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うちの猫

 いつもと同じ住宅が立ち並ぶアスファルトの敷かれた帰り道。

 特に変わり映えのない光景が広がっている。

 はやっく家に帰りあれをとってきて、怜と一緒にデート……ではなく遊びに行こうと思って速足で家に向かっていた僕だが……。


 そこで、いつもと違ったものの気配を感じた。

 けれどそれは先程も感じたもので、だから僕は立ち止り、


「出てこい」

「流石はクロト様。お気づきでしたか」


 現れたのは僕よりも背の高い猫耳の生えた男だ。

 この世界の人間ではないため、服装も異なってはいるが……と僕は思いながら、


「四天王のタマか。 どうしてここに?」

「いえ、よくわからない黒い穴があるなと手を伸ばしたらこちらに」

「そうか……僕がこちらの世界に戻るときの反動か? まあいい、それでもとの世界に戻してやろう。この世界でさ迷い歩くのも大変であっただろうし、しばらくは休暇を……」


 そう僕が言うとタマが、慌てたように、


「い、いえ、俺はこのままでいいです」


「? そうなのか?」

「ええ。……にゃあ」


 そこでタマは猫になる。

 僕の異世界での部下であるこのタマは、このように猫に変身できるのだ。

 だがいま注目すべきは、どうしてタマは猫に戻ったのかということ。

 つまり、


「タマ、ここにいたのか」


 現れた数記先生に僕は大体のことを察した。

 けれどそれは言わず僕はタマを抱き上げて、


「数記先生はタマをご存知なのですか?」

「もしかして黒兎の飼い猫だったのか?」

「……この猫は知人の飼い猫だったのですが、諸事情により先日から僕の家で飼うことになっていたのですが……行方不明となっておりまして。なんでも猫は死に時を悟ると行方不明になるとのことで僕達も諦めていたのですが、無事で良かった。先生が保護してくださったのですね」

「ああ、衰弱していたところを拾って手当をしたが、そうか……」

「はい、ほら、タマ、帰るよ」


 そう返すとタマが戸惑ったように僕と先生を見比べる。

 全く、家のにゃんこは魔王として再教育が必要だと僕は思いながら、


「ですがタマも先生を気に入っているようですし、しばらく預かっていただけないでしょうか?」

「! いいのか?」

「はい、タマも先生に懐いているようですし。生きているのもわかってよかったです。……そのうち先生の家に遊びに行ってもよろしいですか?」

「……それは構わない、ありがとう」


 そう言いながら数記先生は嬉しそうにタマを抱き上げて、タマも機嫌良さそうだ。

 すごくにゃあにゃあ言って懐いて尻尾を振っている。

 だがそれを見て僕は、家の猫が……という気がした。

 

 ここまで僕には懐かなかったのに。

 そのうち、魔王としての再教育の際に、あの猫状態でたっぷりもふもふさせてもらおうと決めた(異世界ではもふもふしようとすると逃げられていたため)。

 あの黒い毛並みはふわふわでとても柔らかくて心地がいいのだ。


 肉球だって……。

 そう心の中でひっそりと涙した僕。

 けれど表面上はいつも通り対応して僕は一度家に帰りあるものを手にして、怜の待つ校門の前にやってくたのだった。

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