遭遇
こうして病院内部に潜入した僕達だが、
「思いの外幽霊が多いな。放置をするとこのエネルギーが集まり、妖怪にまで進化するかもしれない」
「よし、ここは俺が! 『勇者の力、見せてやる!』」
そう叫ぶと怜の体が光った。
怜の光の霊力を使ったのだ。
まだまだこの世界では扱いに慣れていないため、一直線に感情や意志によって攻撃を加えるのだ。
もう少しうまく操作すると、炎などの属性変換が起きて攻撃能力が高くなるのだが、怜はまだそれが上手くできない。
だからこういった遊びで上手く扱えるようにさせたい。
もともとあちらの世界では扱えていたものだ。
それも普通の人間よりもよほど上手かった。
勇者だから当然と言ってしまえばそれまでだが……それでも僕とそこそこ戦えるレベルだったのだ。
もっともこの前までは僕の全勝であったが。
とはいえ、やはり僕の好きな相手だからもっと強くなって貰わないと、と僕は思いつつ、
「怜、属性変換をして攻撃しろ」
「で、でも俺苦手……」
「苦手だからといって訓練しなければ上手くならない。行くぞ」
「いつも以上に、黒兎が厳しいな」
怜がそんな泣き言をいうので僕は、
「本当は新しい新兵器を試したかったが、怜のために諦めていた。……使うか」
「こ、今度は何をする気だ!」
「怜の服が悲しいことになってしまうが仕方がない(冗談)」
「やめて~」
怜が悲鳴を上げて僕を止めるので、止めることにした。
残念だ、などと僕が思っていると、
「す、進もう」
怜が僕の手を握り、幽霊を倒した道を歩き出した。
廃病院らしく病院にあるものがそこら中に散乱しているが、機会といったものはあまり見られない。
高そうなものはすでに差し押さえられているのだろうと僕は思いながら今度は階段を上っていく。
薄暗く白い幽霊がゆらゆらと揺らめく不気味な場所だ。
怜も怖いらしく動きが硬いが、僕を守るんだ、とでもいうかのように先に歩いている。
怜は僕の力を知っているはずなのだが。
こういった所も、更に好きになるよな、などと思っているとそこで……話し声が聞こえた。
二階の廊下にて。
どうやら肝試しに来た、僕達と同い年くらいの学生らしい。
その二人が興味津々といったように周りを見ていると。
そこで僕は魔王としての能力を使い、霊力を測定した。
まずは明るいお調子者に見える方。
……
…
霊力、ほぼゼロ
モブだ
だが奇妙な何かを感じる
これは……
続いてもう一人の落ち着いたような無口な方も見る。
……
…
霊力は一般人より高めか
だが力を隠している?
……モグリのプロか、家がそういった家系かもしれない
そういったものを一通り見てからそこで僕は気づいた。
何かがいる。
こちらの方を……獲物を見るかのように観察している。
霊力も隠しているつもりだろうが……そんなもの、僕には通用しない。
処理をしようと思った所で、怜が飛び出した。
気づいたらしい。
「伏せろ!」
そう叫んだところで、目の前に黒い影が現れる。
巨大な力を感じる、これが悪霊かと思い、そして一般人の保護をと思ったところで僕達を分断するように襲われる。
目の前に炎が迫り避けてそして、
「こっちだ」
そう僕は呼んで、一般人の一人の方を連れて、その場を逃走したのだった。
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