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第十六話 魔方陣と召喚

 莉亜との妙な契約を打ち消すため、俺は迷宮にやってきていた。

 何匹目になるかもわからない魔法で生み出された造形生物モンスターを相手に、俺のパイプ椅子が炸裂し、派手なエフェクト共に消えていく。そして、残されたコイン。


「これで全部、集まったわね!」


 莉亜はようやくドロップしたコインを手にご満悦。

 何もしていないのに、アイテムだけは真っ先に拾いに行く。

 本当に役に立たないヤツだな。

 戦力として考えてなかったから別に良いが、何かさせるべきか。

 『B1』はそれほど広くもなく、すぐに次の階層への入り口が見つかった。

 しかし、そこは立ちはだかった扉には、がっちりと封印が施してあり、指定の条件をクリアしないと先に進めない仕組みになっている。


「これよこれ!」


 莉亜は得意げにコインを取り出すが、何の反応もない。おまけにコインを入れる場所もなくて、呆然と立ち尽くしてしまう。

 改めて扉を見ると、『守護者なき者、通行を禁ず』と書かれていた。

 間違いなく、これが条件だろう。


「守護者? なんだそれは?」

「知らないわよ。そんなの……」


 自分の感が外れたことが悔しいのか、莉亜は怒り気味。

 辺りを見回すと、『召喚の間』と書かれた部屋があった。怪しすぎる。

 俺たちはその部屋に足を踏み入れた。

 部屋の中は、祭壇のようになっており、教室程度の広さ。

 コイン入れる穴の開いた台があり、その向かいには、ドラゴンの顔を象った石の彫刻が立っていた。

 とりあえず、コインを一枚入れてみるが、反応しない。二枚、三枚――と入れ続け、五枚目にして、ようやく台に『召喚』と書かれたボタンが出現する。

 戸惑いながら、ボタンを押した瞬間、ゴロゴロと大きな音を立て、ドラゴンの顔が時計回りに動き出す。

 ぐるっと一回転すると、ドラゴンの口がパカッと開き、中から金色に光る卵が吐き出された。

 金の卵が地面を少し転がると、宙に浮かび、上空でパリンと割れる。

 眩い光を放ちながら、デンデケデンデンデーン――という音と共に、浮かび上がった金色に光る『スーパーレア』の文字。

 卵の中から出てきたのは、赤い炎を纏った精霊のような姿のモンスターで、中型犬くらいの大きさだ。莉亜をそれを見て、目を丸くして驚く。


「凄いじゃない! スーパーレアよ!」


 どうやら、この赤い精霊のようヤツは、スーパーレアのようだ。


「ちょっと待て、スーパーレアってなんだ?」

「これは自分の身を守ってくれる英雄ヒーローを召喚できる魔方陣なのよ」


 おそらくこの英雄が扉の封印を解除するための、守護者と言うヤツだろう。


「えと、一番いいレアリティが星五。でも、星四と星五では、スーパーレアと表示されるらしいわ」


 さっきからやたら詳しいなと思っていたら、莉亜はドラゴンの彫刻の横にある説明を読みながら答えていた。

 莉亜にしてはマトモな判断だ。

 いや、『サルでもわかる奴隷の作り方と扱い方』を真剣に読んでいたし、意外とマメな性格なのかもしれない。


「なんで、星四と星五が同じスーパーレアなんだ?」

「さあ、知らないけど、卵から出てくるとそう表示されるのよ」

「ほう。星三だと、なんて出るんだ?」

「レアよ。ちなみに星二以下は出ないようになっているらしいわ」


 だったら星一から、星三までで良さそうな気もする。

 よくわからんがそういうものなのだろう。

 莉亜が俺の引いた英雄? を眺めて驚いた顔を見せた。


「アンタが引いたのは星五――って、最高レアじゃない!」


 適当にやったのに嬉しい誤算だ。

 英雄と言うくらいだし、戦闘で役に立つのだろう。

 それも最高レアとくれば、かなり使えるはずだ。


「つまり、お前はますます役立たずになったようだな」

「な! なによそれ! ――わ、私もやってみるわ!」


 莉亜も集めたコインをくぼみに入れる。

 ドラゴンの頭が時計回りに動き、卵を吐き出す。――少し小さい白い卵だ。

 なんだ、珍しいのか。

 チラリと莉亜を見ると、期待に満ちた顔で眼を輝かせている。

 再び響く、デンデケデンデンデーン――という音。

 卵の中から、しょぼい亀が出てきた。

 そして、嫌味っぽく浮かび上がる銀色の『レア!』という文字。


「なるほど、これは星三の英雄はずれだな」


 星三未満は出ないのに、星三でレアと出るのが不思議だ。

 制作者はレアの意味、分かっているのか。どう考えても、星三でコモン、星四でレア、星五でスーパーレアと表示させるべきだろう。

 横では、悔しげに莉亜が地団駄を踏んでいる。


「ムキィーっ! もう一回、コインを集めに行くわよ!」


 その後、苦労してコインを集め、莉亜は十回ほど召喚したが、星四以下の英雄しかでない。非常に不満げで、目がやばい。

 戦闘なんて全部、俺に押しつけているんだから、英雄なんてどうでもいいはずなのに、マメな性格だからか、星五じゃないと気に入らないのだろう。

 とにかく、もう十分だ。というより、コインを集めるのが面倒だ。

 莉亜が駄々をこねないように、時間がないという理由にして、やめさせようとする。すると、なぜか莉亜はポケットから財布を取り出した。


「なら、ここにお金を入れるところがあるわ!」


 莉亜が指さした所には『一回五百円』と書かれてあった。

 コインを集めるのが面倒な生徒のための救済処置か。

 だがこれは……罠だ。

 ランダム排出だろうし、ガチャと同じシステム。

 大丈夫かこの学校は、魔方陣という名のガチャで搾取する気だ。

 さすがにこれに手を出してはいけない。


「やめておけ。それは重課金への第一歩だ」

「一回だけ! 本当に一回だけだから――!」


 必死に頼んでくるので、仕方なく一回やらせると『レア!』の文字がむなしく表示された。莉亜がプルプルと震えだし、またお金を取り出そうとする。

 きっとコイツはギャンブルで、借金するタイプだな。

 無理矢理にやめさせて、出た英雄の中から一体を選ばせた。

 連れて行けるのは、一体までらしい。


「次やれば、絶対、星五だったのに――っ!」


 戯言のように何度も叫んでいたが無視しておく。

 莉亜も英雄を手に入れたことだし、戦闘では少しは役に立つはずだ。

 こうして、無事に英雄を得た俺たちは、封印された扉の前に戻ってきた。

 扉に触れると、頑丈だった封印はあっさりと解け、下への階段が姿を見せる。


 ――ゴゴゴゴ


 吹き抜ける風が不気味な音を奏でる。

 俺たちは顔を見合わせ、階段を足を踏み入れる。

 次の『B2』は一体どんな階なのだろう。

 コツコツと足音が反響するたびに、次の階への期待と不安が膨らむ。

 なんだか、懐かしい感覚に、少しだけ胸が躍っていた。


今回手にいれた英雄~~~~~~~~~~~~~


俺『朱き龍亜人』星五 火属性、竜族、攻撃支援。

莉亜『中級魔道師』星四 闇属性、魔人族、回復支援。 課金額、五百円。

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