旅の始動
文字数増やしてみました。
前回ののお話
神様が家に来た
「私の本当の力を取り戻すのを手伝ってくれない?」
「は?」
「うーんとね、今の私は能力を1日に1回しか使えないんだよねー。それだと不便で仕方が無くてさ〜」
やれやれ、といった感じでリティは首を横にふる。
1日1回ねぇ....というかそもそも能力ってどういう事だ?
「能力とはどの様なものなのですか?」
「私の能力は『能力を付与、及び削除する』というものだよ。」
能力の付与と削除、と言われても分かりづらいな。どういう事なんだ?
「リティ様、その言い方ですと伝わりにくいかと。」
「え〜、じゃあデス説明して〜。」
「了解致しました。」
「まずリティ様の能力である『能力を付与、及び削除する』というのは人物、物体問わずに使用することができます。『能力』と括れるものならなんで付与できます。例えば霧丘様に「ジャンプし続けなければ死ぬ」という能力を付与すればそのとおりになります。」
俺は思わず身震いした。
そんな能力を使えるやつが存在してもいいのか?
「削除するというのは例えば霧丘様から「呼吸をすることが出来る」という能力を削除することができます。」
「嘘ですよね...?」
俺はゆっくりと顔をリティの方に向けた。
「残念ながら本当なんだよね〜」
嘘だろおい....本当だったら俺やばくね…?
「じゃ、じゃあその証拠を見せてくださいよ!」」
「うーん、まぁいいよ。今日はもう使う予定ないしね。」
....!そうだ!こいつが本当に能力を付与したり削除できるっていうなら俺の『お菓子を食べると女体化する』という能力も削除できるんじゃ...!?
「じゃあ私の『お菓子を食べると女体化する』ていう能力を削除してください!」
「あ〜その能力かぁ〜。なんで削除してほしいの?」
「その能力、って知ってるんですか?」
「勿論!だって私は『能力を司る神』だよ?まぁ詳しい能力の特性までは分からないけどね〜」
ドヤ顔をしながらリティはこちらを見てきた。
うわ、ちょっとうぜぇ...
「削除してほしい理由は女体化すると口調も女の子のようになるので困っているからなんですよ。」
「そうなんだ〜。でもその能力は削除できないかな〜。」
「え?」
どんな能力でも削除したり付与できるんじゃなかったのか?
そう思いつつ俺はリティに問いかける。
「何故ですか?どんな能力でも付与と削除ができるんじゃないんですか?」
「あ、ごめんごめん。削除できないっていうより『削除したくない』かな。」
ん?いよいよ理解が追いつかなくなって来たぞ?
「したくない、というのはどういう理由があってですか....?」
「それは秋人の女の子の時の姿が可愛いからだよ!」
これはひどい。
理由に呆れながらなんとかリティを説得しようと試みる。
「いやそんなこと言われても私はこの能力いらないんですよ....」
「だって可愛すぎるんだもん!」
そう言いながらリティは椅子から立ち上がり、俺の横まで来て抱きついてきた。
「ちょ、あなた!今は体が女の子でも中身は男ですよ!?」
リティがムスッとした表情で言う。
「あなたって誰ですかね〜」
そう言いながらもリティは俺に擦り寄ってくる。
こいつを止めなければ面倒くさい事になる...!
直感がそう告げていた。
「分かりました、リティさんお願いしますやめてください!」
「さん付けは好きじゃないんだけどな〜」
そう言いながら俺の胸を掴んでくる。
やばいやばい!色々な意味で!
「リ、リティちゃんやめてください!本当にこれ以上はダメです!」
「しょうがないなぁ〜」
リティは俺から離れる。
よかった....ん?何か突き刺さるような視線が....
横を見るとデスが鬼のような形相でこちらを見ている。
「霧丘様、少々リティ様にくっつきすぎではありませんか...?」
え、なんでこんなに怒ってるの!?
「いやいやリティちゃんからくっついて...」
ギロッ
「誠に申し訳ございませんでした。」
人生でここまで命の危険を感じたのは初めてだ。これは許してもらえなかったらあの世行きだな。
「これは事故なのでぜひお許し願いたいです。」
「本当に申し訳ないと思っていますか?」
「はい、心の底から申し訳ないと思っております。」
綺麗に90度に腰を曲げ、全力で謝る。
そうこうしていているとリティが止めに入ってきた。
「まぁまぁそのへんで、ね?」
「リティ様がそう仰るのならば。」
いや、なに『止めた私に感謝してね』みたいな顔してんの?お前のせいでこうなってるんだからな?
また面倒臭い事になっても嫌だしとりあえず感謝しておくか。
「有難うございます、リティちゃん。」
「気にしないで〜(ドヤッ)」
うざい。シンプルにうざい。
「話を戻しますね....どうにか私の能力を削除してもらえませんか?」
「ん〜そうだね〜、じゃあこうしよう!私の本当の力を取り戻すせたら削除してあげるよ。」
それは人間の俺でも務まるものなもだろうか。一応こいつらも神らしいし、危険そうだな。
どうすれば本当の力を取り戻せるのか詳しいことを尋ねる。
「どうやったら本当の力を取り戻せるのですか?あと人間の私に何が出来るんでしょうか?」
「んーとね、私の能力は強力過ぎて他の神達に封印されちゃったんだよね。
だから返してもらえるように説得するんだよ。説得でなんとかならなかったら....これだね。」
そう言いつつ、握り拳を前に突き出した。
絶対危ないじゃねぇか....心配だ....
「リティ様、能力は強力過ぎたというより『能力で好き勝手し過ぎた』の間違いでは?」
「そうともいうね〜」
「自業自得じゃないですか!」
「まぁそうなんだけどね、でもどうしても能力を返してもらわなきゃダメな事情ができちゃったからね〜」
事情か...どうせこいつの事だから大した事情ではないだろうな。
そう思いつつリティにどんな事情なのかを尋ねる。
「なぜ急に能力が必要になったんです?」
「それはおいおい分かるよ〜」
おいおい、か....
どうしようか、能力を削除してもらうためについて行って危険な目にあって死んだんじゃただの阿呆だしな。
「取り戻すのはいいんですが私が危険な目に合うのは嫌ですよ?」
「それは大丈夫だよ!絶対に秋人には危険な目には合わせないから!」
「なら....リティちゃんの能力を取り戻すのに協力しましょう。私には何が出来るかわかりませんが....宜しくお願いします。」
そう言って俺はぺこりと頭を下げた。
「うん、宜しくね!」
リティは顔に満面の笑みを浮かべながらそう言った。
「私も一緒に取り戻すのを手伝うので宜しくお願いします、霧丘様。」
軽く微笑んでそう言った。
「はい、宜しくお願いします!」
これからどんな事が起こるかわからないができるだけの事をしよう、そう思った。
仲間ができた喜び、これから起こることへの不安、そして能力がなくなる事への期待を胸に抱きながら。
1人の人間と2人の神がお互いの目的のために手を組んだ。
この3人組がこの世界をいい意味でも悪い意味でも動かすことになるのはまだ先のお話.....
最近寒いですね、体調崩さないように気をつけてください。