援護
とりあえずは近くにいた一般人を一人連れて逃げた僕。
先ほどの悪霊の気配はない。
僕達の方は追って来たりはしていなさそうだ。
そして一通り走って一息つけそうなので立ち止まって振り返ると、先程の助けた一般人の一人が微笑みながら、
「助かりました、ありがとうございます。えっと……」
「黒兎だ」
「黒兎さんですか、助けて頂きありがとうございます。あ、おれ、泊木譲といいます」
「譲か。……幽霊などを引き寄せそうだな」
「え? 名前にそんな効果が」
「ない、だがそういったものを引き寄せる性質があるようだ。それも才能だから、もし嫌なら封じるが、どうする?」
その言葉に彼は黙ってしまう。
それは本人の自由なので僕はそれ以上言わないが代わりに。
「一般人がこんな場所にいて危険だと思わないのか?」
「それはその……」
「これにこりたら、二度と自分から危険な場所に近づかないように。……さっそくここの中ボスのお出ましだ」
折角一般人の保護を優先したというのに、ここでまた遭遇してしまうとは。
やはりこの廃病院は厄い。
“討伐クエスト”はザルだ。
僕がそう思いながら言うと、すうっと僕達の前にナニかがあらわれる。
少女のような姿をしたそれはここの悪霊の一つだ。
そこそこ強いが先程遭遇したものよりも弱い。
だが、僕よりも弱い。
「消えろ」
僕は早速攻撃するが、効果は……予想より低い。
一撃で倒せなかった。
先程よりもやや弱い敵でこれでは、怜には荷が重いかもしれない。
そう僕は思いつつ再度攻撃する。
「……しゅ」
そこでようやく悪霊を倒した。
だがこの様子ではあちらはどうだろうか。
手こずっているのではないか?
そう僕が思っていると。
「強いんですね。これなら安心できそうだ」
「お友達の心配はしなくていいのか?」
「優は強いですから。寺生まれだからだそうですが」
「……なるほど。道理で力を感じたはずだ。だが、あの程度の力では、さっきの悪霊は荷が重いかもしれない」
「そんな!」
「ああ、まったく……怜に怪我の一つでも負わせたなら、ただでは成仏させないから覚えていろよ」
つい本音をつぶやいたぼくに譲がビクッとして、俺の方を見た。
そんな怖い顔をしていただろうかと僕は思っていると、
「え、えっと黒兎さんと怜にさんはもしや恋人同士……」
「違う。まだそこまではいっていない」
「そ、そうですか。俺と同じですね」
「そうなのか? うまく行くといいな」
「はい、黒兎さんもうまく行くといいですね」
「そうだな。ふむ、こっちに怜達はいて……彼らも一緒か。だが苦戦しているようだな」
僕は力を使い怜達を捜索するが、すぐに見つける。
すでに交戦中らしく、しかもみしった相手が援護している。
小次郎たちが合流している。
あの双子たちの力は中々のものであるし、小次郎もああ見えて強いほうの部類だ。
とは言え、それでも荷が重いようだ。
正確にはここの悪霊が強すぎるのだが。
怜は今のところ大丈夫そうではあるが、彼にはきつい相手だ。
やはり怜には僕がいないとだめだなと思いながら、僕は笑う。
「魔王らしく美味しいところはいただこうか。行くぞ」
僕はそう譲に声をかけたのだった。
評価、ブックマークありがとうございます。評価、ブックマークは作者のやる気につながっております。気に入りましたら、よろしくお願いいたします。