雪と棍棒4
やっとオッサンヒロシの異世界転移1日目の話ができますが……
さわりだけです
「それじゃ君は、まだこの街が出来る前の事を見た事があると言うのか?」
ドア越しに聞こえる声は旦那様の物であるのは間違い無い、ノックするタイミングを見計らっているとドア越しに聞こえて来た言葉の意味を考え「有り得ない」と呟いてしまう
後ろに居る使用人は、頼まれた服を抱えている
選ぶのに手間取ったが貴族に見えないがそれなりに裕福そうな服、仕立ては良くも布の質は上等とは言えないのだが、それなりの物を選んで来た、これならば十分に及第点だろう
右手に持つ銀のトレーには、昼食すら取られてないであろう旦那様の為に用意した軽食を乗せて聞こえてくる会話も止まっているようなので空いている左手でノックして呼びかける
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「まず最初に聞くのは、その楽器の名前、これまで様々な楽器を見る機会があったが、そんな形の物は初めて見た、次に年代と場所、いったいどれくらい前の事なのか? そしてそこは帝国のどの場所なのか?聞きたい事は山程あるがまずその三つにしようか。」
一曲約30分程だが、出だし数分で目を閉じた世界的に有名な配管工のヒゲと同じ名前のお貴族様が目を開けてすぐに聞いてくる 「この野郎寝て無かったか」 などと言える訳もなく、できる限り丁寧な口調で答えとする
「楽器の名前はバラライカで御座います。」
一つ目の質問に簡潔に答えると即座に質問を返されてしまう
「バラライカとは、初めて聞く、ふむ? それは何処の国の楽器なのだろうか?」
ふむ? なんて言う人間を初めて見た! 笑ってしまいそうだが我慢しよう
バラライカはロシア民謡に使われている楽器で日本じゃあまり馴染みの無い楽器だろうがコサックダンス等の曲に使われている弦楽器がバラライカであり、音色を聞いた事のある日本人は少なくは無いだろう
「これは遠い異国、私の故郷の楽器です。」
ここが異世界であるなら大きく纏めて地球は故郷と言っても差し支えないだろうと思い答えると
「ふむ? 君の故郷か、それも興味をそそられるな、だがそれは後にしようか。」
ヤバイ! またきたよ! ふむ?
ダメだニヤけてしまう!
不敬罪なんかにされたらたまったもんじゃない、ニヤけた顔を見られるのもまずいので俯きながら質問の続きに答える
「年代と言われましても、正確な事は覚えておりません、350年は過ぎたような、しかし400年は経っていないような気がします。 場所はこの街の北門を抜けた先の平原で御座います。」
答えた直後に思い出した事があって更に付け加えて答える
「この街の第一城壁が作られ始める数年前だったと記憶しております。」
すると今まで温和な口調で貴族らしく無かった目の前のお貴族様が少し声を荒らげて
「それじゃ君は、まだこの街が出来る前の事を見た事があると言うのか?」
嘘は言っていないで短く一言
「はい、見た事があります。」
と答えればお貴族様は黙ってしまい沈黙が訪れる……
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思いがけない答えが返ってきた、楽器の名前は、良しとしよう問題はそこじゃ無い
しかし有り得るのだろうか?
帝国では、見る事も無い黒目黒髪に日焼けしているが黄色い肌の人種は、神国より西に行けば大なり小なりの集落を作って暮らして居て珍しいという程でも無い……
仮にエルフだとしよう、だがエルフの特徴である長く尖った耳も無ければ丹精な顔立ちと言う事も無い……
魔族ならば? 角を切り落とせば人間に見える種族も居ない訳では無いが、長くても人間の倍程度生きる位で、数百年を生きる種族となれば羽や鋭く尖った爪や硬い鱗等の身体的特徴がある筈で、どう見ても目の前のヒロシと名乗る男にあるはずも無く……
思考が追いつかない
不思議な感覚だったが、それを遮るかのようにドアがノックされる
「失礼します旦那様、頼まれた物が用意出来たのでお持ち致しました。」
イアサントの声に頼んでいた物があった事を思い出し部屋に招き入れると、右手に食べ物乗せたトレーを持っている、昼食を食べていない事を思い出し急に腹が空いてくる、それを知っての事だろう、出来る執事である
「ヒロシにも飲み物を用意してくれないか?」 と言えば
「まず先にお召し物を。」
と言われ、片脚の貫頭衣を着た中年の男を義父や妻に見られた時に生じる問題を考えて承諾する
イアサントは、後ろに控える使用人に別の部屋へと案内して着替えを手伝うように指示を出し、私の机に軽食の乗ったトレーを置いて部屋を出て行く
焼いた肉と葉野菜をパンに挟んだ物を野菜を煮溶かしたスープで流し込む
聞いた詩を覚えている部分を書き出し、まだ聞いていない、これから聞けるその時の行動に思いを馳せながら
生きててすいません
なんて謝ってみてもコメントに返信したのが良かったのかわかりません
でもコメント貰えれば喜びます_|\○_
読んで頂いてありがとう御座います