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俺たちは自由にやる!!  作者: 雪だるま
夏は海と花火とお祭りと怪談

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3/13

第三夜:井の中の蛙大海を知らず

井の中の蛙大海を知らず




「井の中の蛙大海を知らず」という諺がある。


これは、知識、見聞が狭いことのたとえ。また、それにとらわれて広い世界があることに気づかず、得意になっている人のこと。

まあピンと来ない人には、文のそのままをイメージしてみるといい。

井戸の中の蛙にとっては、井戸の中での世界がすべてであり、大海、つまり広い海原を知らないということだ。

人にとって、いや、すべてのモノにとって世界は決して狭いものではないし、すべてを知ることなどできはしない。

自分が何もかも知っている、できる、というのは驕りだという話で、そういう人を指す諺、戒めである。



そう、世界は広く深く、果てなどない。



人が知っている世界など、ごく一部である。

しかし、世の中は広いもので、一般人が知っている世界と、一般という枠から離れている人たちの世界という、これまた細かい世界が存在していて変わっている。

いや、見方や立場が変わって世界が違って見えるのとは少し違っていて、文字通り別の世界である。


心霊現象


そう、いまだに科学で解明できず、一般には未知の領域と思われている分野だ。

だが、この科学の全盛期のご時世でなぜ幽霊などというものが未だ一般認識にあるのか?

ある科学者はこういう「思い込みによる幻覚、幻聴などが原因だ」と。

確かに、そういう原因もありうる。

しかし、それだけでは解明しきれないのがこの幽霊、心霊現象のたぐいである。

だからこそ、人は惹かれるのだろう。

未だ、届くことなない、明かされることがない謎、いまだ見ぬ世界を。



そんな、一般には知られない心霊という世界を渡り歩く人々もまた存在する。

テレビに出ている霊能者とは違う、心霊と大真面目に戦う人々である。

表向き、心霊現象というのは宗教による御払いをして終わるものであるが、実際は血なまぐさいことがままある。


「ふぅん、なるほど……」


そんな声を出す、この少女も、そんな血なまぐさい心霊現象を生業とする。

彼女の名前は、賀茂かも 式代しきよ

余り知られてはいないが、かの伝説の陰陽師、安倍晴明の師だったといわれる、世襲陰陽家の名門である。


陰陽師

現代では、いろいろなメディアの影響で、悪霊退治の霊能者という見方が強い。

しかし、実際は古代日本の律令制下において中務省の陰陽寮に属した官職の1つ。

陰陽五行思想に基づいた陰陽道によって占筮、及び地相などを職掌とする方技。

技術系の官人、技官として配置された者。

つまるところ、今でいう建築や技術管理の公務員職業なのである。

後に、祭事、占術、呪術などを司るようになったために陰陽寮に属する者全てを指すようになり、そういう心霊系の専門と相成ったわけだ。


で、こちらの加茂氏も、ここ近代では心霊系に専門によりになっている。

昔は祈祷などの祭事で日本という国で出番もあったが、最近の近代化により科学技術の発達で、科学的に証明できないことを表向きにやっていくのは、少々つらくなってきている。

それも当然。

政府の政策が「陰陽師の占いの結果、よいと出たからこの政策を打ち出しました」なんて言えば、大批判間違いなしである。

だが、昔から日本を支えてきた加茂氏。

表向きではそうそう出ないが、知っている人はちゃんと利用している。

無論、一般人から、政財界の大物まで。

信用するにたる、ちゃんとした結果を残してきた実績あってのことである。


その最たる例が、彼女が持っている報告書の内容である。


「学校の怪異は事実で、学校全体が異界化、さらに662人の犠牲者がいたと……」


どこかの4人の少年が不幸にも巻き込まれたが、幸いにも、その事件に派遣していた彼女が無事に生き残れたことで、この報告がなされていた。


そう、その最たる例とは、物理的な被害を及ぼす心霊現象への対処である。

現代科学の中、解明できない不可思議な事件が存在する。

だが、それらは表向きには公表されない。

死亡事件がなぜ公表されないのか不思議だと思うが、実際、現代日本での自殺者だけでも年間3万人以上。

ほかのを含めたら、公表なんてすれば資料が一杯になるだろう。

ま、そんな理由なだけで公表しないわけでもない。

そんな事件があったと知れれば、その場所、街、あるいは県のマイナス、大きな損失となりうるし、事件の近場に住んでいる人々は不安になり、治安の低下にもつながりかねない。

なので、そういったもろもろな理由から、特に、心霊がかかわっているような事件は公表されることはない。

だって、警察では解決不可能なのだから、陰陽師に事件解決を委託しましたなんて知れたら、それこそ国家を揺るがす問題になりかねない。


ということで、そういう血なまぐさい事件を請け負って解決するのが、もっぱら近代の陰陽師の役割である。

昨夜の事件も、依頼があって、そろそろ一人前という人材を送ったのだが、その結果は、どうにも不可解で、不思議過ぎた報告が上がったので、直接、現代の加茂の名を持つ彼女まで報告が行ったのである。

まあ、彼女を派遣したのが、式代だったのだから当然といえば当然である。

昨今、実働できる人材は枯渇気味で、式代本人も仕事を終わらせてきた直後である。

才能の有無が大きくものをいうので、人材募集しても安定した人材が補充できないのが問題なのだが。

訓練をすれば必ず身につくものでもないし、式代自身も、こんな血なまぐさい仕事は勘弁願いたかったが、加茂の血筋で自分が才能があったので押し付けられたという感じだ。

それ相応の権力や財力もあったりはするが、あんまり割りにあっているとは思っていないらしい。

死と隣り合わせ、知り合いは戦死する環境なら不満と思うのは当然だとは思うが。


「でも、その後、屍人形になった死者は蘇生して、呼び出された妖は大人しく引き下がって、呼び出された八岐大蛇との交戦の結果、学舎が崩壊。犯人を連行してきたと……」


しかし、自分がやらなければ、無駄に身内に死人が出るのは分かっているので、ちゃんと今の立場を受け入れ、今までせっせと働いてきたのだが、今回の報告は今までにない、というか明後日方向の内容であった。

余りにも突飛な内容すぎて、声を出して読み上げていたが、余りにも変なので、目頭をもんでから、もう一度報告書に目を通すが、内容は変わっていない。


「……これを信じろって? この4人の一般人たちが、この無茶苦茶を成し遂げたって?」


まだ、この事態を起こしたのが、式代が派遣した彼女であればよかった、百歩譲って、捕まった呪術者の所業であるなら……信じられない。

そういうレベルの内容である。

だが、彼女は式代が自らその才能を認め、説得し、なんとか引き込んだ有能な人材であるから、真っ向から否定できない。

とりあえず、まず彼女が嘘をついていないか、確認することにした式代は報告書から顔を上げて、目の前に座る彼女を見つめて口を開く。


「もう一度聞くわ。百乃ももの 晴香はるかさん。これは事実かしら?」


目の前には自分より、陰陽師らしい、黒髪に巫女服が似合う美少女が座っている。

式代はどちらかというと、子供体型で、昔からの政財界のかかわりで、血筋は外国とのクォーターで銀髪だったりする。

場違いじゃないか? と式代は思っているが、周りは式代が代表で文句を言っていないのでどうにもならない。

全く、私よりも百乃さんを当主にしたほうが、絵になりそうなのに……。

そんなことを考えていたが、百乃は特に嘘をついているような、おどおどした様子もなく、はっきりとすぐに返事をする。


「はい。事実です。加茂先輩。まあ、私も夢かと思いましたけど、実際大蛇の首は回収されたはずですけど?」

「……そうなのよ。でも、こんな明後日の報告……」


そう、こんな意味不明の悪戯、やる気なしの報告書が当主の加茂式代まで上がってきたのは、八岐大蛇の首が回収されたからである。

百乃はあの4人と別れたあと、茫然としている呪術者を一応捕縛して、関係各所に連絡をして、崩壊した学舎の後始末をしていたのだが、そこに千頭と名乗ってはいないが、そう呼ばれた小さい女の子が変じた、八岐大蛇の首が1本どころか2本落ちていた。

その首はもちろん、式代も確認した。

すでに本体から離れ、活動を停止しているのにも関わらず、今までにないほどの妖力を蓄え、耐性のない一般人が近づけば悪影響がでるだろう。

つまり、どっからどう見ても、本物に近いものであると確認しているのだ。

しかし、その過程が意味不明。

事件を解決に行った百乃がここまでの戦果を挙げたといえばまだ納得はできたが、百乃本人はすぐに銃撃により、戦闘不能に追い込まれ、その巻き込まれたと思しき一般人の少年4人が、首謀者である呪術者をそっちのけで、呼び出された八岐大蛇を倒し、死者をよみがえらせ、学舎を破壊し、百乃の重傷を一瞬で直したことになる。


どこにこんな報告を信じるやつがいるのか、教えてほしいと式代は心底思っていた。

だが、とりあえず、百乃は見た限り正常で、何かしらの思考、記憶の改変などの痕跡は見られない。


「……よし。いいわ。まずその4人を確保しましょう。話をそっちからも聞いて、百乃の言ったとおりの技能があるか確認すればいいわ」


式代は考えるのはやめた。

いろいろ百乃から聞いた現象を起こす方法を考えたが、どれも違ったアプローチなので、数人で出来る技ではない。少なく見積もっても数百人のその道のプロがいても実現可能かも怪しいレベルである。

ということで、当事者の4人から事情を聴けばいいという答えに達した。


「え、加茂先輩自らですか?」

「そうよ。本当に八岐大蛇を退治できて、死者を復活、異界の崩壊までできる実力があれば、ひとつ機嫌を損ねれば、百乃なんてあっという間に死ぬわよ?」

「あ、それはそうなんですけど……」

「どうかしたの? 何か問題があるかしら?」


なぜか百乃はその事実の話なのに疑問を覚えた。

だが、なぜ疑問を覚えたのかよくわからない。

しかし、式代の懸念は何か間違っている気がするのだ……。


「なんか、普通の学生だったので……、そういうイメージ結びつかなったので違和感があったのだと思います」

「ああ、そういうこと。……でも、百乃の言う通りのことができて、普通なんておかしくないかしら?」

「そう、なんですけど……」


やっぱり何かの認識が違うのだ。

いや、あの4人を直接見ればわかるのだが、これを言葉で表すのは非常に難しい。

普通。

それが一番しっくりくるのだ。

だが、どこが普通なのかといわれると、百乃は答えようがない。

なんというか、本当に普通に遊んでいる学生たちにしか見えなかったのだ。

あの怪異の真っただ中で。

……うん。何を考えているのか百乃もわからなくなってきたので、すっぱり考えるのをやめる。


「まあ、一緒に行くのには問題はないわけね?」

「あ、はい。心強いです」

「じゃ、もう車の準備もできてるし、行くわよ」

「え? もうですか?」

「そうよ。この報告が事実なら、この4人の脅威度は八岐大蛇より上よ? 真っ先に片づけなくてはいけない案件よ。幸い、有名人が一人混ざっていたから、住所を調べるのは苦労しなかったわ。というか、こんなにあっさり見つかって気持ち悪いぐらいよ」


そう、あの4人の身元はすでに割れている。

百乃や呪術者に馬鹿正直に名乗っていたせいなのだが。


「天才の飛翔ね。たぶん彼がいろいろやっているんでしょう。偶然、心霊に近づいたと思うのが妥当かしら?」

「そう、でしょうか?」


式代は今知りうる情報で、百乃が見聞きしたことを実現可能なのは、この4人の中で、飛翔鷹矢だとあたりをつけていた。

ほかの3人は本当に平凡、普通といった感じの、家庭環境も絵にかいたような普通なのだ。

ある意味彼女の推察は外れていない。

確かに、技術の活用、応用、提供は主に鷹矢である。

しかし、鷹矢が主導ではない。

いや、主導でもあるし、サポートでもある。

そもそも誰か首謀者なのかというのが間違いで、あの4人はただ遊びに来ただけなのだから。

そういう意味で首謀者というのならば、あの場に遊びに来た4人全員が首謀者というべきか?


まあ、こうして、現実の4人と、式代の中の4人はどんどんと乖離してくる。

いや、こう考えるのが普通なのだが。

そして、そうこう考えているうちに、飛翔家の自宅へと車が到着する。

幸い、車で小一時間という距離だった。

もっと遠ければ、飛行機をチャーターするしかなかったのだが、そういう目立つことはあまりしたくないので、助かったと式代は内心思っていた。

とりあえず、式代たちから離れるように指示して、普通の一軒家の前に立つのは式代と百乃だけになる。


みーん、みーん……。


夏真っ盛り、只今の気温31度、コンクリートの照り返しが非常につらい。

肌とかを気にする女性、女学生であるならなおのことである。


「全く、あっついわね……」

「夏ですから。で、私が主導で行ったほうがいいでしょうか?」

「そうね。私が話しても、現場にいなかったから警戒される可能性が高いわ。まずは百乃に任せるわ」

「はい。わかりました」


そして百乃が鷹矢の家のインターホンのボタンを押す。


ピンポーン……。


すると、少しして、インターホンから若い女性の声が返ってくる。


『はい、お待たせいたしまた。えーと、どちら様でしょうか?』

「あ、すいません。私、昨日、鷹矢さんにお世話になった者で、百乃と申します。お礼で伺わせていただきました。鷹矢さんは御在宅でしょうか?」

『え? 兄がお礼? その、ご迷惑をかけたとかではなくて?』


鷹矢のことを兄と答えたことから、おそらくインターホンにでたのは、鷹矢の妹である燕だろう。

鷹矢の両親は天才夫婦と言われていて、各国を飛び回っていて、そうそう自宅にいない。

というか、その世界から天才と呼ばれる夫婦が、言っては悪いが、こんな地方に住んでいるのか式代は不思議であった。


「? はい、昨日、ちょっと助けていただいたので。で、鷹矢さんは御在宅でしょうか?」


百乃は変な返しにも関わらず、鷹矢のことをとりあえず再び問いただす。


『あ、ごめんなさい。今、兄は友人たちと出かけていまして……』

「そうですか、ご連絡先とか教えていただけませんでしょうか? せめてお礼を言いたいので」

『はい、ちょっと待ってくださいね』


そういって、燕はインターホンから離れていく。

おそらくは、携帯電話を取りに行ったのだろう。


「よかった、いないにしても、連絡は取れそうですね」

「……それはいいけど。有名人の子供にしては不用心過ぎないかしら?」


式代も現状の推移については不満はない。

心霊と関わり合いがない鷹矢が翌日に行動に出ているとは思わなかったが、ちゃんと連絡先も教えてもらえそうなので、電波からでも彼らの位置を割り出せばいい。

しかし、有名人とか関係なく、昨今、詐欺が多い世の中。

こんなにあっさり初対面の人間に電話番号など教えていいのか?

そんな一般的な疑問が式代の中によぎっている。


「そうですか? 普通に訪ねてきたんですし、私達は学生服です。スーツってわけでもないですよ?」

「ああ、そのせいか。いや、助かったのね。変なところで学生って身分が役に立ったわ」


百乃の言う通り、2人とも通っている学校の制服なのだ。

ブレザーとかではなく、昔から定番のセーラー服。

なぜこの夏休みに学生服で動いているのかというと、学生である間は、そっちの方面からのフォローが楽なので、活動するときは学生服を推奨しているのだ。

わざわざ個人の所有している服を強化するのは効率が悪いし、学校が指定している服であれば、容易に強化できるし、替えが効く。

無論、学生服からの個人の捜索にも役に立つ。

大人になると、さすがに学生服を着せるというわけにもいかないので、スーツを支給している。

まあ、これは加茂氏のやり方であって、弟子の安部晴明が作り上げた土御門氏なんかは、わざわざ仕事の時はあのクソ動きにくい時代錯誤の、当時、陰陽師が最盛期の服装を着ていたりする。


「お待たせしましたー」


そんな会話をしているうちに、玄関から燕と思しき少女がでてくる。

このクソ暑い夏の最中、わざわざ、玄関から出てきて教えてくれるとは、なんと礼儀正しく、純粋な少女か。と式代は心底思った。自分なら、門前払いだと思うから。


「あ、申し遅れました。私、飛翔燕と申します。飛翔鷹矢の妹です」

「あ、これはご丁寧に。私、百乃晴香といいます」

「どうも。私は加茂式代っていうの。よろしくね」

「はい、よろしくお願いします。百乃先輩、加茂先輩。で、これが兄の電話番号と、メールアドレスです」


簡単な自己紹介が終わったあと、すぐに燕は用意してきた連絡先を書いた紙を渡す。


「ありがとうございます。で、鷹矢さんは御在宅ではないということですが、どこに行ったとかは?」

「ああ、それもお伝えしようかと思って……これです」


燕がもう一つ持っていたチラシを、式代たちに見せる。


「えーと、海賊の宝を探し出そう? 絶海の孤島に伝わる海賊伝説の真相を暴く人たちを募集……」

「なにこの、苦し紛れの町おこしのネタ?」

「……どこも必死なんですよ」

「あはは、兄と友人たちはこの手の話が大好きで、これに向かったんですよ。出て行ってそこまで時間は経っていませんから、同じ山越えのルートを通れば追いつくかもしれません」

「なるほど、ありがとうございます」

「ええ、ありがとう。私達できれば鷹矢さんに会って話がしたいから、助かるわ。今から追いかけてみる」

「はい。暑いですからお気をつけて」


式代はお礼を言いつつ、すぐに携帯で車を呼び戻し、それに乗り込み、鷹矢たちを追う。

そのあわただしい姿を、最後まで見届けて、燕は自宅へと戻る。


「ご苦労なことじゃ。このクソ暑い中、あんな小物どもにわざわざ行先まで教えてやることはないじゃろうに……」


燕しかしないはずの家からそんな声が返ってくる。

どこかで聞いたことのある鈴のような幼い少女の声だ。


「いいんだよ。なぜかあの兄さんの携帯に連絡が付かないんだから、何かに巻き込まれたんだと思う」

「……燕も大概じゃな。わざと教えたのか」

「うん。あの人たち、加茂氏の関係者というか、あの銀髪のちびっこ当主だよ。陰陽師。どうせ昨日の騒動での事情を聴きたいんだと思う。突っぱねても勝手に調べるだろうし、ついでに兄さんたちが起こす被害を押さえるのに役に立てばなーって思っただけ」

「鬼か」

「八岐大蛇の千頭に言われたくないよ。で、それはいいとしていつまで家にいるの?」


そう、そこにいたのは、昨日散々あの4人と暴れた千頭である。

無論、巨大な八首の龍ではなく、おかっぱの幼子姿だ。


「撫子が謝るまでじゃ!! わしを散々犯人扱いしおってからに!!」

「はぁ、元々撫子さんのおやつを食べてたって前科があったからでしょう?」


とまあ、千頭の誤解は進たちが帰ってきてから解かれたのだが、普段の行いが悪いからと釘を刺されて、ふてくされて燕のところにプチ家出中なのである。


「……ふんっ。わしは悪くないわ」

「だめだこりゃ。まあ、いいけどね。あ、兄さんの部屋には近寄らないほうがいいよ。自動迎撃装置で消し炭どころか電子分解されるから」

「こわっ!? というか、なんで機械が、幽霊や妖怪とかに反応すんじゃ!? 相変わらず不思議でたまらんわ!!」

「えー、そこから? まあ、説明しろっていうならするけど、千頭にわかるように、丁寧にするなら30時間はいるかな。休憩も考えて、4日ぐらい?」

「すまん、そんな説明はいらん」



そう、世界は広い。

自分が最も誰よりも知っているなんていのは、うぬぼれも甚だしい。

自分たちが主導を握っているように見えて、実際は誰かの掌の上だったりする。



「……あの、先輩」

「百乃も感じたってとこは気のせいではないわね。ちょっと止めて頂戴」


そういわれて運転手は何もない山中で車を停車する。


「……これって」

「……ちっ、こんな大怪異に出くわすなんてついてないわね。……いや、百乃と一緒なだけましか」


式代はそういって、四縦五横に切る所作をし……。


「青龍、白虎、朱雀、玄武、空陳、南寿、北斗、三体、玉女」


そう身固の九字を唱え、車を中心に淡い光があたりを包む。


「これで、拠点としてこの場所は機能するわ。あなたはここから動かないで、私たちが打って出るから、応援要請をお願い」

「かしこまりました。ご武運を」


運転手の言葉を背中に受けながら、式代は何もない、草木の生い茂った場所へ歩み寄り、いつの間にか持っていた刀を抜き放ち……。


「臨兵闘者皆陣列在前。……開門せよ」


バキンッ。


そんな音がどこからかして、草木が生い茂った場所にはいつの間にか、脇道が出現していた。


「堅固の九字に、攻撃の展開の早九字護身法ですか。本気ですね?」

「ええ。クソ忙しいのに、邪魔してくれたお礼よ。さっさと片づけるわ。何しろ、もうすぐ日が落ちるし、そうなれば厄介よ」


式代はそういって、刀をトンと抜き身のまま、肩に当てて、脇道へと踏み入る。

日はまだかろうじて昇っているが、式代の希望どおり日が昇っている間に終わらせるのは厳しいだろう……。



ところで、その時の4人はというと……。



ゴッーーー!!




「ZZZ……」

「……」

「サム……い。だから、北極は、やめろって……」

「バカ野郎……。ロマン、が、あるだろうに……ぐー」



冷房がガンガン効いた車内で爆睡していた。






はいはい、三度やっほー。

連続投稿ですぜ。

いい加減後書きのネタが無くなってきた。

まあ、それでもここの三夜は少し違う人物主体だったけど、彼女たちの考えと、4人の違いが大きすぎてそこらへんで面白かったのではないでしょうか?


物の見方といいますか、ある人にとっては大事でも、ある人にとっては小事でもないという話。


では、また次回。

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