静寂の乙女
「早かったじゃないか?」
物置にもたれかかって立っていた田中がにやりと笑った。
「例の物は?」
はやる気持ちを抑え、武田誠司は低い声でたずねた。
「安心しろ。仕事はきっちりこなしてきたぜ」
そう言うと田中は、物置の戸を開いた。
小柄な田中なら、すっぽりおさまってしまいそうなほど巨大なダンボール箱を取り出した。
「例の物だ。ここで確認するか?」
「いや……あまり人目につくような真似をしたくない」
「そうか」
「しかし、本当に報酬は原価と運賃だけでいいのか? その道のプロがハンドメイドでつくったんだろ? 末端価格なら、数百万になると聞いていたが」
「気にするな。伯父貴が趣味でやってることだ。それにお前にはいつも世話になってるしな。お前のほうこそ、この前は例の円盤をただで用意してくれただろ? 願わくば、お前とはこれからも良好な関係でありたいものだぜ」
「俺もだ。じゃあ、俺はこれで」
「ああ、ポリに見つからないようにな」
誠司は田中から受け取った巨大なダンボール箱を車にいれて自宅に戻った。
車を車庫に入れ、一端、家の中に入り、自宅に誰もいないことを確認する。
車に戻り、誠司はダンボール箱を抱えると、再び家に入って、大急ぎで階段を駆け上がった。
自室のダンボール箱を下ろして、鍵をかける。
誠司はカッターナイフを使って、ダンボール箱を開くと、絶叫をあげた。
箱の中にいたのは、全裸の物言わぬ女性。
恐ろしく美しいのに、その瞳は何もうつしておらず、生命が宿っていなかった。
誠司は物言わぬ女性を抱き上げた。
「会いたかったよーマイワイフ」
誠司はニヤニヤと気味の悪いを笑みを浮かべると、物言わぬ女性もとい人形の体を撫で回した。
「やーらかいなー、やーらかいなー。おっぱいやーらかいなー」
人形の体は、生身の女性そのもののように精巧につくられていた。
見れば見るほど、人間のようだった。
流石に産毛までは生えていないが、眉毛や睫毛の一本一本まで丁寧に植毛されており、女性としての部分まで、丁寧に作りこまれており、肩のあたりまである黒髪の質感も本物のようだった。
身長は160センチほどで女性としては平均的だが、出るところは出ており、引っ込むべきは引っ込んでいてプロポーションが抜群にいい。
頭のてっぺんからつま先まで、計算しつくして作られているのだから、当然といえば当然だ。
爆乳好きで知られる誠司にしてみれば、胸はもっと大きくてもよかったぐらいだが、それでも十分満足できる出来だった。
誠司はズボンにテントを張ったまま、携帯を取り出し、電話をかけた。
「おー田中、最高の出来だぜ……いや、まじですげーよ。アソコもリアルにつくられてるし。間近で見てもほとんど見分けが付かねえよ。えっ……円盤? ああ例のロリコンDVDだろ? ああ……まだDVDに落としてないんだよ。月曜日学校で渡す。それとも、メールで送ろうか? うん、じゃあ、俺これからお楽しみの時間だから切るわ」
電話を切って机の上に置くと、人形をお姫様抱っこで抱き上げ、ベッドに下ろす。
誠司は服を脱ぎ捨てると、ニヤニヤと笑ったまま人形に覆いかぶさった……