第五夜:災害時非常時には集まる場所が決まっている
第五夜:災害時非常時には集まる場所が決まっている
非常時において、人々が集まる場所というは、かなり昔から、日本に限らず存在している。
まあ、災害と限定すると、日本が多いので当然の話なのだが、それ以外の非常時というのは何があるのか?
それは、盗賊や、戦争、そういった非常事態である。
こういったときは、村などは村長の家に集まって、話し合いをして物事を決めるというのは当然であった。
この風習は、自らを守るために、周りと協力する、しやすい体制を整えるためのものであり、現代にいったも有効で、日本では主に、地震や洪水といった災害時に大きな頑丈な建物に避難し、集まり、情報を集めやすいようにしている。
「……ということで、目指すなら、避難場所になっているところだろうな。そこなら、人が集まっているだろう」
「なるほどなー」
話しながら、夜道をライトと呼ぶにはすさまじい明かりで照らしながら歩くのは、鷹矢と進である。
彼らは、真の字、也の字と別れたあと、すぐにぼろ小屋まで戻ったのだが、新しい人影もなく、家屋も見えないので、とりあえず、奥に続く荒い道を進むことにしたのだ。
その退屈な道すがら、どこに人がいるのだろうという話になって、非常事態なのだから、役所や学校ではないかという話になったのだ。
……確かに、言っていることは正しいが、状況に合っていないのは今更である。
こんな、人型の化け物が徘徊する山中で、のんびり堂々と明かりをつけて道を歩ける神経の人間はほとんどいないだろう。
しかし、不幸中の幸いというか、このバカな目印を引っ提げた2人に襲い掛かるモノは今のところ存在していない。
どちらにとって不幸中の幸いなのかは、明言を避けておくが。
「でもさ、なんかボロ小屋すらないよな」
「だなー、流石にそろそろ何か見えてもいいはずだし、過疎化した村とかじゃなくて、なんかの山小屋だったか?」
いい加減次が見えないので、鷹矢も失望の感じでそう言った。
……この状況で失望。
いや、まあ道に迷っている。という前提で考えると、何もないのは失望だが。
鷹矢の場合、サンプルが欲しいだけなので、方向性が全く違うと言っておこう。
「いい加減飽きてきた……ってうおっ!?」
前を歩いていた進がいきなりバランスを崩し、倒れ掛かるが、踏ん張り倒れることは回避する。
「大丈夫か?」
「ああ。なんか、足元に変なものがあってさ、引っかかった」
「ああ、こんな藪ばかりだからな。足元に何かあってもわからないよな」
そんなことを話しながら、進は足で転んだ場所を蹴ると。
コンコンゴン。
「お? なんかこれ鉄っぽい音だな」
「だな。木の音って感じじゃないな」
「取り出してみるか」
「怪我するなよ」
「あいよ」
とりあえず、気になったので、足元にある何かを引っ張り出すことにする進。
ガサガサ……。
「なあ、思ったよりデカくないか?」
「デカいな。鷹矢、そっちのほうむしってくれね?」
「おう」
鷹矢も協力して、草をむしって、つまずいた物体をあらわにする。
「や、やとなか? でいいのか?」
「多分な。で、野兎中小学校? 聞いたことないな」
そこにあったのは朽ちた看板。
「野兎中小学校、この先、左」と書いてあった。
「ま、いいや。学校があるなら、誰かしらいるだろう。行こうぜ」
「ちょっとまて」
そう言ってすたすた歩きだす進を止める鷹矢。
「なんだよ?」
「いや、この看板倒れてるから、どこがこの看板が指す左かわからん」
「あ、そっか」
鷹矢の言う通り、看板は倒れていて、草木が生い茂り、どこに立っていたのか不明だ。
だから、この看板に書いてある左がどこかわからない。
「でもさ、ここら一帯の草むしりはしたくないぞ」
「まあな。でもこの看板よく見てみろ。足の方が折れてるから、足の方は地面に刺さったままのはずだ。草をむしらなくても、ここまで太いから、適当に棒でも振ってたら探せるだろう。それで見つからなければ適当でいいし」
「うし、それなら……」
進はそう言うなり、近場の木にぴょんと飛び移って、小さい体の全体重をかけるように……。
ボキッ!!
生木をへし折った。
ちゃんと、長い奴を選んでいるので、長い草の中もばっちりだ。
「進、次はやめとけ。また、おっさんみたいに怒られるぞ」
「あ、そうか。次はやめとく」
さて、なぜ鷹矢は進を怒ったのか?
これにはちゃんとした理由がある。
まず1つは、木をただ意味もなく折るのは好ましいことではない。植物とか結構デリケートなもので、桜なんかは、下手に枝を落とすと、数年桜が咲かないと言ったことが起こる。進としては、草木を分ける棒が欲しいという理由があるのだが、そんなのは地面に落ちている枯れ木で十分である。
次に、鷹矢が言ったように、誰かに怒られるという話だ。昨今の日本に置いて、誰かの土地でない場所は存在しない。誰かが所有者であり、その山で生木を折るなどの行為は器物破損と取られても仕方がない。
そうそうそんなことはないのだが、この4人組は小さきとき、地元の山をはげ山にしてこっぴどく叱られた経験があるので、こういうことには敏感なのだ。まあ、次の日には元通りにして無罪放免となったが。叱られはしたが反省はしていないという奴である。それに関しては色々理由があるのだが、今は関係ないので省略させていただく。
そして最後に、生木をゆらすというのは、虫が落下してくる可能性があるのだ。特に今は夏。虫のシーズンである。本日は虫取りに来たわけではないので、わざわざ木に捕まってのんびりしている虫たちを起こすのは忍びないという至極普通な理由だ。無論、取るときは遠慮などしないが……。
鷹矢も進にそう言ったあと、すぐに枯れ木を拾い、辺りを捜索し始める。
ガサガサ……。
無言で2人とも棒で草木の中を調べていく。
子供の頃はこんなことをよくやったものだ。
今は、看板の足を探すという目的があるからいいものの、昔は意味もなくやって、それなりに楽しかったのだから、子供の冒険心というのは侮れないものがある。
ガン。
そんな感触が鷹矢の手に伝わる。
棒を引っ込めて、感触があったあたりの草をむしると、看板と同じような大きさの足が地面に突き刺さっている。
「おーい、進。あったぞ」
「お、本当か? ……これ本当に看板の足か?」
「多分な。幸い足が二本で長さが違うし、比べればどっち向きで立ってたかわかるだろう」
「なるほどな。えーと、あの看板の足がこうだから……」
「多分あっちだな。丁度正面だ。迂闊に左の道に行っていたら、たどり着けなかったな」
「あぶねー」
そして、二人は更に奥へと進んでいく。
なぜか木の棒を持ったまま、草木をバシバシ叩いている。
いや、森の中では木の棒を持って音を出すというのは悪いことではない。
熊などで聞いたことがあるかもしれないが、自ら音をだすということは、自分たちの位置を知らせるということで、出会いがしらで野生動物たちがパニックを起こして人を襲うという事件を避けられるのだ。
熊は北海道ぐらいだろうが、じつは猪、猿、蛇なども、実は出会いがしらのパニックで人を襲うのがほとんどである。
ということで、この2人の動作は普通に、山道、登山コースなどを歩く場合には非常に有効なのだが、ホラーの中では最悪の行動である。
この手のホラーのお約束は視認や音によって、異形の物が反応して襲ってくる。
つまり、この2人は襲ってくれと言わんばかりの行動をまとめてしていることになる。
まあ、この2人の場合は心配はいらないのだが、寧ろ襲った異形の物を心配しないといけない。
しかし、幸か不幸か、こんな目立つことをしている2人に襲い掛かる者はいなかった。
「いい加減飽きてきた……」
「だなー。もう空飛んだ方が早いか」
進が飽きて、鷹矢もそれにのって、さも当たり前のように空を飛ぼうと提案している。
……事実、飛ぼうと思えばこいつらは飛べる。
主に鷹矢の技術であるが、色々な方法で文字通りその身一つで飛べる方法がある。
そうなれば、もうホラーどころでは無くなるのだが……。
「お、あれ、学校じゃね?」
「おお。本当だ」
気が付けば、暗闇の中にうっすらを大きい建物が見える。
門構えや、奥の建物の配置からして学校だろう。
二人は空を飛ぶことを忘れて、そのまま門に走り寄る。
「随分とボロボロだなー」
「そうだな」
門にはすでに蔓が巻き付いていて、金属でてきているのだが、塗装が剥げて、さびでボロボロだ。
どう見ても、ここ最近誰かが出入りしたような感じはない。
「ま、ここが最近の入口じゃなくて、他から入ってるかもしれないな」
「ああ。その可能性もあるな」
何をどうすればそこまでポジティブな意見が出るのか甚だ疑問であるが、人……死体が動いていた以上、近場に死体……人がいる可能性があると考えれば普通の考えだろう。
……うん、お前らもっと状況に沿った行動しろ。いい加減説明が辛です。
「とりあえず、門をよじ登って……」
そう進が手をかけようとしたのだが……。
「ダメダメ。進、俺たちは救命にきたんだ。人助け。つまりは、後ろめたい不法侵入をしているわけではない」
「? そりゃそうだけど、この門、どうするんだ?」
「簡単だ。盗人みたいによじ登るよなことはしなくて……」
鷹矢は空中から巨大なロボットアーム取り出し、それが思いっきり門に拳をぶつける。
ガッシャーン!! ドン、ドン、ズサーッ……。
そんな音をたてて、学校のグランウンドを通り過ぎ下駄箱の入り口ぐらいまで吹き飛ぶ。
「緊急措置法というのが合ってな、刻一刻を争うような事態は多少の法律違反はみとめられる。今病気にかかっている人がいるかもしれない。そんな時にわざわざ遠回りをしている暇はない。そうだろう?」
「ああ、そうだな!!」
……言っていることは間違っていない。
救命のため、ドアなどを壊すのはごく当たり前である。
しかし、何事にも限度はあるし、部屋の人を助けるために、関係のない車などを壊すことは適応されないので、鷹矢のやっていることは……通路の確保ということで問題ないだろう。
「そして、俺たちが近くにいるということを知らせるためにはいい音だから。これで何か反応があるかもしれない。無いなら、あの下駄箱にあるバリケードを壊してみよう」
「なるほど。流石鷹矢だな」
「あっはっは。そんなに褒めるなよ」
……こういう自分たちのことを要救助者に知らせるために音や声を出すことは間違いではない。
……間違いではないが、絶対状況に合っていない。
こういう事態に合った方は決して真似をしないでください。
きっと囲まれます。化け物とかに。
「きっと、也の字がいたら鍵探せとかいうよな」
「まあ。それがホラーの定番だし、物を壊すのは本来よくないからなっと」
ドッカーン!! ガラガラ、ガッシャーン、ドゴン!!
そう言って、鷹矢は下駄箱に積み上げられた机や椅子、板をロボットアームの一撃で吹き飛ばす。
……これって、今の事態で立てこもるために、生きている人たちが必死に積み上げたのではないだろうか、とか思ってはいけない。
これは一応救命活動なのだから。
「お邪魔しまーす。っと邪魔だな」
「そうだな。通りやすいようによけるか」
一応道はひらけたのだが、通りやすいように整理する2人。
変に丁寧に、わざわざグラウンドの方まで運び出して、下駄箱をスッキリさせている。
いや、横に山積みにして崩れて道がふさがれる可能性はなくなったのだが間違いではないのだが。
「さて、片付けは終わったけど、誰も出てこないし、声も聞こえないな」
「だなー。一応サーチかけてみるか。重傷で声出せないかもしれないし」
鷹矢はそう言って、ここら一帯のスキャニングする。
鷹矢のオリジナル技術なので、心霊現象、異界の中でもちゃんと作動する優れものである。
ロボットアームもそのオリジナル技術で作られているから動くのである。
ピピッ。
「お、反応あり。2階校舎の右端だな」
「そうか、なら早く行こうぜ」
校舎の中は外の外見ほどボロボロではなく、寧ろ使い込まれてここまでになったというかんじだ。
ぬくもりある、人が途絶えた校舎内と言った感じだ。
「へえ、つい最近まで人がいたって感じだな」
「だな。とりあえず、2階の右端の部屋に行ってみよう」
暗い廊下を迷いなく歩いて行く二人。
幸い、廊下や階段は壊れてなどいないので、スムーズに目的地にたどり着く。
そして、扉に手をかけて開けようとするが、扉はびくともしない。
「あれ、開かないな」
「つっかえ棒でもしてるんだろ? めんどくさいから壊すか」
そう以ってロボットアームが動くこうとした瞬間……。
「人ですか?」
扉の向こうからそんな声が聞こえた。
二人は顔を見合わせて、ようやく人を見つけたと喜びの顔になる。
「おう、新上進っていうんだ」
「俺は、飛翔鷹矢。よければここを開けてくれないか?」
そう名乗って少し待つと、扉から何かを外す音が聞こえて、扉がゆっくり開かれる。
そこから現れたのは、髪を三つ編みにした、なんというか古臭いとかいか、昔いたような女学生だった。
「よ、よっかたー。せ、先生。人ですよ!!」
「うん。洋子ちゃん、よかったわ。でも、とりあえず、すぐに中に入ってもらって」
「あ、はい。どうぞ中に入ってください!!」
促されて、進と鷹矢は中に入って扉を閉めると、すぐに洋子と呼ばれた女学生が机を持って、扉を開けるのを妨げるように置く。
「すいません。こちらまで来ていただけますか?」
「あ、ごめんなさい。先生怪我をしているんです」
奥で動かない女性にすぐに駆け寄る洋子に続くように、進と鷹矢も歩いて近づく。
「先生。そうだ、保健室に道具を取りに行ってもらいましょうよ」
「だめよ。こんな危険な場所を行かせられるわけがないわ。いつっ!?」
「でも、先生の怪我が……」
「私は大丈夫だから。あとちょっと待てば、血も止まるから」
先生と呼ばれた女性の足には、恐らく白いタオルがまかれていたのだろうが、血でほとんどが真っ赤に染まっていた。
「ちょっと見せてくれ。多少は知識があるし、医療道具も持っている」
「え、本当ですか?」
「おう。鷹矢は天才だからな」
鷹矢は進にそう言われて嬉しかったのか、少し優し微笑んで、すぐに診察に取り掛かる。
というか、ある程度基礎知識があれば、この応急処置は間違いだ。
出血が多い場合は、止血を的確にしないと、出血多量で死に至ることが多い。
人間の総血液量は体重の1キロ当たり、約60mlから80ml、成人60キロと過程して大体4Lちょっと。
思ったより人間の血液は少なく、映画などで血がどばーっと流れるようなことが実際あれば、出血多量で死んでしまう。
人はこの総血液量、循環量ともいうが、このうち半分、2Lを失えば死に至ると言われている。
これは、あくまでこれは死に至るという量であって、この前に既に意識を失うだろう。
つまり、限界ラインはよくて3分の1。
1Lを越えればあの世が近いし、こういう出血に体制の無い人はこれよりも早くに体調に異変をきたす。
さて、話をもどして、なぜこの先生にしている応急処置が間違いなのかと言えば、ただ傷口にタオルを当てているだけなのである。
これでは止血になりえない。いや、多少の効果はあるだろうが、こういう大きな怪我の場合は非常に効果が低い。
心臓に近い位置を縛るというのは壊死などの可能性があり駄目だという意見もあるが、こういった場合、命を繋ぐために、縛るほうが好ましい。
そして、心臓よりも怪我の部位を高くする必要があるのだが、ただ座って上から足を押さえているだけなのだ。
これでは、長くは持たない。
最悪の場合は傷口に布でも突っ込んで、血管をふさぐという荒業も存在する。
衛生上好ましくないが、こういう荒業で命をつないだ例は結構あったりする。
「やっぱり、ほ、保健室に道具を取りに……」
「だめよ。こんな化け物がいる中に、男とはいえ、学生の彼らを向かわせるわけには……っつーーー!?」
「せ、先生!? ひ、飛翔さんでしたっけ? せ、先生は大丈夫なんでしょうか!?」
「いやー、思ったよりひどい傷だな。刃物は刃物だが、凄く刃こぼれしていて、錆が付いた奴で斬られてないか? 傷口がズタズタで錆とかいろんな物が付着している。これじゃ、破傷風や二次感染になる。簡単に言えば傷口から病原菌が入って、病気になるってことだ。破傷風の場合だと処置が遅れれば遅れるほど、命の危険にかかわる」
「そ、そんな!?」
「……先生さん。既にこの傷だ。すごく体調もわるいだろう?」
「……ええ」
「せ、先生。な、なんで、いままで……」
「ごめんね、洋子ちゃん。心配かけたくなかったの」
先生はそう言ってほほ笑んで、すぐに覚悟を決めた顔にもどる。
「でも、飛翔君の話で決心がついたわ。ここではまともな治療は望めないし、当てもない。だから、お願い。新上君、飛翔君、私を置いて洋子ちゃんを連れて逃げてくれないかな?」
「そんな、先生を置いていけませんよ……」
「泣かないで。分かるでしょう? あんなのがそこら中にいる。私みたいな足手まといは連れて行っちゃだめ。私が大きな音を出して気を引くから、なんとかして脱出して」
「ぜ、ぜんぜい……」
とまあ、あるホラーにおけるお約束みたいなものだが、ここにはそれを物ともしない二人が存在している。
世の中、ゲームみたいに二択なんてありはしない。
先生を見捨てず、保健室から道具をとってくるとか、先生の言う通り、ここから逃げ出すとか……、どのみち先生を見捨てることになるなんて結果、そんな無情はこの場には存在しない。
いつだって、不条理に立ち向かうのが人なのだから、この不条理をどうにかできる人がいてもまたおかしくない。
「じゃ、診断もおわったしちゃっちゃっと治すか」
「だな。任せた」
「「え?」」
二人は鷹矢と進の話についていけていないが、物事は勝手に進行する。
お約束のナノテクノロジーで、淡い光が出現し、先生の傷口を淡く包み込み、それが終われば傷がなくなっていた。
「はい、終了。あ、これ増血剤。これでなくした分の血はもとに戻るから。すぐに」
「え?」
「え? せ、先生足!? 足!!」
そう言われて、怪我をしていた本人はようやく、自分の足に目を向けると、見るも無残な傷ではなく、いつもの見慣れた自分の足があることに気が付く。
ポカーンとしながらも、手で傷が合った場所を触るが、特に痛みもなく、いつもの感触があり、ちゃんと足も自分の意思で動かせると感じる。
「な、治ってる!! すごいわ。鷹矢……くん?」
「あ、せ、先生!?」
喜びのあまり立ち上がるが、なぜか立ちくらみがしてすぐにバランスを崩して、洋子に支えてもらって倒れるのを免れた。
「いや、だから増血剤。貧血なんだよ。これだけ血を流していたんだから」
「な、なるほど。あ、ありがとう」
喜びの興奮も落ち着き、鷹矢に出された増血剤を飲む先生。
プッ。
そんな音共に、先生はなぜか鼻血をいきなり両方から出す。
「せ、先生、鼻血が!?」
「あー、大丈夫。増血剤のせい。特製だからな。はいティッシュ」
「……ありがとう」
先生は大人なので鷹矢に文句は言わず、ティッシュを鼻に詰める。
……見た感じ20前半の気がする女性にとっては致命傷な気がするが。
「でさ、とりあえず落ち着いたし。ここがどこだか教えてくれない? 俺たち道に迷ったんだよ」
「あ、そうなんですか。だから見慣れない校章つけていたんですね」
「……どこから話したものかしら。でもここも危険だし、一旦場所を変えた方が……」
両方の鼻の穴にティッシュを詰め込んでいる先生はいたって真面目だが、どうも笑いを誘うのは仕方がない。
そして、先生は言ってはいけないことをいった。
「んじゃ、俺が辺り一帯掃除してくるわ。進がその間に話聞いててくれ。田中さんは置いて行くから」
「「は?」」
先生と洋子は二人の言葉の意味が理解できていなかった。
だが、それを無視して話は進む。
別に同意など要らないし。
「おう。頼んだ。ちゃんとけが人は連れて来いよ? 分解するなよ?」
「分かってるって。じゃ、田中さんまかせたぞ」
『オウ、マカセトケ。コノドリルデ、スベテヲ、ツラヌク』
そしていきなり虚空から現れたのは、昔懐かしいブリキロボのおもちゃを無理やり、現代にリファインしたような物体がそう喋っていた。
「貫くな。捕獲にしとけ」
『ナゼダ? コノドリルハツラヌクタメニアル。ソウイッタノハ、タカヤトススムダ』
「事情があるんだよ。あ、カップ麺とケトル置いて行くから、水は勝手に補充されるし、飯食っとけ」
「あいよー」
『フム、ソウイウノナラシカタガナイ。ホカクスル』
そんなやり取りをして、置いてけぼりの先生と洋子を無視し、鷹矢は夜の校舎へと消えていく。
「「な、なんですか、それ!?」」
もう、鷹矢を心配することなどどこかにいった。
それも当然。いきなりリアルなロボが出てきて聞かないわけにはいかないだろう。
『ム? ゴフジンガタニ、セツメイハシテイナノカ?』
「してねーよ」
『アイカワラズダナ。ヤノジガイレバラクナノダガ……』
「今は別行動」
『ヤレヤレ、コノヒジョウシキドモメ』
「うっせー」
そんな会話をして、ブリキのロボ?は先生と洋子の前に立ち……。
『ワタシハ……、あーめんどい。私は全領域対応型、万能ロボット、通称バンロボ。名称は田中さんだ。よろしく頼む』
二人はそのロボに目を丸々させて……。
「「流暢にしゃべったぁぁぁぁぁぁーーー!!」」
そう叫んだ。
うん。色々間違っているが、そこも言いたいよね。
ということで、ここで、進と田中さんとおまけ二人チームと鷹矢ソロチームに分かれることになった。
さあ、どうなることやら?
まず最初に言っておきます。
たまたま、執筆がすすんで投稿ができただけでこのペースはありえません。
ほかに連載もしているので、これ一話平均8000文字を一日一話書いてたら死ぬ。
さて、本編ですが見てのとおりです。
日本のホラーに超技術が混ざるとこうなります。
世の中は合わせてくれる人がいて、ようやく話になるのであって、ホラーでもホラーと思わない人がいればそれはホラーではないのです。
……わかった?