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死闘!ウィルオウィスプの恐怖!

今回もよろしくお願いいたします。

 



 名前


 種族 鬼火ウィルオウィスプ

 Lv,10


 HP 70

 MP 120

 SP 680


 物理攻撃 10

 物理防御 10

 魔法攻撃 100

 魔法防御 100

 最高速度 50


 〈固有スキル〉

 浮遊 物理無効 念動力


 〈スキル〉

 消費SP軽減(中) SP減少抑制(小)

 SP吸収強化(小) 精神攻撃耐性(小)

 氷魔法Lv,2 怨念


 〈称号〉

【同族殺し】




 さて、目の前には俺の上位存在っぽい人魂型モンスター。揺らめきは激しく、青白く発光している。大きさも俺より一回りデカイ。何より最大の特徴は…目!瞳の部分はないっぽいけどつり上がってて大きな目が付いてますよ!俺とは違うね!俺も目つきは悪いけど瞳っぽいのはあるしね!


 めっちゃこっちを睨んでる。何か凄く怨みの念を感じるよ!

 良い怨みっぷりだね!俺みたいなお気楽人魂とはモノが違うよね!よっ!大将!日本一!

 あ、ここ日本じゃなかったわ。


 ぬわ!?いきなり突っ込んできやがった!?

 くそっ!ほめ殺し作戦は失敗か!?そもそも意思の疎通ができんのかも解らないけどさ!


 いや、諦めるな!俺のコミュニケーション能力を舐めるなよ!俺はお前と友達になりたいんだ!このまま戦っても勝てる気がしないからね!


 念を送るんだ。人魂同士争うなんておかしいって。

 俺たちきっと良い友達になれるはずさって。

 届け!俺の想い!



『………ォォォオオオオ…』


 喋った!?いや唸った?それどうやんの?頑張れば俺にも出来る?

 いや、先ずは反応があったことを喜ぼう。友好的な雰囲気ではないがこのままコミュニケーションを取り続けるんだ!

 ハロー!俺、人魂。名前はまだ無いんだ!君も名前が無いんだね!偶然だね!これはもう運命じゃないかな?君もそう思わない?



『……ォォォオオオオッ!』

 ーー氷魔法 氷弾ーー



 うわっ!?危なっ!?よっ!?

 びっくりした…!!鬼火(ウィルオウィスプ)の周りに短い氷柱みたいのが3つできたと思ったら勢いよく飛んできた。スピードは今の俺がギリギリ避けられるぐらいだ。あれが氷魔法か…。


 氷魔法のスキルには他のスキルと違いレベルが表示されている。氷の属性だけレベルがあるってことはないだろうから他の属性の魔法にもレベルがあるんだろう。

 レベル毎の違いは何なんだろうか?レベルが上がると魔法の種類が増えるのか?それとも威力や速度なんかが上昇するのか?威力なんかはステータスの魔法攻撃が影響してると思うんだけどな。


 まぁ、魔法に関する考察は俺自身が覚えるか、誰かから聞くまでお預けだな。今の俺でもギリギリとはいえ避けられるスピードしかないんじゃ、レベルやステータスが低い内は使い勝手は悪そうだが。

 それでも俺は魔法が使いたい!


 っ!?また鬼火(ウィルオウィスプ)が魔法を放って来た!このっ!俺にっ!当たるかよっ!…っ!?


 気がつけば触れ合う程の距離にヤツがいた。どうやら俺が回避に気を取られている間に一気に距離を詰めてきたようだ。

 このやろう!魔法を囮に使うとか、随分と知恵が回ることですね!

 くそっ!この程度の魔法、脅威にならんわ、とか余裕かましてる場合じゃなかった!この距離はマズイ!


 焦る俺を尻目にヤツの揺らめきがさらに大きく激しくなる。案の定、俺の中からヤツへとSPが流れ始めた。

 ただ俺の予想と違い、吸収されていくSPの量とスピードが、今までの人魂(スピリット)達の比ではなかった。


 やべぇ!?この吸われ方はやばいって!ごっそり減ってる!このやろう!少しは遠慮しやがれ!

 悪態をつくことで心を少し落ち着かせる。


 …今の状況はむしろ望む所だ。攻撃手段のない俺が唯一ヤツを倒せる方法が、SPを吸い尽くすことだ。

 俺を舐めるなよ!俺のSP吸収強化はお前より効果が高いんだ!俺が逆に吸い尽くしてやる!


 俺もまたSPの吸収を始める。俺から出ていくSPの流れが緩やかになり始める。だがーー。



 止まらない!?何でだ!?


 吸収されるSPの量は減った。だがそれだけだった。逆に吸収することはおろか、拮抗状態にすることさえ出来ない。今も緩やかにだが吸われ続けている。


 どうして!?俺のスキルの方が効果が高いのに!?

 ステータスの差か!?経験の差か!?スキルの効果を入れてさえ埋められない差があるっていうのかよ!?


 SPを吸収する力に何の要素が影響するのかを俺は知らない。だが今の状況を作り出したのは油断と慢心。完全に俺の自業自得だった。


 今、俺の胸中は不安と焦り、そして恐怖が占めていた。

 俺がこの異世界に来てからまだ1日も経っていない。この1日の間に多くのことがあった。


 最初にSPを鑑定した時も、俺は恐怖に支配されそうになったが神様の加護のおかげで落ち着いた。

 その後に遭遇した硬皮熊、大戦鬼(ギガオーガ)も消滅の危機に晒されることなくやり過ごす事が出来た。

 そして他の人魂(スピリット)からSPを手に入れる方法が判明した。


 はっきり言って俺はこの世界を舐めていた。俺にとって死んだ時に受けた苦痛はトラウマだ。だが俺は能天気にもあの恐怖を忘れていた。


 気づいていたはずだ。あの大戦鬼(ギガオーガ)に遭遇した時に。あんなのが徘徊している森では、俺など簡単に消滅する可能性があるということに。

 俺は愚かにも浮かれて、はしゃぐことしかしなかった。この結果は当然だった。


 今の俺にこの状況から逃れる術はない。ヤツの方が速い上に、払いのける手段さえ持っていないのだから。




 嫌だ…。俺はこのまま消えるのか?嫌だ…。またあの苦痛を受けるのか?イヤだ…。魂ごと消えるからあの苦痛は訪れないのか?イヤだ…。たった1日も経っていないのに?イヤだ…イヤだ…イヤだ!イヤだ!イヤだ!イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!!!


 俺は恐怖に突き動かされ必死に抵抗する。また少し吸収される量が減った。だがそれ以上ではない。


 ふざけんなっ!ふざけんなっ!!


 次に湧き上がって来たのは怒りだった。この状況への怒り、目の前の存在への怒り、手も足も出ない俺自身への怒りだった。







 ふと、吸収されていたSPの流れが止まる。


 全てのSPが吸収された訳ではない。俺はまだ存在している。俺の怒気に怯んだ訳でもないだろう。

 何故……?


 呆然とする俺からヤツは離れて行く。その向かう先に目を向けると一体の人魂(スピリット)が居た。

 どうやら先にあの人魂(スピリット)から吸収することにしたらしい。


 あの人魂(スピリット)がどのくらいのレベルなのかは判らないが、鬼火(ウィルオウィスプ)に勝てるような存在ではないだろう。おそらく自我が薄いせいで鬼火(ウィルオウィスプ)がいるにも関わらず、ここまで漂って来てしまったものと思われた。


 何故あの鬼火(ウィルオウィスプ)が俺を吸収することを止め、あちらに向かったのかは判らない。抵抗を続ける俺よりも、楽に吸収出来そうなあちらを先に、とでも思ったのかもしれない。



 理由なんかどうでもいい!今を逃せばそれこそ終わっちまう!俺はまだ消えたくない!!


 俺は脱兎の如く逃げ出した。

 あの人魂(スピリット)がどれだけ抵抗出来るかは判らないが、そう時間は稼げないだろう。ヤツは多分追ってくる。俺を見逃す理由はない。スピードはヤツの方が上なのだから、このまま逃げるだけでは追いつかれるかもしれない。


 どうする…!?どうにかしてヤツをやり過ごす方法はないか…!?


 このまま森の中を逃げ回ることも怖い。他の鬼火(ウィルオウィスプ)や、もっとヤバイ化け物に遭遇すれば今度こそ終わる。


 隠れる場所は…!?木の裏?…ダメだ!俺の身体を隠しきれる程の太さがない!岩の陰?…見当たらない!土の中?…それだ!


【物理無効】スキルは物理的なものをすり抜ける効果がある。なら地面だってすり抜けられるはずだ!

 俺は地面に向けて落下するように進んでいくが、生えている草に阻まれ地面に接することができなかった。


 なんでだ!?【物理無効】は生物には効かないのか!?そんなはずは無い!熊の攻撃は確かに無効化していた!何故だ!?


 ……まさか!魔力はすり抜けられない!ここの草は魔力を持っているのか!?くそったれ!他の場所なら!


 少し移動し試してみるが同じように草に阻まれてしまう。なら草が生えてない場所を探せば…!!


『……ォォォォォォ…』


 っ!!!聞こえた!

 あいつかどうかは判らないが近づいてきてやがる!?

 時間がない…!?どうする!?










『オオオオォォォォォォ…』


 今、俺のいる場所の上空を鬼火(ウィルオウィスプ)が漂っている。早くどっか行きやがれ!



 俺が今いる場所は地面の上。もちろんそのままでいる訳じゃない。結局、草の生えていない地面を探す時間は無かった。

 焦りに焦った俺は、一つの賭けに出ることにした。


 それは【物質憑依】スキル。

 今の今まで使ったことの無いスキルだ。ある程度の事は鑑定で知っていた。だが使った事の無いスキルである以上、俺が思ってるような感じになるかは判らなかった。


 今の俺はこのスキルによって、地面にあった拳程の大きさの石に憑依している。


 この石を憑依先に選んだ理由だが、まずパッと目についた物の中で一番小さかった事。探せば他にもあったんだろうが焦っていたし時間が無かった。


 そして、どう見ても魔力が無さそうだったこと。大きさもそうだが内包する魔力の量でも消費SPが変わるみたいだからな。SPを吸われまくった今の俺には消費SPの量は切実な問題だ。まぁ、この辺の草がそうだったみたいに、魔力の有無はパッと見では判らないんだが。


 最後に周りの草に隠れて上からは目に入らないこと。この辺の草は結構背が高い。俺も地面にダイブしたからこそこの石を見つられたんだ。上を漂っているヤツには目に入らんだろう。


 くそっ!あの野郎はまだ上を漂ってやがる。

 今の自分の状態を、特にSPをさっさと確認したいんだが、何がヤツの気を引くか判らない為に出来ていない。


 嫌な予感がする…。ここに来るまでは結構なスピードで飛んで来たくせに、この辺ではゆっくり漂ってやがる。考えてみればヤツにも目が付いてるとはいえ、視覚で周りを見ているとは限らないわけだ。もしも魔力的なもので周囲を知覚しているのならバレるかも…!?


 頼む…!!早くどっかに行ってくれ!

 俺に心臓は無いが、あったならば今頃は動悸が酷いことになっていただろう。流れもしない汗が止まらないような感覚の中、俺は怯え続けていた。



『オオオオォォォォ…!!』


 ヤツが強く声をあげた。すると石となっている俺の身体が宙に浮き始めた。見れば周りの幾つかの石も同じように浮いている。


 なんだ!?あいつの仕業か!?何をしているんだ!?


『オオオオォォォ…!!』


 俺を含めた幾つかの石がヤツの周囲へと浮き上がり、その後勢いよく飛ばされ近くの木にぶつかる。


 くそっ!視界が回る!っていうか俺ってちょくちょく吹き飛ばされ過ぎじゃね?

 どうでもいいことを考えながらも気を失わないように意識を保つ。憑依が解ける条件は知らないが、気絶してしまえば自動で解ける可能性は高いと思った。


 再び浮き上がる俺と周囲の石。

 くそっ!完全にバレてるのか!?俺をあぶり出すつもりか!?


 そしてまた木に向かって飛ばされる。


 ぐぅ!?視界が…!?耐えろっ…!!


 だが耐えてどうすのか。このままならばあと数回も繰り返さない内に俺は目を回すだろう。そうなれば憑依状態が解ける可能性が高い。その後はろくに抵抗も出来ないままに消される未来が待っている。


 どうしようもないのか…?俺は…!!


 恐怖も怒りもある。だがそこに、新たに諦めの感情が顔を覗かせ始めていた。


 ヤツは(らち)があかないとでも思ったのか、攻め手を変えたようだ。ヤツの周囲に氷柱が浮かぶ。


 魔法か…。喰らってはいないから威力は知らないが俺が憑依している石を壊す程度はあるだろう…。




 …消えたくねぇ!消えたくねぇよ!やめてくれ!?



 俺の願いも虚しく魔法は発射される。だが命中精度は高くないのか、氷柱は3本共俺の周囲に突き刺さった。そのうちの1本が近くの石を砕いたのが見えた。


 安堵の感情が広がる。だが依然として絶体絶命の窮地にあることは変わらない。もはや俺に出来ることは神に祈ることだけだった。


 再び魔法を放とうと、周囲に氷柱を浮かび上がらせていた鬼火(ウィルオウィスプ)の場所に朝日が差し込む。


 どうやらいつの間にか夜が明けていたようだ。

 この辺りの草の背が高いのは陽の光がよく当たるからなのかなぁ。そろそろ俺がこの世界に来てから1日が経つ訳か。

 ふっ、まさか異世界に来てまで現実逃避をすることになるとはな…。




 だがその現実において、状況に変化が現れる。


『……オオオオォォォォォォ…………』


 魔法を放とうとしていた鬼火(ウィルオウィスプ)だが、陽の光を浴びた瞬間、浮かんでいた氷柱を消し去ると、森の奥に消えて行ったのだ。まるで光を避けるかのように。


 俺はその姿を呆然と見送った。

 陽の光が差し込む空間は静けさに包まれており、心なしか周囲の草花が輝いて見える。

 どこからか鳥の囀りが聞こえてきた。


 俺は思わず憑依を解き浮かび上る。ヤツが消えて行った方を凝視し、ヤツが戻ってくる気配がないことを悟った。


 生き残った…?俺は生きてる…?…生きてるっ!!俺は…!生き残ったっっ!!!


 涙は流れない。どうやらそういう機能はないらしい。歓声もあげない。俺はまだ声を出すことが出来ない。



 だが、そんなことはどうでもいい。俺は確かに涙を流し、歓喜の声をあげているのだから。



 俺は生き残ったんだっ…!!!





 ……もう死んでるけどねっ!


 俺は少し調子を取り戻した。







脅威が去った途端に調子に乗り始める主人公…。


お読みいただきありがとうございました!

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