デレデレ
こうして双子に連れて行かれる小次郎を、いつものようにはく情に見送った僕。
ふむ、魔王らしい行動だと自画自賛しつつ、ここで邪魔を以前してみた時、小次郎も双子も機嫌を悪くしていたので、これは放っておいた方がいいなと学習していた。
だからこのように普通に見送ったわけだが、そこで怜が安堵したように、
「はあ、いきなりデートとか言うから何事かと」
などと言ってくる。
それを聞きながら僕は、
「ん? 別に僕は小次郎とデートをしても良かったが」
「え?」
焦ったような怜に僕は更に揺さぶりをかける」
「何か問題があるのか?」
「それは……」
口籠る怜。
ちなみの僕は、小次郎とデートをする気はあまりない。
なぜなら以前買い物に行ったときに遭遇してそのまま一緒になったあとは、愚痴と惚気をひたすら話し合うだけの会になってしまったからだ。
お互いに彼らが気に入っているというか大好きだという事を再確認させられてしまった。
おそらくはまた僕は小次郎と一緒にいても同じようになる自信はある。
だが今回は怜が気にしているので揺さぶりに使ってみた。
この世界の方でも怜には自分から、僕に告白してもらおうと思う。
そのためにこうやって焦らし、焦らせなければならない。
怜から告白してもらうためならば、ありとあらゆる手を使ってやる、と僕が思っているとそこで、怜が近づいてきて僕の手を片方握り、壁へと押しやる。
顔がキスするくらいに近い。
これはアレか。
告白よりも前に肉欲に走ると。
若さゆえの暴走か。
これを機にして更に怜への主導権は握れるか?
などと僕は計算をしているとそこで怜は深くため息をついて離れていく。
どうやら怖気づいたらしい。
相変わらず勇者らしく紳士的でそういったところも好きだが、もう少し積極性がいる。
その積極性が評価される項目だ。
だが、一度その壁を超えるとあとは……ふむ。
「それは回避したいな」
告白をしたあとの異世界での出来事を思い出し、僕はこのケダモノが……と思った。
そこで、
「なにが?」
「お昼ごはん無し、の話だ」
僕がそう誤魔化すと怜もすぐに頷いて、それからすぐに屋上に辿りついたのだった。
屋上にやってきた僕は、怜に向かって卵焼きを食べさせていた。
「どうだ?」
「甘辛いところがいい」
「そうかそうか、次は何を入れてみようか。媚薬などはどうだ?」
「え?」
「冗談だ、しかし、いい天気だな」
「う、うん、そうだ」
「あれ?」
そこで誰かが屋上にやってきて、その姿を見ると怜は慌ててそちらに向かう。
どうやらまた僕を怜は“遊び”に誘うつもりらしい。
そう僕が思いながら見ていると、
「ご、ごめん。あ、別にあの人と俺は特に……」
「そうか」
「……」
気落ちしたような怜。
彼に対して僕に焼餅を焼いて欲しかったのだろう。
だが怜の行動を全て把握し弄ぶ、僕の霊力と頭脳を持ってすればその程度はお見通しだ。
彼の名前は溝口弓矢。
可愛い系の男子である。
だが、ああ見えて僕達よりも一年上の趣味の情報屋で、彼氏持ち。
その彼氏とも他の相手など眼中にないほどのラブラブっぷりである。
愚かだな、怜、そう僕は心の中で呟いたのだった。
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