この世界の文化レベルなんてわからん
前話をすこし、修正してます。
ストーリーの大筋には影響ないので大丈夫です。
昼食を食べたあと、フリッツから奪った猫じゃらしで、マーニャと遊んで昨日の一日は終えた。
フリッツが猫じゃらしを持っていた時は、この世界にも猫じゃらしがあんのかよとは思った。
そして今日は街に行く。昨日のうちにソフィーに街までの馬車を手配して貰ったので既に家の前に馬車がいた。
そして、街までは御者兼護衛のレフがついてくる。
ソフィーに街に行くのですから、メーレン家の三男として恥ずかしくないようにと言う事で、見るからに貴族ですといった感じにさせられた。
また、マーニャもどうように俺のお付として恥ずかしくない格好にさせれた。
何故かゴスロリだったが。いや、何でだよ。まあ、マーニャが気に入ってるからいいが。
そんな格好をさせられ、馬車に乗り込んで街へと向かった。
街まではそこまで離れていない。が、馬車で二時間程度の移動時間がかかるので、フリッツが小腹が空いた時のためと言って軽食を用意してくれた。意外と気が利く良い奴なのである。
そんなわけで馬車に揺られてたわけなのだが、流石に暇を持て余し始めた。
「レフ。あとどれくらいで着きそう?」
「あと、もう少しだ」
レフはさっきからそうとしか言わないのだ。しょうがないから、フリッツからせしめてきた猫じゃらしでマーニャと戯れる。
だが、マーニャも猫じゃらしにしあきたようでもう何もすることがない。
景色でもみてぼーっとしながら、街につくのを待つしかないようだ。
「着いたぞ」
ぼーっとし過ぎて眠くなって来たところで街についたようだ。
マーニャは眠ってしまってる。まあ、春だから仕方ない。最近はぽかぽかしてて暖かいし。
街はヴァルデン最大の街だ。ちなみに俺のいる別荘地はお祖父様の個人的な持ち物、つまり私領なので他の人は誰もいないのである。
街に入るには門を通って、身分確認をしなくてはならないのだが、馬車にここの領主であるポルンブルグ家の紋章が刻まれてるので素通りである。
馬車は通りを進んで行き、一軒の威厳のある建物に止まった。ここが目的地である革職人の工房だ。
まだ、合成繊維など存在しないこの世界の靴は皮革を使ったものが一般的である。
確かに靴屋というのも存在自体はしてるが、革職人のところで見繕うのが一番である。それにここの革職人の腕はいいらしいし、折角だからね。
「ほら、着いたぞ。マーニャを起こして行くぞ」
レフがそう声をかけてくる。
「マーニャ着いたぞ。さあ、起きて」
マーニャを揺さぶりながら声をかけて起こす。
起きたマーニャはまだ眠そうである。
そんなマーニャの手を引き、馬車を降りてドアを開けて工房に入る。
「すみませーん。誰かいませんか?」
「なんぞ?俺の店に何か用か」
店に入り、誰かいるかたずねると、奥から髭を生やしたずんぐりとした男が出てくる。
これははじめてみるが、ドワーフというやつだろう。なるほど、彼がここの主なら腕がいいのも納得である。
「なんだ、ポルンブルグのところの坊主か。お前はドワーフをみるのは初めてか?そりゃそうだ。俺のような奴は普通この辺には居やしねえからな」
そのとおりである。彼らドワーフは地球でいうところのスカンジナビアに生息してるはずである。
ここら変に出てくるドワーフはよっぽどの変わり者か訳ありかのどっちかだ。
そして、どうやら俺が誰か知ってるようだ。
いや、正しくは違うな。この格好と着ている服についている紋章がポルンブルグのものだから、それでどこの人間か察してるだけだろう。
「で、今日はどんなようがあってここに来た?」
「マーニャの、えっと隣にいる彼女に靴をプレゼントしたくて」
「ほう。そこにいる獣人の嬢ちゃんの靴をプレゼントしたくてね。獣人は俺達みたいに頑丈だから靴なんていらねーのにプレゼントしたいなんて奇特な奴だ。なんだ、彼女はお前のいい人か?」
「い、いや。べつにそういうわけじゃないんだが」
「ふ~ん。そうかい。で、どんな靴がほしいんだ?嬢ちゃんが今履いてるようなのか?」
マーニャは今、ソフィーがお坊ちゃまに恥をかかせないようにと用意した靴を履いてる。
「いや、マーニャが気にいった靴があればそれにしようかと」
「そうだな…ならいっその事、一から採寸して作っちまうか?多少時間はかかっちまうが、最高の品を作ると約束するぜ」
「なら、そうしてもらおっかな。マーニャ採寸してもらうといい」
「じゃあ、ちょっとこっちに来てもらおうか嬢ちゃん」
マーニャが採寸して貰ってる間、あたりを見回す。
流石異世界と言うべきか、魔物の素材で出来たようなものもある。
レフが後ろの方で彫刻品のようになってたのは見なかったことにした。
「ほれ、採寸が終わったから嬢ちゃんを返すぞ。まあ、靴が出来るのは一月後ってところだ」
「なら、前金としてこれを渡しとくよ」
俺はそう言って腰にぶら下げてある袋から金貨を一枚取り出しって差し出した。
前ポルンブルグ伯爵であるお祖父様は、流石貴族と言うべきか金貨でお小遣いを渡してくる。
どうせ使い道などないのだから、こういう場面で使ってもいいじゃないか。
「ポルンブルグの者からはそれは頂けねえな。お代は靴が出来て俺が届けに行った時に貰おう。それで靴が出来たらどこに届ければいい?」
「なら、この近くにあるポルンブルグの別荘地に届けてくれ。それより本当に前金はいいの?」
「いいって言ってんだろ。ポルンブルグの別荘地に届ければいいんだな?あそこなら何回か訪ねた事があるから大丈夫だ」
「それならいいけど。じゃあ、よろしくね」
「おう!任せとけ」
俺は壁際で寝ているレフを引っ叩いて起こして、マーニャを連れて馬車へと戻る。
あ、そうだ!
「名前、名前なんて言うんだ?」
「あ?俺の名前か?俺はヴォッカだ」
「そうか。ヴォッカって名前か。じゃあ、ヴォッカ靴の件よろしくね!」
そう言って今度こそ工房をあとにする。
さて、では少し街を観光して帰るか。ヴァルデンはポルンブルグの別荘地があるくらいで、観光地として成り立っているのだ。
レフにあたりを走ってもらう。
そう言えば、お腹が空いてきたな。マーニャからもお腹がなる可愛らしい音が聞こえるし。
「レフ、ここらへんで食事の出来るところに連れてってくれ」
「わかった」
そうレフは言うと、馬車を方向転換させた。
何分かすると、とあるレストランについた。
「ここだ」
「それじゃ昼食としようか。レフも一緒に食べよ」
「そうだな」
ドアを開けて中に入ると、チリンチリンと言う音と共に初老の男性が出迎える。
「これはこれは、どうぞおいでなさいました。こちらのお席にどうぞ」
初老の男性にそう言われて席へと案内される。身のこなしが優雅な人だ。
「メニューをどうぞ」
「レフ、ここは僕が払うから好きなものを食べていいよ」
「わかった」
さて、何を食べようか。
メニューには色々書いてあるが、いまいちどんな料理か想像がつかない。
ってこれはわかるぞ!ボロネーゼってスパゲッティだろ。よし、これにしよう。マーニャもこれでいいか。
「レフ、決まった?」
「ああ」
レフはそういうと、初老の男性にメニューを指差し注文する。
「じゃあ、僕とマーニャはボロネーゼで。ボロネーゼを2つお願いできるかな?」
「かしこまりました」
そう言って、メニューを持って奥へと戻っていった。
それから数分たったあと、先に俺達の料理が届いた。
やはり、ボロネーゼスパゲッティだった。
「じゃあ、僕達のが先に届いたから先に食べるね。我らが神よ。この恵みに感謝致します」
俺がそう言って食べ始めると、マーニャも食べ始めた。
口数の少ない男レフは何も言わず、ただ自分の料理を待っている。
俺達が料理を食べ始めすこし経った頃、レフの料理が届いたってありゃなんだ!?
レフの料理は特大ステーキとでも言うものだった。あんなの料理に書いてあったのか!
ほら、マーニャはネコ科の宿命として目をキラキラさせてるし。肉があるのなら、マーニャのはそれにすればよかった。ってこの肉何の肉だ?
「レフ、一体その肉なんの肉なんだ?」
肉の塊とでも言うべきステーキを食べ始めたレフにそう聞く。
悔しくなんて悔しくなんてないぞ!
「ドラゴン」
いや、ドラゴン。ドラゴンってこれまたファンタジーな。てか食えるのかよ。
レフはステーキの一切れを、目をキラキラさせてるマーニャに差し出した。マーニャはそれを間髪をいれずに口の中に入れた。
ドラゴンステーキがどれくらい美味しそうかって?そりゃマーニャのとろけそうな幸せな表情をみれば想像がつく。
悔しくなんて悔しくなんて、そんな事はない!
食事を終えて会計すると、金貨1枚と銀貨2枚だった。内訳はボロネーゼが2つで銀貨二枚。ドラゴンステーキが金貨1枚だ。
レフのヤロー!許さん許さんぞ!
俺は今度から、レフの前では自分が払うなんて言わないと心に誓った。