最初に出会う人類が盗賊なのは基本だよね!
お待たせしました!この分だとタイトル回収までにどれだけかかるか…。
よろしくお願いします!
一通りの喜びを飛び回ることで表現し終えた俺は、まず今の自分の状態を確認することにした。
名前
種族 人魂
Lv,4
〈状態異常〉
遺恨
HP 26
MP 52
SP 105
物理攻撃 0
物理防御 0
魔法攻撃 36
魔法防御 36
最高速度 18
〈固有スキル〉
物質憑依 浮遊 物理無効
〈スキル〉
鑑定 SP吸収強化(中)
〈称号〉
【忘れ去られたモノの加護】 【同族殺し】
OK、OK。
まずは…SPめっちゃ減ってる!?こんなに吸われた!?
ヤバくね?あれ?俺ってばまだ窮地?
落ち着け!落ち着いて確認するんだ!多分、俺がこの世界に来てから丁度1日経ったぐらいだと思う。
昨日SPが自然に減ったのは何回だ?…覚えてねぇ!
多分4回は無かったと思うが、常に確認しているわけじゃないから、気づいていないのも含めて4回だとしておこう。となると、今の俺のSPは1回で3減る訳だから1日で12減る。
今のままなら消滅まで8日の猶予がある。うん、今すぐ消え去るわけじゃなさそうだ。またお仲間を見つけて吸収出来れば問題は無い。
…異世界来てから共食いしかしてねぇなぁ。
だが、もしも再び大戦鬼とか鬼火とかに遭遇すれば今度こそ終わる。
調子に乗るなよ、俺!?慎重に行けよ、俺!?
とりあえずSPに関しては置いておこう。【物質憑依】の検証とかやりたかったがまずはSPを増やさなければ。……何か昨日も同じ様な事を考えてた気がするけどな!
残るツッコミ所は2つ!
状態異常っ!?なんで!?いつの間に!?っていうか【遺恨】って何!?これも状態異常なの!?
…ふう。落ち着け。相変わらずの情緒不安定っぷりだがまずは落ち着け。
麻痺とか毒とかならどんなもんか想像つくけど遺恨は判らんなぁ。
そんな時は鑑定ですよ、奥さん!そして実は、すでに鑑定した結果をご用意いております!それがこちら!
《遺恨》
【怨念】スキルによって付与される状態異常。これを付与した者は、付与された者の位置を大まかに掴むことが出来る。【怨念】スキル所持者との戦闘時、受けるダメージ増加(中)
こいつか!?こいつのせいか!?俺が石ころになってた時にバレたのは!
くそっ!これってマーキングじゃねぇか!冗談じゃねえ!またあいつが来るってのか!?ふざけんな!
とにかくここを離れないと!日が沈んだら戻ってくんだろ!?…けど逃げられるか?これから先、夜になるたびあいつに怯えなきゃいけないのか?
…ふざけんなよ!ふざけんな!なんでこんな…!!
俺はっ…!!絶対に消えないっ!!お前らなんかに負けるかっ!こんな世界に!お前なんかに!ぶっ殺してやるっ!絶対にっ…!!
《熟練度が一定に達しました。【怒】スキルを獲得しました》
あ…?【怒】……?
……ふっ。…ふふっ。…ふはははははっ!!
来ただろこれは!このタイミングで手に入れたスキル!これぞご都合主義!絶対にこの状況を打破するためのスキルに違いない!
はっはっはっ!笑いが止まらんとはこの事よ!!
いざ行かんっ!鑑っ!定っ!!
《怒》
MPを消費することで一定時間発動する。効果中、攻撃を受ける毎に物理攻撃が上昇する。
ほうほう。物理攻撃がね。…うん?あれ?死にスキル…?
…う、狼狽えるな!出来る男は狼狽えない!
まだ結論を出すのは早い!ラノベの主人公達を思い出せ!彼彼女らはよく判らんスキルを上手く使って、成り上がっていったじゃないか!考えるんだ!
攻撃をってことはダメージではないのか…?なら【物理無効】がある俺なら幾らでも上昇させられる?
そもそも物理攻撃が上がったところで攻撃手段がないんだけどね!
待てよ…?体当たりならいけるか…?いや、反動で俺が先に死ぬな。俺のステータスは雑魚だからな。
思い出したが、熊の時は体当たりしようとしてそのまますり抜けたんだよな。物理攻撃が0だったからかもしれんが、多分【物理無効】が仕事したんだろう。
そうなると魔力を持たない相手には無意味か。魔力を持った相手ならすり抜けられないから体当たりが効く可能性がある。
が、向こうの攻撃も俺に効く。
判決!有罪!死にスキルです!少なくとも今の俺には使いこなせません!
くそっ!期待させやがって!高笑いまでしちゃったじゃないか!声は出てないけどね!
そうとわかれば何時迄もこんな所に留まってる訳にはいかん!あの鬼火の縄張りから出なくては!流石に縄張りの外まで追っては来ないだろう!縄張りなんてものがあるならな!
とにかく距離をとりながら人魂を探す。レベルアップを重ねて、ヤツを上回った時に再びここに来る!その時までは逃げ回る!慎重にな!
あれから3日ほど経った。今は夜。相変わらずの森の中。人の気配は無し。ヤバそうな気配も無しだ。
俺は鬼火から逃げるように森の中を進んでいき、お仲間を探していた。けど全然見つからなかったんだよな。結局見つかったのは日が沈んでからだった。
どうも鬼火だけじゃなくて人魂達も陽の光がダメみたいだ。日中はまず見かけない。
陽の差し込まない暗い場所なら日中でも見つかるかもしれないが、俺が鬼火を撃退できる唯一の手段が日光なので、自らそんな場所には近づかなかった。
ここまで来るのは大変だった。草木や枝葉を利用して隠れながら進んできた。お仲間を見つけたら隠れながらゆっくりと近づき、一気にSPを吸収していった。もちろんその間も周囲の警戒は怠らない。吸収途中でも遠目に何かを見たらすぐにその場を離脱した。
なので、この森の中には俺の食べ残しの人魂がそこそこ漂っているわけだ。まぁ、とっくに他の奴に吸収されてるか自然消滅してると思うが。
まぁ、そんな感じで慎重に慎重を重ね、ビクビクキョロキョロしながら進んで来たために酷く疲れた。
レベルも上がり、SPも増え、新しいスキルも手に入れた。これが今の俺のステータスだ。
名前
種族 人魂
Lv,9
〈状態異常〉
遺恨
HP 36
MP 72
SP 917
物理攻撃 0
物理防御 0
魔法攻撃 46
魔法防御 46
最高速度 23
〈固有スキル〉
物質憑依 浮遊 物理無効
〈スキル〉
鑑定 SP吸収強化(中) 怒 逃げ足
〈称号〉
【忘れ去られたモノの加護】 【同族殺し】
《逃げ足》
何かから逃げる意思を持って行動した際に、最高速度にプラス補正がかかる。逃走効率がアップする。
うん、相変わらず攻撃手段がないでござる。逃げるのは上手くなったけどね!仕方ないよね!この3日間ほとんど逃げ回ってただけだからね!
だってしょうがないじゃないか!あのボス鬼ほどとは言わないけど、あの熊ぐらいなら餌にしかならないようなのがちょこちょこ居たんだから!
どうやってやり過ごしたかって?
岩の中に潜んだり、石ころに憑依したりしてたのさ!【物理無効】や【物質憑依】を逃げ隠れするために使ってるのは俺だけかもなぁ。
でもおかげである程度【物質憑依】の事が解った。拳程度の大きさなら消費SPは5だけだった。それより大きい人の頭ぐらいはありそうな石でも消費は5だった。
1回、拳より小さい石に試した時に50も消費したことがあった。まさかと思って近づいたらすり抜けられなかったので、あの石は魔力を持ってたんだと思う。
多分、大きさよりも内包魔力の有無の方が消費SPへの影響が大きいんだと思う。まあ、すげぇ巨大なものは怖くて試せてないけどさ。
あと、石に憑依中、ほんの少しだけ動くことが出来た。寝返りみたいな感じでゴロンと。まぁ、石が寝返りをうったところで何の影響もないんだが…。
けど憑依中の感覚は憑依したものと同化する様な感じっぽいから、手足のある物に憑依出来ればかなり自由に動かせるかもしれない。人形とかに憑依出来れば、殴ったり蹴ったり物理的な攻撃ができる気がする!
多分、人形が先に壊れるけどね!
さて、とりあえずこの3日間の事はこの辺でいいだろう。それよりも大事なことがある。
今の俺のレベルは9。節目のレベル10まであと1レベルだ。あの鬼火がレベル10だったからな。もしかしたら進化が出来るのではないかと考えている訳だ。
おーい、人魂よーい。俺の糧になってくれる人魂よーい。
周囲を警戒しながら人魂を探す俺は誰かの話し声と地面を歩く音を捉えた。耳はないけどね!
…え!?話し声!?
すぐさまその場を離脱しようとしたが、聞こえたのが誰かと誰かの会話であることに気がつき留まる。
どうする…?危険だ…!でも…。ちょっとだけ…。
ふよふよと誘われるように声が聞こえた方へ漂って行く。近くの木の枝葉に隠れるようにしながら視線を向けると、ちょうど茂みをかき分けて3人の人間が姿を現した。
「親分!あいつらは追ってこないみたいですよ!」
「へっ!ここまで来れば当然よ!こんな危険な場所まで、あいつらみたいな良い子ちゃんが来れるわけがねぇ!」
「でも、親分…。俺たちも危ないんじゃ…。」
おお!人間だ!しかも見るからに盗賊っぽい!
テンプレか!?テンプレなのか!?ここから俺の伝説が始まるのか!?
お姫様は!?ご令嬢は!?
……落ち着け。せっかく会えた人間なんだ。まずは会話を聞くことが大切だ。Coolにだぜ相棒!お姫様とウッハウハはその後でも大丈夫だ!
「安心しな、サム!俺たちにはコレがある。」
そう言って親分と呼ばれた男が懐から何かを取り出す。
何だアレ…?
「おお!魔物避けの香!流石は親分ですね!備えあれば嬉しいなってやつですね!」
「おいおい、あんまりおだてんなよ、ヤス。このぐらい当然よ!」
「親分流石っす!マジ尊敬っす!」
魔物避けの香…?確かに何となく嫌な香りがするがそれほど強力なようには思えないが…?
っていうかそれよりも…備えあれば嬉しいなって何だよ!憂いなしだろ!デ○デ大王か!っていうかこの世界にも諺あんのかよ!間違ってるけど!
「でも親分、これからどうしますか?仲間はみんなやられちゃいましたし…。」
「安心しな、ヤス!俺には考えがある。まず今日のところは夜明けまでここで休む。」
「でも親分、香があるとはいっても、ここで休むのは危なくないっすか?この森にはネームドモンスターもいるって話っすよ…?」
おお!ヤスは警戒心が強いな!…あれ?あっちはサムか?くそっ、あの2人似過ぎなんだよ!双子か!装備も一緒っぽいし!別けろよ!見分けつかんだろ!
「なんだと?ヤス、俺の言うことが「あ、俺サムっす。」……サム、俺の言うことが信用出来ないのか?」
親分も間違えてんじゃん!そんで何事も無かったかのように流してんじゃん!なに?今まで一緒だったんじゃないの?未だに判別つかないの?じゃあ、もうちょっと装備に工夫してやれよ!盗賊A、Bじゃん!遭遇してもA、Bで表記されるような見た目じゃん!
そして、サム!『あ、俺サムっす。』じゃねぇよ!もっと抗議しろよ!お前はそれでいいのかよ!慣れてんの?間違えられ慣れしてんの?なんで俺がこんなにつっこまなきゃいけないんだよ!
「親分!落ち着いてください!サムも親分を信用してないわけじゃ…!」
「わかってるさ。こいつが不安に思うのも確かだ。俺だってこの森は怖い。だからな…ほら、しっかり準備はしてあるんだよ。」
「おお!魔物避けの香がもう1つ!親分流石っす!」
流石っす!…じゃねぇよ!2つあるから何だってんだよ!2つ合わせて効果が倍か?んなわけあるか!せいぜい煙が濃くなるぐらいだろ!俺だって平気なもんがあの化け物みたいなボス鬼とかに効くわけないだろ!
「それで、親分。考えとはなんですか?」
「おう!お前達も聞いたことがあるんじゃないか?この森の何処かにある古い館のことを。」
「古い館?あのかなりのお宝があるって言う噂のっすか?」
古い館…?この森の中にそんなのがあるのか?こんな危険な森の中に…?
「じゃあ、親分はその館のお宝を…?」
「おうとも!しかも俺は独自の情報網でそのお宝も何か知っているのさ!……ズバリ!鎧だ!」
「おお!…鎧っすか…?」
鎧ねぇ…?独自の情報網ってところで大分怪しい気がするが。
「鎧がお宝なんですか?」
「なんでも昔その館に住んでた騎士の装備品だったらしいんだがよ、それが今でも残されてるって話だ。しかもだ!その鎧は…失伝級かもしれないって話だ!」
「まじっすか!?超お宝じゃないっすか!流石っす親分!」
失伝級…?既に失われたモノってことか?あいつらの反応からするとかなりのレア度ってことなんだろうな。けどそこまで解ってるならもう誰かが持って帰ってんじゃね?
そして、サム。親分は話を聞いてきただけで親分自体は何もしてないぞ?
「けど、そんなレアな鎧ならもう誰かに奪われてるんじゃないですか?」
「それがな、まだ誰も持ち帰れていないみたいだぜ。それどころかその館を目指した連中は1人を除いて誰も還って来てないらしい。チャンスだぜ!」
「まじっすか…。それってその館にかなりヤバイのが居るんじゃ…?」
超ヤバイじゃん!危険じゃん!絶対何か居るじゃん!お前らじゃ死にに行くようなもんだよ!やめとけって!なんで親分はそんなに自信満々なんだよ!チャンスじゃないよ!ピンチだよ!
「親分、サムが言ってるようにヤバイ奴がいる可能性が高いですよ?」
「はっはっ!お前達は心配性だな!安心しろ!俺の準備の良さは知ってんだろ?ほら……3つ目の魔物避けだ。」
「「おお!親分!流石です!」っす!」
何でだよ!?どんだけ魔物避けの香に期待を寄せてんだよ!過剰だよ!重量過多だよ!お前らの希望は魔物避けには重過ぎんだよ!
館を目指した連中が全員魔物避けを持ってないとかありえないだろ!
サム!お前危機感強そうなのに簡単に丸め込まれるな!
ヤス!お前ももうちょっと考えろ!
そんで親分!お前はまず2人の見分けをつけやがれ!名前を間違えてから2人を名前で呼んでない事に俺は気づいているからな!
はぁ、はぁ、はぁ。疲れた。俺の胸中がこんなに荒れ狂ったのは初めてかもしれん。鬼火の時だってここまで荒れてなかった気がするのに…。とんでもない3人組だ。
さて、どうするか?奴らはここで野営をして日が昇ったら館を目指して動くみたいだな。館の場所は知ってるのか…?絶対知らなそうだな、うん。
このまま放置すれば明日には死体になってそうだ。せっかく出会えた人間だしなぁ。ちょっと挨拶してみるか?っとその前に鑑定しておこう。魔力系の攻撃手段を持ってたら危険だからな。
名前 フェルディナンド
種族 人間
Lv,18
HP 205
MP 40
物理攻撃 102
物理防御 70
魔法攻撃 23
魔法防御 20
最高速度 43
〈スキル〉
HP上昇(中) 聞き耳 逃げ足 根性 鈍感
統率
〈称号〉
名前 ヤスダ
種族 人間
Lv, 15
HP 154
MP 0
物理攻撃 99
物理防御 68
魔法攻撃 12
魔法防御 18
最高速度 39
〈スキル〉
筋力強化(小) 物理強化(小) MP変換(HP)
逃げ足 鈍感
〈称号〉
名前 サム
種族 人間
Lv, 14
HP 95
MP 70
物理攻撃 58
物理防御 58
魔法攻撃 50
魔法防御 60
最高速度 78
〈スキル〉
脚力強化(小) 逃げ足 忍び足 聞き耳 鷹の目
暗視 危機感知 気配察知 鈍感
〈称号〉
上から親分、ヤス、サムだ。
なるほど、ステータスを見て思ったが、人間には固有スキルの欄がない。人間という種族が共通して持つスキルはないってことか。
さて、もうつっこむのも疲れたんだが、むずむずするのでつっこもうと思う。
親分!名前カッコいいな!?フェルディナンドって!厳つい悪人顔のくせに!
そしてヤス!お前本名ヤスダなの!?ヤスダって苗字じゃん!日本の匂いがぷんぷんするんだけど!しかもですます口調で1番丁寧なくせに脳筋かよ!
最後にサム!お前はバランスがいいな!スキルも1番多いし!特に気配察知と危機感知は俺も欲しいぞ!
ふぅ。次はスキルだな。だいたい想像出来るんだが、3人共通で持ってる奴は凄く気になる。
《鈍感》
痛みに強くなる。危機感が薄くなり、感知系、察知系スキルの効果が低下する。
…おい!?お前らが能天気なのはこのスキルが原因か!?それとも能天気だったからこのスキルを得たのか!?後者だったら俺も得そうで不安なんだけど!?
そしてサムゥッ!お前、せっかくのスキルが泣いてるぞ!俺にくれ!勿体無い!
「流石は親分!いい飲みっぷりです!」
「がははは!そう褒めるな、サム!「ヤスです。」…まぁ、ヤス!お前も飲め!」
「流石っす、親分!水をそんなに美味そうに飲めるのは親分ぐらいっすよ!」
水かよ!?酒だと思ったわ!そんでまた間違えたな!フェルディナンドォ!いい加減にしろ!
そしてヤス!お前それはちょっと馬鹿にしてないか?
ダメだ…!なんかイライラして来た…!俺が必死にツッコミを頑張ってるのに…!!
ちょっと文句を言ってやる!喋れないけどね!!
「っ!親分!」
「あん?どうした?」
「大変っす!モンスターっすよ!」
姿を見せた俺に気付いたヤスとサムが、親分に声をかける。
「モンスターだと!?魔物避けはどうしたぁ!?」
「使ってます!ですが…!」
「ひっ!こっちに来るっすよ!?」
いや、姿を見せただけで騒ぎすぎじゃないか?
「やばいです!人魂です!悪霊ですよ!?」
「くっくそ!悪霊だと…!?俺は幽霊がダメなんだ…!!」
「目が付いてるっす!睨まれてるっすよ!?」
いや、睨んでねぇよ!そんで親分が1番ビビってるな。幽霊ダメな人か。この反応は予想外だなぁ。
人魂って無害認定されてるんじゃなかったっけ?
あ、目が付いてるから鬼火と勘違いされてんのか?
「目…!?まずいです!親分!あれは鬼火かもしれません!」
「ウィル…?なんでもいい!結局幽霊なんだろ!?」
「ヤバイっす!俺の危機感知がビンビンっす!あいつ俺たちを殺すつもりっすよ!?」
いや、鬼火だとも思ってなかったのかよ!そんで、サム!お前の危機感知はポンコツだということが分かったよ!
ん…?なんか感じたな?…まさか。
SP 947
増えてるよ!?しかも30も!
え!?こいつらそんなにビビってるの!?熊の時は1だったよ!?どんだけだよ!
「くそっ!これでもくらえ!!」
親分が懐から出した魔物避けの香に火をつけ俺の近くに投げつける。
お前、それ一応虎の子だったんじゃねぇの!?こんなとこで使っちゃっていいの!?つーか、この場所で3つの香が焚かれてるせいで煙いんだけど!?
…っ!!?あいつらの後ろの木々が揺れてる!?ヤバイ、何か来る!
俺は煙に紛れ一目散に逃げ出した。
「親分!どうやらあの悪霊は逃げたみたいです!」
「はっはっ!どうだ!見たか!これが俺の力だ!」
「親分、流石っす!…あれ?俺の危機感知にまだ反応が…?」
その後、彼らの背後から何かの影が飛び出してきた。
あー、あいつらどうなったかな…?悲鳴みたいのが聞こえたから多分ダメだろうけど…。
少しの時間を置き、慎重に隠れながら俺は先ほどの場所まで戻ってきた。
野営の場所は酷い有り様だった。焚き火の火は消えている為火事の心配はなさそうだ。3つの香は踏み潰されたのか全て壊されている。
そして転がる3つの人間だったモノ。
あー、これじゃあ、どれが誰かわからないな。
喰われたのか潰されたのか。頭は残っておらず、腕や脚は引き千切られており、胴は腹の部分が食い破られていて、何かの歯型が残っていた。
人の死体は初めて見たがあまり衝撃はないもんだな…。ちょっとグロいなぁと思うぐらいだ。
これは俺が既に死んでいるせいなのか、それとも魂が壊れた影響なのか。元々こういう人間だったとは思いたくないけどなぁ。
こいつらを襲ったのが何なのかは知らないが、戻って来るかもしれんしさっさと離れるか。
ん…?
この場を離れようとした俺は、3つの死体のそれぞれ近くに浮かぶ丸い物体に気がついた。
見ていると、3つの丸い物体はふよふよと空に向かって昇り始める。
俺はその内の1つに近づき、試しにSPを吸収する時のようにイメージを込める。
すると一切の抵抗なく丸い物体は俺の中に吸い込まれていった。
《経験値が一定に達しました。レベルが上がります。》
《未所持スキルを持つ魂を吸収しました。ランダムに1つ獲得します。……【危機感知】スキルを獲得しました。》
Lv,9→10
HP 36→38
MP 72→76
魔法攻撃 46→48
魔法防御 46→48
最高速度 23→24
!!!?
なん…だと…!?ちょっと待て!?レベルアップはまぁいい!それよりスキル獲得だと…!?
スキルを持つ魂を吸収って…。今手に入れたのは【危機感知】…。
つまり今吸収した丸い物体はサムの魂…?
ふ、ふ、ふふふ…!ふはっ!ふははははっ!
魂を吸収、つまり喰らうってことだ。もしかすると単純に人を殺すよりも非道な行いだろう。
だが俺に不快感などはない…!それよりもこれでようやく強くなる道が見えてきた喜びが大きい!
非道?悪逆?関係ない!俺は人魂だ!俺は消えたくない!その為ならば魂だって喰らってやる!
俺が強くなる為の決意を固めているうちに他2つの魂は天へと昇っていった。
まぁ、ちょっと勿体無いとも思うがいいだろう。親分が持っていた【統率】や【根性】辺りは気になっていたがランダムだからな。2つも喰らえば【鈍感】を得てしまうかもしれない。今はこれでいい。
それよりも、さっきから目の前でウィンドウに表示されっぱなしなんだ。
《SPが一定に達しました。進化が可能です。
進化を行いますか? YES/NO》
来たぜ!お待ちかねの進化フェイズ…!!
お読みいただきありがとうございました!