プロローグ
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あれ…?ここはどこだ…?俺は何をしてたんだっけ?
…あぁ、思い出した。車にはねられたんだった。痛てぇなぁ…。うわ、めっちゃ血が出てる。
「先輩っ!先輩っ!しっかりしてくださいっ!俺…」
お、謙也が泣いてる。入社してきた当初は遅刻はするは敬語はおかしいはでコイツ大丈夫か?、とも思ったけどなんとかやってこれたなぁ。
お前が無事でよかったよ。頑張れよ。俺はもう庇ってやれないからな。
「先輩っ!目ぇ開けてくだざいっ!まだ俺のごど叱っで……」
あぁ…。もう謙也の声も…聞こえなくなってきたなぁ。俺の為に泣いてくれるかわいい後輩を…守って死ねるなら…俺の人生…中々のものだったよ…。
暗いなぁ。もう何も見えない。でもまだ痛みはあるんだなぁ。それに寒い。…なんだコレ?
……痛い。痛い、痛い、暗い、寒い、寒い、暗い、痛い、イタイ、サムイ、イタイ、イタイ、クライ、クライ、サムイ、サムイ、サムイ、サムイ、サムイサムイサムイサムイサムイサムイサムイサムイサムイサムイサムイサムイサムイサムイサムイサムイサムイイタイクライサムイサムイサムイサムイサムイサム………
『ふむ?弾かれてきたのか?』
気がつくと俺は薄暗い空間に居た。あれだけあった寒さや痛みは消えている。俺はどうなった?死んだんだよな?ここはどこだ?これから閻魔大王にでも会うのか?
『ふむ、やはり自我があるようだ。』
目の前にナニカが居た。白い靄の中に人型っぽい影が見える。人型っぽい、っていうのは影は輪郭がはっきりとせず、体の部位が増えたり減ったりを繰り返しているからだ。大きさも腰の辺りが異様に伸びたり、かと思えば足が消えたかのように縮んだりと、見ていて非常に不安を掻き立てられる。
…えぇぇ。何かすげえ化け物臭がする存在が目の前にいるんだけど。何これ?悪魔?邪神?それともこれが閻魔大王?
『神でも王でもない。なに、ただの化け物とでも思っていればよい。』
うわぉ。もしかして考えていることが読める系ですか?そして声渋いっすね。
『ふむ。まぁ、似たようなものだ。そもそも今のお前には己の意思を外に出す手立てがないからな。』
意思を外に出す手立てがないって…?あれ?そういえば俺って今どういう状態?体は?手とか足とか無いんですけど?見えてるってことは目はあるんだよな?その割には体の感覚が一切ないんですけど!?
『落ち着け。まずは今のお前の状態だが、今のお前はいわゆる魂だけの存在だ。人間に限らず、全ての意思あるものは死と同時に肉体から魂が離れる。肉体から魂が離れた時、自我は消失する。本来はな。』
ふむふむ。あれ?じゃあ俺は?
『まぁ、待て。時々、肉体を離れても自我を保つ事が出来る魂が存在する。強い意思の持ち主や強い未練を持った者等だな。しかし、魂とは脆く弱いものなのだ。肉体とは魂を保護するための器だ。故に自我を保ったままの魂でも、肉体から離れ輪廻の輪に戻るまでの間に受ける苦痛によって、自我が崩壊する。既視感などと呼ばれるものは崩壊した自我の残滓だな。』
苦痛…。あぁ、あの痛かったり寒かったりしたやつか。確かにあれはキツかった。二度と感じたくないね。トラウマものっすよ。
……え!?自我の崩壊!?
これから俺崩壊するの?崩れちゃうの?死ぬの?あ、俺もう死んでるんだった。
『落ち着け。今のお前は私が保護している故自我が崩壊することはない。お前は何故か耐えられる筈のない苦痛に耐え自我を保ったまま輪廻の輪へと辿り着いたのだ。』
え?マジっすか?俺って実は凄い意思の持ち主?いやー、なんか照れるなー。ってことは此処はその輪廻の輪ってとこ?全然輪っぽくないけど。むしろ鎖されてる感じ?
『此処は輪廻の輪ではない。そもそも輪廻の輪には自我を持つ魂は入れない。お前は輪廻の輪に弾かれ、その勢いで此処に飛ばされてきたのだ。』
え?そんな物理的な感じで弾き飛ばされてきたの?俺の魂大丈夫?
『さてな。本来ならば崩壊しているところ、そこまで自我を保っているのだ。多少壊れていたとしても問題はあるまい。』
いや、問題ありありですよ!?魂が多少壊れるってなに!?え?俺どっか壊れてんの!?
『さて、これからお前はどうする?』
いや、流さないで!俺って大丈夫なんすか!?大丈夫なんすよね!?信じますよ!?信じちゃいますからね!?壊れてたらクーリングオフ出しますからね!?
『知らぬ。そもそもお前がどのようにしてあの苦痛に耐えたのかも解らぬのだ。見たところ特別意思が強いようにも見えぬ。何か強い未練でもあるのか?』
えぇぇ、知らぬって…。しかも時間差で意思の強さを否定された…。
未練といっても特に思い浮かばないっすね。強いて言えば後輩が心配っすけど…。強い未練って俺どんだけあいつが好きなんだよって感じです。
『ふむ。未練の中には本人が自覚していない類のものもあるからな。或いは壊れた影響で未練を見失ったか。』
やっぱ俺の魂壊れてんの!?って、未練って見失ったりするもんなんすか?
『うむ。強い未練を持つ者でも、あの苦痛の中自我を保ち続けるのは難しい。徐々に崩壊していき、未練があるということだけしか覚えておらず現世を彷徨い続ける者もいる。悪霊などと呼ばれる魂に多いな。』
うわぁ。じゃあ、俺もそのうち何も思い出せなくなるんすかね?
『お前は私が保護している故これ以上崩壊が進むことはない。すでに壊れている部分に関してはどうにもならぬが。』
じゃあ、壊れちゃった部分に強い未練があったのか…。うわぁ、めっちゃ気になる!むしろこれが未練になりそなぐらい気になる!
『私が見たところお前に強い未練があったようにも見受けられぬが。ではもう一度問う。これからお前はどうする?』
どう、とは?
『お前は輪廻の輪に入ることは出来ず、此処から元の現世に戻ることも出来ぬ。お前が望むのならば此処で悠久の時を漂うといい。』
いや、悠久を漂うだけってのはちょっと…。そもそも此処は何処であなた様はどういった存在なんでございましょうか?
『此処は此岸と彼岸の狭間。彼方と此方の狭間。時に見放されし場所。何処にも無い場所。忘れ去られし場所。私もまた忘れ去られし者。好きに呼ぶといい。』
なるほど、謎空間か。うん、わからん。
じゃあ、とりあえず神様って呼びます。見た目邪神っぽいですけど。
それで、この謎空間で漂う以外に選択肢はあるんでしょうか?
『そうだな。お前がいたのとは別の世界に送ることも可能ではある。』
別の世界!?それって異世界ってことっすか!?俺の異世界冒険が始まっちゃう感じですか!?よっしゃぁ!生きてて良かった!あ、もう死んでるんだった。
『騒がしいやつだ。此処も別の世界であろう?』
いや、こんな何も無い謎空間はちょっと…。
……ちなみにその行き先の異世界もこんな感じの謎空間だったりしないっすよね?
『ふむ。此処と似たような場所はあるがそこに送ることは出来ぬ。送れる世界は幾つかあるが希望はあるか?』
希望か…。とりあえずステータスとかスキルとかがある世界がいいですね!あと、人が…あ、人間が沢山いる世界!あとあと、俺に優しい世界がいいです!
『お前に優しき世界となるかは彼方でのお前の行動次第だ。では、送ろう。』
いきなりっすか!?なんかこう、お前に餞別をやろう的なフェイズはないんすか!?何もスキルとかない状態で送られても速攻死ぬ未来しか見えないです!ぶっちゃけチートが欲しいです!
『餞別か。よかろう。何か希望はあるか?』
マジっすか?よしっ!言ってみるもんだな!言葉喋ってないけど!
希望…希望…。ちなみにいくつぐらい貰えます?
『制限はお前の魂の容量までだ。全てをスキルで上書きすると自我の無いただのスキルの塊となる故気を付けるのだな。』
ん…?上書き…?えーと、スキルって俺の魂に上書きする感じです?上書きした場合、そこにあった魂の情報とかは消えちゃう感じです?
『うむ。魂に直接書き込まなければ送る際に消えてしまう。当然上書きされた情報は消失する。案ずるな。彼方でならスキルを覚えても魂に影響は無い。基本的にはな。』
案ずるよ!いや、異世界でならスキルを覚えても問題無いってのは良かったけど!基本的にって部分がめっちゃ怖いけど!
……マジかぁ。どうする?その上書き箇所ってこっちで選べます?
『ふむ。難しいな。やってみなければ解らぬが試してみるか?』
試してみるか?じゃねぇーよ!怖えよ!人格に上書きされちゃったらどうすんの?あんたそれでも人間か?あ、神様でしたね!俺が呼んでるだけだけど!
『ではどうする?もう送るか?』
ま、待って!待ってください!生意気言ってすみません!……1つだけとかなら影響は少ないですかね?
『そのスキルにもよるが。不老不死や蘇生能力、あるいは無敵の肉体や無限の魔力などの膨大な容量を使用するスキルでなければ影響はないだろう。』
マジか…。その辺のザ・チートなスキルをお願いしようかと思ったけど危ないな。ここはやはり鑑定チートか成長チートで行くか…。よし、ここは成長系のスキルをお願いします!
『成長?経験値の増加でよいか?』
めちゃくちゃ増える感じでお願いします!他の人の倍…いや、3倍は欲しいです!
『ふむ。成長を促す系統のスキルを直接魂に書き込むと魂が歪んだ成長をする可能性が高いが、お前が望むのならば…《鑑定スキルを下さい!!!》…よかろう。』
あっぶねえぇ!?何言っちゃってんのこの神様!?魂が歪むって何!?何でそれをそのままスルーして進めようとすんの!?俺のこと嫌いなの?俺が慌てふためいてるのを見て楽しんでるの?思わず言葉を挟んじゃったよ。声出ないけど!
『鑑定スキルを与えた。では送ろう。達者でな。』
え?もう?早くね?特に変わった感じしないけど?
っていうか神様が凄いスピードで遠くに!ちがう!?俺が飛ばされてる!?え!?送るってこんな方法!?また物理的に吹っ飛ばされるの、俺!?ゲート的なもんじゃなくて!?
神様ー!ありがーー!!
『ふむ。行ったか。む?…器を用意するのを忘れていたな。まぁよいか。アレも望まなかったのなら必要ないだろう。』
目が覚めた。目が覚めた?…なんか違和感があるな?
…で、ここは何処だ?俺は確か…謎空間で神様に会って鑑定スキル貰って異世界に…。はっ!異世界!ここは異世界か!おお!ここが異世界か!……木しか見えねぇ。森か。定番っちゃ定番だな。おお!でも木も元の世界では見たことない形してんな!お!下を見れば草が生えてる!石もあるぜ!テンション上がるな!
…………ふぅ。よし、現実を見よう。異世界で現実とはこれいかに。まぁよい。
まず目線。…高えよ!地面が遠いんだけど!?周りの大木の真ん中ぐらいに目線が合うんだけど!?俺これ身長何メートルだよ!?センチじゃねえよ!メートル単位だよ!…あ、リス発見。異世界にもリスっているんだなぁ。かわいいなぁ。
よし、和んだ。落ち着け、まだ慌てる時間じゃない。異世界のものが全体的に小さい可能性もある。見た感じむしろ元の世界よりデカイ気がするが気のせいだ。
それよりも大きな問題は他にある。むしろこれ以外は些事だ。………俺の身体は!?
目線を下げても地面と草と石しか見えないんだけど!?腕は?足は?首から下は!?え?俺って生首?
生首が宙に浮いてる感じ?……モンスターじゃん!妖怪じゃん!こっちに妖怪がいるのか知らんけど!
なんで!?どうしてこうなった!?思い出せ!神様とのやりとりを!何かヒントが………。
ねぇよ!むしろ肉体に関しては何にも喋ってねぇよ!どういうこと!?送るってのは転生じゃなくて転移ってこと?魂だけそのまま転移したってこと?あの時点で肉体は無かったもんね!てことは今の俺は生首じゃなくて人魂状態?妖怪っつうよりゴースト?いや、人魂だから妖怪か?まぁ、どっちも大差ないだろう!HA、HA、HA!!
失礼、取り乱した。今の俺はおそらく人魂状態。まずは生き延びる為にも自分の状態を把握するのは大切だ。すでに死んでるようなもんだけどな!
というわけでステータスオープン!!
名前
種族 人魂
Lv,1
HP 20
MP 40
SP 200
物理攻撃 0
物理防御 0
魔法攻撃 30
魔法防御 30
最高速度 15
〈固有スキル〉
物質憑依 浮遊 物理無効
〈スキル〉
鑑定
〈称号〉
【忘れ去られたモノの加護】
…さてさて、色々ツッコミたいところが満載だぜ!
主人公は自覚がないだけで色々壊れてます。
お読みいただきありがとうございました!