第1話「親友」
東京の山の方。
ここにある大きな家。
ここに住んでいるのは根岸愛。
彼女はクラッシュで怪我を負い、レースを降りた。
その後はこの家で自分のやりたいようにのびのびと暮らしていた。
「美味しく育つのよ〜、トマトちゃん」
植物に水をやり、行きたいところに行き、案外幸せな日々を送っていた。
「〜♬」
鼻歌を歌い、るんるんで料理を作っていた。
「できた!ボルシチ!」
まぁ、クセの強いものを作っていた。
そして、大きなテレビの前に座り、映画を見始める。
「やっぱト◯・クルーズかっこいいわ〜」
そして作ったボルシチを口に運ぶ。
「おいし…思ったより上手くできた…」
その時インターホンが鳴った。
「あ、頼んだワインでも届いたかな〜」
モニターに表示されていたのは明らかに宅急便ではないスーツを着た人物。
「あれ〜?税金納税忘れたものあったっけか〜?」
「はーい」
インターホンの通話ボタンを押す。
『ちょっと〜、開けてよ〜』
「なーんだ、真結か。今行くよー」
愛は玄関を出て真結を迎えに行く。
「真結〜、久しぶり〜。最近どぉ〜?」
「いや〜、忙しいよ。買収したVtuber事務所の世界市場開拓がかなり大変で」
彼女の名前は山野真結。
日本でも指折りの実業家。
彼女が作った携帯キャリアは国内で6割を超えるシェアを誇る。
そして今は真結の会社の傘下に入った新興Vtuber事務所の海外進出をアシストしている。
「私のところに来るなんて珍しい。どうしたの?」
「単刀直入に言うね。実は今、Elite Formula Seriesっていうレースに出てるの」
「あぁ、あのF1の登竜門的カテゴリーか。」
「でも、今、私が保有するWisteria GPが消滅の危機なの。」
「え」
「ポイントは5年前に取れた1ポイントだけ。加えてうちの自慢のドライバーは移籍しちゃった。来年勝てなければ、うちに出資してくれてる投資家グループからの出資が打ち切られる。」
「それにElite Formulaが再来年からリーグ制を採用することになって、来年15位までに残れなければ再来年GPリーグに残れない。そうなった場合は絶対出資は打ち切られる。」
「そうなるとどうなるの?」
「チームは解散、うちの会社は負債を抱えることになる」
「だから、愛に乗ってほしいの。」
「私が?」
「もう、ほとんどの国内のドライバーには断られて、もう頼るあてがないの」
「もちろん乗らせてよ」
「いいの?」
「だって、親友だもん。親友からの願いを断るわけにはいかないよ」




