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本日の授業終了

 授業が終わった時の爽快感は格別である。

 そう僕、石垣黒兎いしがきくろとは思った。

 つややかに黒髪に薄く青色がかった目に、眼鏡をかけている。


 ちなみにこのメガネは、伊達眼鏡だ。

 都合がいいので自分の中のスイッチの切り替えに使っている。

 周りからはクール系のように思われているが、そこまで格好つけというわけではなく、あまり話さず静かにしている性格だからそう思われているだけのようだ。


 そんな僕は、次々と席を立って行く生徒の音を聞きながら、いつものように僕はこの席で待つ。

 彼が来るからだ。

 それを待つ意味と授業の疲労のためか、その場で僕は背伸びをする。


 いつもの学校の授業という平穏なひと時といっても眠っているわけではなく、少しでも授業内容を覚えようとしているのだから、当然疲れる。

 というわけで僕は席で背伸びをしていると、ある人物がやってきた。

 赤い髪に金色の瞳の爽やかなイケメン。


 隣のクラスから早速やってきた嬉しそうな彼は、 


「黒兎、今日はどこでお昼を食べるんだ?」


 だがその顔を実際に見るとやはり覚えていなかったか、という気持ちに囚われた僕は、


「……貴様と食べる昼食はない」

「ええ!」

「……相変わらずのようだ。……今日は天気がいいから、屋上で食事をしようか。まったく、隣の教室からとはいえ、すぐにこちらに来るのはどうなんだ?」

「黒兎に会いたかったんだ! でも屋上、うん、屋上もいいな」


 そこで嬉しそうにあいつが笑った。

 この男の名前は水無月怜みなづきれい

 僕の幼馴染でもあり、異世界での宿敵? でもある。


 そのあたりの詳しい説明は後にするとして、幼馴染である彼は幼稚園から高校一年の今まで一緒の腐れ縁の親友であったりする。

 そして僕はこの親友が僕との関係をさらにランクアップさせたいのだと知っている。

 だが……諸事情により僕は彼の気持ちを“弄ぶ”ことにした。


「何しろ、しつこいから。“調教”しないと僕の体がもたない」

「黒兎、何か言ったか?」

「気のせいだ」

「気になるな」

「気にしなくていい」


 などと話しているとそこで、担任の田中数記たなかかずき先生がそのやり取りを見ていたらしく、


「二人はいつも仲がいいな」


 という。

 身長もそこそこ高くイケメンな教師で生徒とも先生ともに人気が高いという話を聞いたことがある。

 このクラスにも隠れて好きな生徒がいたはずだ。


 だが彼の事は、本命一筋の僕には眼中はなかった。

 だからいつものように当たり障りなく、僕は答える。


「腐れ縁なだけです」

「酷いな~」


 怜が情けない声を上げるのを聞きながら僕は無視して、代わりにたまたま見えてしまったあるものについて、この数記先生に聞く。


「怜の話は置いて……猫缶ですか?」


 そこで僕は先生の持っているバッグからちらりと見えた猫缶について聞く。

 と、先生が困ったように笑い、


「あ、見つかってしまった。このことは内密に。最近猫を拾ってしまってね……弱っているようだから、家で面倒を見ていたんだ野良猫だったら一人身だしかいたいのだけれどね」

「……魔力の残り香がする」

「え?」

「いえ、何でもないです。そろそろ怜がお腹が空いて倒れそうなので失礼します」

「そうだな、引き留めて悪かった」


 そう言って去っていく担任の背を見送った僕だが、先ほど感じた魔力について考える。

 あれは“この世界のもの”ではなく、そして僕には身に覚えのあるものだった。


「……猫か」

「? 猫がどうかしたのか? そういえば黒兎は猫が好きだったなよな。似ているからか?」

「僕のどこが猫なんだ」

「気まぐれな所? それと可愛い所」

「分かった、今日は貴様とは食事をしない。一人は静かでいいぞ。人の喧騒を忘れられる」

「なんでそんなに枯れているんですか。というか一緒に食べよう!」

「ほかの女子でも男子でも誘えばいいだろう」

「うう」


 僕が意地悪を言うと怜が呻く。

 それを見ながらこれくらいにしてやろうと僕は思う。

 いきなりこんな所で可愛いなんて言うな、僕の方から告白しそうになったじゃないかと表情にはおくびにも出さず、内心焦る。


 これは早く食事に行った方がいいと僕は判断し、


「屋上に行く」

「! うん!」


 怜が嬉しそうに答えたのだった。




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