます。
緑の小人は、割ったクルミを持ってきます。
四人が入ると、やっぱり船室はギュウギュウです。
でも狭さなんて全然気になりません。
皆で楽しく完成を喜び合いました。
「楽しかった。誘ってくれてありがとう」
「雪も良いものだ。また舟に集まろう」
「春になったら、本物の舟にも乗ってみたい」
口々にお礼を言う三人に、黄色い小人は答えます。
「じゃあ本物の舟が出来るまでは、この雪の舟で冒険の練習をしよう」
春になって雪の舟が溶けてしまうまでの間、四人の小人たちは何度も船旅ごっこを楽しんだそうですよ。