働かない使用人の名推理
訂正版
部屋の中を朝日が照らし始める。
殺風景な室内、家具などは殆ど無い寂しい部屋の主は、目覚まし時計が鳴るよりも前に目を覚ました。
起きると直ぐに準備を始める。
部屋着にしていたシャツとハーフパンツを脱ぎ捨て、仕事着である燕尾服に袖を通す。
時刻は五時半、丁度全ての身支度が済んだとき、そこでようやく時計が鳴る。
部屋の主はベッドの隅に時計を投げ、朝食の準備の為に部屋を後にした。
部屋の中を朝日が照らす。
物で溢れた室内、足の踏み場がギリギリ有るか無いかと言うほどに散らかっている部屋の主二人は、目覚まし時計が鳴ったのにも関わらず起きる気配がない。
時計の針が六時を指す頃、部屋の扉を叩く音が聞こえる。
一回、二回、三回…………二十回。
三回ノックする事を二十セット、しかし中の二人は絶賛爆睡中であるため、正直無意味だ。
ノックした者は諦めたのか部屋のノブを回し中に入る。
室内に入ってきたのは燕尾服に身を包んだ、所謂執事であった。
部屋の立派なベッドで眠る二人の人物に近づき、冷たい目つきで見下ろすこと数秒。
二人が起きないことを確認すると、両手を頭より高く上げ……寝ている二人の腹に一回ずつ振り下ろす。
「「!!?」」
お腹を押さえながら同時に起き上がる二人、目を見開き今にも吐き出しそうな顔をした彼女らを、冷たく見下ろしながらにこやかに笑う執事。
「相変わらず息がぴったりなところ悪いけど、寝坊を許した覚えはありませんよ?」
「「……だからって殴る必要はあります?」」
執事の目に負けじと二人は雑魚キャラのような笑顔を浮かべる、この時点で執事の笑顔に負けている。
「殴ってはいません、愛を振り下ろしただけです」
聞き分けない子供を諭すように言う執事、二人は悔しそうに睨みつける。
「早く着替えろください、こちらはお前ら様が朝起きれない分早く起きて朝食の準備を済ませたんだございます……」
今にも唾を吐きかけそうな顔で二人と話す執事、名前は酒呑童子蒼空。現在お世話になっている屋敷の中で唯一の執事である。
「「流石ですね~、偉い偉い」」
凄く興味がなさそうな顔をするのが、彼女らがお世話になっている屋敷にいるメイドで、三人の内の二人。名前は牛馬香と牛馬薫、彼女らは双子で姉は香の方である。
「…………」
彼女らの言に、こめかみをひくつかせながら黙る蒼空。
「全く朝から五月蠅い方に起こされたせいで眠いわ……」
「お姉様ったらそんな事言わないで、五月蠅いのは今に始まった事じゃないよ」
わざわざ五月蠅いと言う時だけ声を大きくして言う辺りに微妙な性格の悪さを感じる蒼空。ちなみに双子の見分け方は髪型と胸のサイズであり、普段の髪型は香がツインテールで薫がポニーテール、蒼空はショートヘア。胸のサイズは香が巨乳、薫が貧乳、蒼空が微乳だ。
「今日の髪型どうしましょう……」
「お姉様ならやはりツインテールが一番似合ってますよ!」
「やっぱり?流石私の薫ちゃん、ご褒美にチューしてあげたいわ!」
「お姉様ったら朝から大胆だよ~」
美人二人が見つめ合って頬を染めている光景を見て、蒼空の堪忍袋が爆散した、いつもの事だが。
「毎朝毎朝ギャアギャア喧しい!さっさと準備するかくたばれ!!くたばるなら疾くくたばれ!!!」
蒼空は大声をあげ、勢いよく部屋を飛び出す。強く扉を閉めたせいで大きな音が響く。
二人はその様子をやれやれと呆れてみせる。
執事が居なくなってから二人も急いで準備し始める。寝るときに着ていたパジャマを脱ぎ捨て、仕事着であるメイド服に着替え部屋を出た……。