廃病院への道
新兵器となるものを持って急いで学校に引き返した僕。
うちの猫であったタマを担任の数記先生の所にお嫁に出した僕は、それはそれでさみしいような気持にもなったのはいいとして。
さあ、これから怜に会いに行くんだと思うと少し気持ちが軽やかになる。
どうやら僕は、怜が好きで好きでたまらないらしい。
まったく、この僕をここまでおぼれさせているのだから、怜には頑張って自分から告白してもらおう!
そう僕は決意を新たに進んでいくと、校門の前に立っている怜の姿が見える。
思わず怜に向かって駆け寄っていく僕。
「待たせたな」
「そんなに待たなかったよ。さあ、行こう」
そういって怜が僕の手を握る。
遊びに行くときは、無意識の内に“デート”をしている気持ちになっているのかもしれない。
だが僕はそれを指摘しない。
何故なら、僕が怜と手を繋ぎたいからだ!
しかも自分から怜は僕の手を取るのである
素晴らしい。
この調子で今回も怜の方から告白をさせるぞ!
そう息巻いているとそこで、
「でも黒兎はなんでこんなに強いんだろうな。この前も歴代一位の記録を作ったんじゃなかったか?」
「生まれ持った霊力の量が大きいのだろう。といっても僕は、怜にも同じくらい才能があると思っているからな」
「そ、そうかな……」
「というわけで今日は怜に頑張ってもらおう。これも練習だ。いざという時は手助けするし新兵器も投入してみたいから、攻撃を受けてもいいぞ」
「! い、嫌だよ! 前は俺の方の服が……黒兎は無傷だったし」
そこで恨めしそうに僕の方を見る怜。
どうやら以前の服を溶かされた攻撃を思い出してしまったらしい。
その時は、怜は服を溶かされて、僕は大丈夫だった。
おかげで怜のサービスシーンを非常に僕は堪能させてもらったものの、怜は恨めしそうに僕を見ていた。
僕の服が溶かされて喘ぐシーンが見たかったのだろうが、残念なことに僕が怖いのかその生物は僕に近づきもしなかった。
その時の記憶を思い出しているのだろうが、そこで怜の頬に手を伸ばし、
「冗談だ。怜の体に傷をつけるものは僕も許せないし」
「……やっぱり、その怜の余裕が俺には悔しくなるな」
「そうなのか? だったらもっと強くなることだ。僕も怜のそばにこれからもずっといるから、精進するといい」
「これからも、ずっと?」
「うむ」
僕が大きく頷くとそれに怜は嬉しそうに微笑んだ。
く、怜が可愛すぎる。
やっぱり僕は怜から離れられそうにない。
離れるつもりもさらさらないが、可愛すぎる。
などと表情を変えずに僕は心の中で身もだえていると、そこで怜が立ち止まった。
「ここがあの悪霊が出る廃病院だ」
そう怜が言う。
それを聞きながら僕は、また凄く災厄じみた場所を引き当てたなと思う。
“討伐クエスト”にないのが不思議なくらいだ。
“討伐クエスト”は意外にザルなのかもしれないと僕はそう思う。
僕達が結構遭遇してしまい、練習に使えているのだから実際そうなのだろうが……。
とはいえ、僕達訓練生がこうやって討伐してしまうから逆に、このシステムは成り立っているのかもしれない。
それはそれでどうなのだろうと僕は思うが。
そこで怜が僕に、
「行こうか」
そういって歩き出したのだった。
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