人違い
「三郎よ、田中三郎よ」
午前2時 俺の名を呼ぶ声がする
「うわあああ誰だ!」
俺が飛び起きると枕元にはボロボロの布をまとい杖をもった老人がいた
「わしの名は銀河仙人」
と、老人は言った
「田中三郎よ、まもなく宇宙人の大群が地球に攻めてくる。
彼らと戦えるものは田中三郎よ、おぬししかおらん。」
「えええ、そんないわれても俺は普通の高校生だし、明日も授業あるし」
「いーやおぬしこそ銀河の英雄と呼ばれる男、田中三郎じゃよ。伝承どおりの姿をしておる。今、証拠を見せよう。」
そういって銀河仙人は田中三郎を杖で殴った。
ボコッ
「あいたたたたた」
「あれ おかしいな もう一度殴ろう」
ボコッ
「痛いっつってんだろじじい!」
「むむむ?おかしいのう。伝承ではあらゆる攻撃を無効化するとあるが」
「だから!俺は田中三郎だけど、お前の探してる田中三郎とは別人なの!たぶんね!人違いだ!帰れ!」
「すみませんでした…」
銀河仙人は夜の闇の中に消えていった
ある日、宇宙人の大群が地球に攻めてきた。
各国の軍隊は奮戦するが敗退。地上は瓦礫の山と化し、宇宙人の地球への上陸を許してしまう。
そして宇宙人の代表団がなぜか田中三郎の住む長崎県勾玉町に来訪してきた。
彼らの代表は言った。
「田中三郎よ出てこい!我こそは宇宙軍司令官だ!大将同士の一騎討ちで決着をつけよう!」
「田中三郎は俺だあ!」
俺はやつらの前に出て叫んだ。
宇宙軍の歴戦の強者たちが震え上がった。
「た、田中三郎だ 本当にこの星に居やがった。伝承どおりの姿だ…」
「たった一人で出てきた。ただもんじゃねえ。へたに逆らったらやられる」
「田中三郎は俺だが、俺はおまえらの探してる英雄田中三郎じゃねえ!人違いだ!」
宇宙軍の総司令はうろたえた
「えええ 田中三郎を倒せば俺こそが銀河の覇者となれたのに…じゃあ俺はこれからどうしたらいいんだよ?」
「知るか!人違いで地球をこんなに破壊しやがって!迷惑だ!相手の立場で考えろ!帰れ!」
「すみませんでした…」
宇宙軍たちはふるさとへ帰っていった
民衆は田中三郎を取り囲んで賞賛した
「田中三郎様!素敵!」
「あなたは銀河の英雄じゃあ!」
「うるさい!人違いだ!」
おわり
あとがきを書くのは四回目になります。それはつまり、有り体に言えば僕があとがきを書くのが四回目であるということに外なりません。
これまでの三作が陰々滅々としていたので、今回は作風を360°変えてみました。
その経緯をかいつまんで説明します。
実は前作をいくつか母親に見せてアドバイスを求めたのです。
母は言いました。
「暗いねえ…しかも人物同士の関係が説明不足だねえ……へへっこのぼったくりバーの話はお前の体験談かい?」
さらに母は言いました
「もっと明るい、ヒーローの出てくるわかりやすい話を作りなさいよ」
僕は反論した
「日常と狂気の沙汰のさじ加減のちょうどいい作品を書いて、隙間市場を狙いたいんだよ!」
母はなにも言わず、苦虫を噛み潰したような顔で僕を見ていました。




