第17話「隠し事」
バレンシア市街地サーキット。
F1でかつて使われていた廃墟と化したサーキットだったが、復活を遂げた。
ここで行われた大会でも愛は3位を獲得し、また高成績を残した。
そして次のギア・サーキットでの大会でも2位表彰台を獲得し、ファンたちはWisteria GPは今年残りのどこかで勝てる、と期待していた。
しかし、愛は次のバーレーン大会で地獄に落とされる。
バーレーン大会。
今回も2位で予選を終え、決勝レースでは優勝が期待されていた。
決勝レースがスタート。
37台が一斉に走り出していく。
最初のシケインをクリアし、次のヘアピンに飛び込んでいく。
そこで1位のマシンのイン側に飛び込んでいく。
しかしその時だった。
愛を襲う後ろからの衝撃。
そのまま愛のマシンは回転しながらグラベルで止まる。
この瞬間、5位のマシンが3位、4位をまとめてオーバーテイクしようとしたところ、ロックアップして制動距離が伸び、そのまま愛のマシンに突っ込む形になった。
レースは赤旗が宣言され、メディカルカーが愛のもとに駆けつける。
愛は現地の病院に搬送された。
病院。
「…ん。こ…ここは?」
「愛、クビよ。」
「え?」
「な、なにさ、いきなり」
「これは何よ!?」
真結の手に握られていたのは数年前、スーパーフォーミュラでクラッシュした時の診断カルテ。
「あ、そ、それは…」
「頚椎損傷、神経損傷。また強い衝撃を受ければ、失明、首下麻痺、最悪は死。」
「なんでこれを隠してたの!」
「だって…」
「あなたの言い訳なんて聞きたくもない!」
「…だって、あなたが私の体の状況を知ってしまったら、私なら勝てる、って話をくれたのに無駄にしてしまうって。真結の期待を裏切りたくなかった」
「……次のカタール大会は欠場する。ドライバーの代わりもいない。最後のヤス・マリーナ・サーキットはなんとか代役を見つける。」
「…」
愛は外を見る。




