第四夜:思いやりの精神で
第四夜:思いやりの精神で
日本にとっては普通の事なのだが、外国では普通ではないことは多々ある。
例えば、目の前で財布を落として小銭をばらまいてしまった人がいる。
日本では自然と小銭を拾い集めて、本人に返して、ありがとう、いえいえ。というのが当たり前の流れである。
しかし、外国になれば、小銭を落とせば、それは持ち去られても仕方がなく、逆に拾えば盗んだと訴えられることもある。
また、その日本人の思いやり精神を利用した、注意を引いてスリを行うなどと言った話を聞いたことがあるのでないだろうか?
結局のところ、国々で、思いやりの精神というのがいきわたっていない国々があるということだ。
何とも世知辛い話ではあるが、だからこそ、日本人の在り方は綺麗だと、真っすぐだと称賛されることもある。
さて、今回の話は、そう言う話である。
外国では、具合の悪そうな人や、怪我をしている人を見ても、直接かかわろうとする人は非常に少ない。
なぜかというと、下手に処置をして、訴えられる可能性があるのだ。
下手な善意は身を滅ぼすという奴で、銃所持が認められている国で「助けて」と声をあげたら、周りの人は逃げるのが当たり前になっている。
善意を見せて、素人が銃相手に挑むのは馬鹿な話である。
ま、このように、外国では専門家に任せるべしというのが常識になっている。
やって連絡、通報ぐらいのもの。
それ以上踏み込めば手痛いしっぺ返しがあるかもしれないからだ。
だが、それは外国での話。
思いやりの国、日本は違う。
具合が悪そうな人怪我をしている人がいる場合は速やかに容態を確認し、必要であれば救急車を呼び、救命措置を行いましょう。
日本はそう言うところでの、善意による行為の後押しをするような教育を日常的に行っている。
救命というのは時間の勝負、適切な処置をどれだけ早くできるかで、命が救われる可能性があることを、災害が多い日本人はよく知っている。
恐らくは、日本人の思いやり精神は、昔から災害に見舞われやすい国にいて、自然とお互いを支え合って生きるということをやってきたからなのかもしれない。
情けは人の為ならず
これは文字通りの意味で「甘やかすのは良くない」という意味で勘違いしている人がおおいが、実は違う。
情けは人の為ならず、巡り巡っていつか自分に帰ってくるもの也。
これが、本当の意味であり、人助けをする人は人に見捨てられることはない。ということである。
まあ、世の中、上記のことが当てはまらない、恩を仇で返すという諺もあるが、そこはおいといて、人の善性を信じるいい言葉である。
さて、話が些かそれたが、思いやり精神の教育といったが、実は法律的にも保護がなされていて、日本ではよほどの過失がない限り、救命措置での失敗で罪に問われることはない。
というか、逆に、救命措置ができる立場で見知らぬふりをしてしまうことの方が、罪に問われることがあったりする法律がある。
保護責任者遺棄罪等
これは保護責任者とついてはいるが、助けられる立場の人のことを指すのであって、書類上の保護者とかは関係ない。
だが、勘違いしないでほしいが、要救助者の判別などは素人で区別などつきにくい。
酔っ払いが路上で寝ているなどとか……。
だから、基本的に倒れている人を無視しても、罪に問われるようなことはない。
まあ、その人が助けの声を上げていて、血まみれだったりするとその限りではないかもしれないが。
簡単に、倒れている人がいれば通報するぐらいがちょうどいいかもしれない。
下手にかかわれば時間を取られるだけではなく、事情聴取や、倒れていた人、酔っぱらいなどの場合はいちゃもんをつけられる可能性があるからだ。
ここら辺は、最近の若者は周りと関わりを持たなくなったと言われそうだが、そう言うトラブルが増えているのもまた事実である。
さて、前置きが随分長くなったが、なぜこんな話をしたのかといえば、山中で血まみれで、死んでいるように見えるけど、鎌とか鉈を持って立っている人を見かけたら、救命するべきか?という話だ。
あ、言い忘れた。
ついでに、その鎌や鉈を持ってこちらに襲い掛かってくる。
……いうまでも、問うまでもないと思うが、助ける義務はないし、無視したところで罪に問われることはないので、一般の方は即座に回れ右をして、逃げることをお勧めする。
どこからどう見ても、素人どころか、警察でもまともに対処できるとは思えない。
というか、誰が見ても、山の妖怪、鬼婆や人食い鬼一本だたら、昨今の都市伝説で言う、無くなった幻の死者の村である。
つか、戻って話しても、誰にも信用してもらえるはずがない。
だが、そんな場所に迷い込んだ4人は、山中の脇道に入り、小屋を見つけ、そこに立つ血まみれの死者のような暴漢を見つけ、瞬く間に鎮圧してしまった。
……本来であれば危険物を所持した相手を鎮圧、というのが妥当なので、正当防衛といった類いが適応されるのだが……。
「おーい。人がいたから連れてきたぞー!!」
「ああ。なんか催しをしているみたいでな。話が通じないから、一旦気絶させた!!」
そんなことを言いながら戻ってくるのは、小屋を調べて、死者のような暴漢を鎮圧した、進と鷹矢。
「それは連れてきたって言わねーからな!! 引きずるって言うからな!! あと、絶対催しじゃないからな!! というか、こっちにくんな!! 連れてくんな!! 捨ててきなさい!!」
そうやって2人と引きずられる物体を見て叫ぶのは也の字。
言っていることは正しいのだが、なにか恐怖というのではなく、又かといった感じである。
「何ってるんだ也の字。怪我もしてるんだぞ? 助けないと。確か法律違反だよな? 鷹矢?」
也の字の当然の反応に、素晴らしい明後日方向の思いやり精神を発揮する進。
「だな。也の字。世の中には保護責任者遺棄罪というのがあってだな……」
鷹矢は大体察してはいるものの、ネタとして面白いので、進の肩を持つことが非常に多い。
天才というより天災で非常に厄介である。
「そんなものが適応されてたまるか!! どっからどう見ても猟奇殺人で、連れて帰ったら俺たちが容疑者にされるわ!!」
「いや、生きてるだろ?」
「そこを不思議に思えよ!! つか分かっててやってるだろ鷹矢!!」
そこで一瞬の空白が生まれる。
「「……」」
鷹矢をにらみつける也の字、そしてそれをどこ吹く風で見つめ返す鷹矢。
「だって二日連続の怪異現象だぜ!! 昨日は新種がいなかったけど、今回のは初めてだぞ!! お前、この発見の凄さがわからんのか!!」
「分かってたまるかーーー!!!」
マッドサイテンティストここに極まれり。
既に科学を超越し、魔術、心霊といった数多の学を修め、融合新技術を個人的に所有している鷹矢にとって、この出会いは運命的であった。
……このバカを止めろ。
と、今後トンデモ技術が更に増えることは明らかであるので、猛反対の声を也の字はあげる。
「というか、てめえ。昨日のお前が連れ帰った妖怪たちが、俺が一旦家に戻った時、部屋中にいた原因知ってるか?」
「いんや」
「お前に改造されそうだったからって言ってるんだよ? 本当に知らないか?」
「ああ、それは言ったぞ。だけど、ドリルは男のロマンだろ? そんな理由で逃げるわけないだろうが」
「逃げるわ!!」
「そっか、メーサー砲の方がよかったか?」
「怪獣王と戦わせる気か!! そもそも改造自体が間違ってることに気が付け!!」
そう言われて、鷹矢が初めて目を見開く。
「お前だって自分を改造していないだろ!! そこら辺の気持ち分かってやれよ!!」
なぜか、妖怪たちを守るために熱く語る自分が不思議に思いつつも、今後、自分の部屋に妖怪が逃げ込んで、お化け屋敷IN也の字の部屋と化さないために絶対必要な話で合った。
「そうか……、そうだったのか」
「ふう、ようやくわかったか」
がっくりと、膝つく鷹矢を見て、説得が成功したと思った也の字だったが……。
「専門の武器を作って見せるぜ!! オプションパーツみたいなのを!! あれだな、戦隊もので、新兵器を作ったぜ的な!!」
「全然分かってねーなお前!!」
天災に言葉を伝えるのは非常に難しいのだ。
だが、也の字こそ、妖怪たちの平穏を守る者として、崇められていることをしらない。
知らぬは当人ばかりなりという奴だ。
哀れな。
「まあ、也の字の言っていることは分からんでもない。でも、ここから出るための情報源でもあるんだ。こちらで確保するのは悪いことではないと思う」
そう言うのは、言い争っている内に、引きずってきた物体を調べている真の字だ。
「うんうん。やっぱり人は助け合わないとな」
「……その気持ちは大事だと思う」
進は勘違いしているのか、真面目に言っているのか判断が付かないのでそう言って言葉を濁す真の字。
「バシッと言っていいんだからな。それは違うってな」
「何が違うんだよ?」
「何事もほどほどってことだよ。バカ進。で、真の字、鷹矢、何かわかりそうか?」
純粋で天然ボケに言葉を伝えるのもこれまた難しい。
恐らく、というか、周りの人間は也の字を仲介役として、この3人と話をしていることが多いので、そういう意味で、バランスを保っているのは也の字なのかもしれない。
「俺的には、心霊系の何かだな。傷や出血量からみて、既に死んでいる状態だ。なんで動いてるかわからない。でも、こちらを見て攻撃をするって意思や動作は見られる。自意識はあるのかはちょっと疑問だが、感情という物は残っているかもな」
流石、元少年兵、こういう生きるか死ぬかという相手を見極める目は非常に優れている。
だが、そういう方向からは、この動く死体の正体はつかめそうもない。
「ふーん。こっちはなんとなくだが、魔術というより、日本の固有の術式が見て取れるな……。解体していいなら、絶対わかると思うぞ?」
「「「やめろ」」」
鷹矢の答えに3人は一斉に答える。
殺人にはきっとならないと確信しているが、文字通り解体、バラバラにされて、元に戻されるのだ。
見る方も、やられる方もトラウマになること間違いない。
「ちぇっ、なら、もっとサンプル、検体、モルモットがいる」
「言い直しても何も変わってないからな。というか悪化してるからな」
鷹矢の言いようにツッコむ也の字をよそに、不意に進が口を挟む。
「だけどさ、なんでわざわざこんなことしてまで催ししてんだろうな。肝試しにしてはやり過ぎじゃね?」
「「「……」」」
こんな催しを街や村で認可してやってるなら大問題だわ。と言いたげだが、とりあえず3人は言わないでおく。
「しかし、何らかの催しではあるだろうな。肝試しではないだろうが」
「あれ、そうなんだ? 夏のイベントかと思ってたわ」
進にとって、いや、4人にとって目的地につかないだけで、実害もないから、特に問題になっていないのが、この状況との4人の空気の乖離の原因である。
「ここまでのことをやるなら、大々的に告知もあるだろう。でも俺たちの耳には入ってなかった」
「そっか。秘密で練習しているって感じか」
「……そうだな。秘密ってのは間違ってないと思う」
通常であれば恐怖のズンドコなのだが、対応できる人であれば普通に会話できて当然である。
……この状況事態を普通と言っていいのかは甚だ疑問ではあるが。
「とりあえず、俺たちが今後取るべきは行動は、もっとモルモットの採集、事情を知ってる人を探すこと、あとは外部へ連絡して、しっていそうな奴らを呼ぶだな」
「あとは、拠点の確保は重要だ」
「拠点は車でいいだろう?」
「お前の対応が追い付かない可能性もあるしな」
「おほっ、それはそれで楽しみなんだが。ま、真の字がいうなら配置しておいていいだろうな」
はてさて、こういう事情で、ホラーでは死亡フラグの別行動が始まるのである。
「お前等、こういう状況で別行動って死亡フラグだぞ?」
やはりというか、そう言うお約束を熟知している也の字はそう言うが、ほかの3人はやる気満々である。
「別に死んでないしいいだろう? この人も困ってるし、さっさと助けとか、解決策を探すのが人として当然だぞ?」
そんな的外れな正論を言って、事情を知っている人を探そうとしているのは、進。
因みにこの人というのは、簀巻きにされた動く死体さんである。すでに車の後ろに放り込まれいて、散々に鷹矢に調べられて、ぐったりしている。
……死体がぐったりって間違ってる表現な気がするが、気にしないでほしい。
「そうそう、也の字。これは進の言う通り、人助け!! モルモ……病人をほっとくとか、科学……医学者として、放っておけない!!」
「お前はもう黙っとけ」
也の字はそう言って、本能ダダ漏れの鷹矢の嬉しそうな顔をみてうんざりする。
……正直に言って、也の字は、ホラーにおける死亡フラグを、今は信じていない。
きっと、相手にとって死亡フラグだと思えるのだ。
だが、残念なことに、ホラーの元にかかわらずにここから脱出しようとすれば、きっとこの山を消し飛ばすようなことになりかねないから、仕方なく、この2人の出立を認めた。
無理に引き留めても無駄で、逆に連絡がつかなくなれば、それこそ、この山の崩壊に大前進するからだ。
なので、也の字はやむなく、被害の少ない方を選んだ。
猛獣を怒らせて、手に負えないようにするより、手に負える状態を保っておこうということだ。
「拠点はしっかり確保しておくから、2人は安心して行って来い」
「無理はするなよ。自重しろよ? 特に鷹矢。いいな? 俺が連絡を取るから、牛歩で向かえ!!」
そして残るのは、真の字と也の字。
4人の中で一番戦闘力の高い真の字が残るのは、傍から見れば変に見えるが、実のところ、解決手段を見出すのに物理的しか存在しないため、出て行っても仕方ないのだ。
知的解決を鷹矢と進にまかせて、車の保護に努める。
なにより、ここで一番の決め手は法律上、運転できるのが真の字しかいないところである。
……本来であれば緊急措置関連で、大丈夫だろうが、本人たちはいたって普通に、一般人として、法律を守っているのである。
……普通の人としては、当然の判断?である。
そして、残るもう1人の也の字は、外部連絡役。
最悪、車から離れて、外へ救援を呼びに行くのだが、也の字的には、被害を被る前にさっさと脱出してやろうという魂胆だ。
まあ、彼の選択も一般人らしいと言えば、一般人らしく自分の保身を考える普通の人である。
それが、ホラーからの被害を考慮して脱出しようとしてるではなく、身内からの被害が怖くて逃げるのが違うのだが。
そして、4人が集まり、各々拳を突き出し、お互いに拳をぶつけ合う。
「うし、いってくる」
「一度行ってみたかったセリフがあるんだ。必ず帰ってくる」
「……鷹矢、それは死亡フラグだからな。というか、お前場合、悲壮感も絶望感もないから、逆フラグの可能性がバンバンするわ!!」
「……とりあえず、進、鷹矢、無理はするな」
仲の良い親友同士、お約束の挨拶という物だ。
いつもと変わらない軽口をたたいて、分かれる。
どうせ、明日になったまた会うさ。そんな気持ちで。
普通の友達同士の一面。
……こんな夜の帳が落ちた、真っ暗な森でやることではないと、はっきり言っておこう。
こうして、普通という凶器をぶら下げた、4人が狂気の村へ別々のアプローチを開始することなる。
この先にあるのは、喜劇か、喜劇か、喜劇か。
普通の人に、悲劇や惨劇はあり得ない。
被ってしまったが最後、それは被害者となり、普通ではないのだから。
誰もが望む、そう、英雄であろうが、最前線の兵士であろうが、天才であろうが、由緒ある血筋だろうが、異能があろうが、ちょっと不幸な人であろうが、誰もが望む、些細な願い。
多くは望まない。ただ、普通で……。
そんな願いを体現する4人は、わざわざ怪異のど真ん中へと足を突っ込む。
理由は、迷ったから道を聞きたい、怪我をしている人がいるから助けたい。
……理由は至極普通だと言っておこう。
彼らにとっては、退屈な日々の一時のスパイス。
この怪異にどのような、悲しみや、思いがあろうが、それに埋没することはない。
世の中そんなに甘くない。
いつまでたっても、一般人は被害者で受け身だと思うのが間違いなのである。
怪異という力に人々を脅かすのならば、人はそれに立ち向かう。
だって、それが人なのだから。
……あ、この4人の困難に立ち向かうアプローチは徹底的に見本にならないので、真似しないでください。
ということで、正しい困難に立ち向かう人たちを見よう。
丁度、同じぐらいにこの山に迷いこんだというか、乗り込んだ人物が2人いる。
「がぁぁぁぁああぁ!!」
そんな断末魔が聞こえ、動く死体のような人はそのまま灰となる。
その奥に立つのは、銀髪の長く綺麗な髪を持つ、セーラー服姿の加茂式代である。
後ろには、もちろん百乃晴香もついていて、万全とはいえないが、陰陽師の名家、加茂当主と、その当主が自ら抜擢した弟子のコンビで、この怪異に挑んでいた。
並の心霊、妖怪では相手にならない。
「ふん。わらわらと、これで幾つだっけ?」
「えーと、これで93ですね。家屋は見た限り84棟、校舎が3棟でした」
「……村1つって規模じゃないわね。特に校舎3つ。名前違ったわよね?」
「はい。全部違いました」
「……クソ。ここまでの大怪異に出くわすなんて……。ちょっとぶっ飛ばして終わりかと思えば、簡単にいきそうにないわね」
式代は当初、さほど大きくない怪異だと思っていて、小一時間もすれば元凶を叩けると思っていたのだ。
だが、その予想は大きく外れて、この怪異はいくつもの村や霊を飲み込んで肥大化した、一種の異界になっていた。
道を歩いているのに別の場所に飛ばされ、元凶にたどり着けそうになく、どんどん体力を損耗していた。
「一旦戻りましょう。このレベルの怪異は力ずくで脱出は困難よ。私1人なら、この異界に穴を開けて出ることは可能でしょうけど、最悪、時間もずれて浦島太郎よ。残された百乃たちを助けに戻れそうにないから却下。まずは、運転手の鹿野と合流しましょう。結界が残っている間は、座標が固定されているけど、それ以降は下手に分散すると合流できそうないわ」
「わかりました。でも、先輩。なんでこんな怪異と出くわしたんでしょうね?」
術の位置をたどって帰る道すがら、百乃は聞いてみた。
「さあね。詳しくは分からないけど、恐らくはどこかに構えて、私たちのように道に迷わせ取り込むつもりだったんでしょう。噂型の怪異はこれが基本だからね。こうやって力を蓄えるのよ」
「ああ、そう言えば。今までに出ている表の怪談って」
「そう。今まで解決した怪異を元に、話を流布しているの。それに乗じて、結果の無い不思議な怪談が紛れるでしょう?」
「そういえば、オチの無い怪談ってありますね」
「それが、当たりの怪談。表向きにはオチのある怪談は作り話って風潮だけど、解決している怪談で。オチの無い怪談は現在進行している怪談なのよね」
皆も、怪談話を聞いて不思議に思うことがあるだろう。
物語の主人公が亡くなったなどと言う怪談の終わり。
これは、どうやってだれが記録にとったのか?
これが、真実である。
不可思議な死に方をしている事件を回された専門家がそれを解決して、成果として怪談話オチのある怪談話をだし、それを餌に、結果が不明な、怪談を探し出すのだ。
「なるほど。結果がないのは、今進行しているから続きが書けないってことですか」
「そういうこと。最後には怪異に侵食されておかしくなったり、死んだりすれば、すぐに私たちが分かるからね。ま、作り話ってのも多々あるけど。デスクワークのメンバーは大変よ? 掲示板に書き込みと批判、そして私たちが関与していない怪談の捜索、特定。下手すると、最近はネット経由で怪異が飛んでくるしね」
「うわぁ」
そう、昨今怪異も近代化していた、携帯電話だとか、テレビ、果てはパソコンの中専門の怪異も存在している。
グローバル化の波は怪異も同じというところか。
「ま、それより大変なのは、パソコンがフリーズしたり、データがボンしたりよね。ここら辺はアンダーグラウンドみたいなもんだから、ウィルスやら、怪異の呪いが原因。今まで成果がパー。そうそうないけど、一度起これば、デスクワーク組は阿鼻叫喚よ。半年前のはウィルスと怪異のダブルコンボで、パソコンが14台、保存用の外付けHDが10台死んで、悲惨だったわ」
「……それはそうでしょう」
この時代、パソコンによる仕事は普通である。
それが全滅したとなると、被害はすさまじいものがあり、当事者たちの辛さは想像を絶するであろう。
「それから比べると、今はまだマシかもね」
「……私、現場でがんばりますから、デスクワークには飛ばさないでください!!」
「ま、とりあえず。合流しましょう。話はそれからよ」
「はい」
そうして、この異界と化した山には、多数の勢力が混在していることなる。
1つは、建前、人命救助組。
1つは、車に居残り、連絡組。
1つは、この怪異に挑む組。
1つは、この怪異の元凶。
彼ら、彼女らはどう交錯し、この怪異へ真相、元凶へとたどり着くのだろうか?
まだまだ、夜は始まったばかり……。
はい、本日はこれで最後でございます。
一応、様子をみながら、面白いって意見があれば、続きを投稿していこうと思っております。
それでも、ほかの執筆もありますので、一週間に一度できればいいかなーと思っております。
では、次回があればお会いしましょう。