第11話「赤旗」
決勝レース。
全車がフォーメーションラップを終え、グリッドに集まる。
レッドシグナルが5つ灯り、シグナルが消える。
37台が一斉に走り出していく。
1コーナーに流れ込んでくる。
その時、右フロントタイヤが他車と軽くぶつかる。
「タイヤが当たった!内圧チェックしてほしい!サスペンションのダメージもチェックしてほしい!」
『ちょっとまってね!』
そのまま走行を続けていく。
「…自分的には走りは大丈夫そうだけど。」
愛は前を追いかけていく。
『エンジニアにチェックしてもらったけど、サスペンションのダメージはなし!タイヤの内圧も大丈夫!』
「OK」
前のマシンの猛追を始める。
23周目。
『愛、とりあえず、ソフトタイヤに変えてみたから、これでペースアップを目指してみてほしい』
「OK!」
愛の前を走るのはSymphonia Racing Projectの伊東望。
彼もF1ドライバーとスーパーフォーミュラドライバーという最高峰の舞台で戦っている選手たちに育てられた天才。
ベテランの愛も苦戦する。
「強いわね…前のレーサー」
愛に隙を与えない。
2台は8周に渡る接戦を繰り広げていた。
「タイヤがキツイ!」
『わかりました。ミディアムタイヤの準備はできてます!この周入りましょう!』
38号車がピットに入ってくる。
ソフトタイヤからミディアムタイヤに交換される。
『作業完了!GO!GO!』
38号車が勢いよく走り出していく。
『現在11位、11位、前はVERTEX racingの作間菜央です』
「了解」
作間菜央はかつて、相田梨音とともにKYOJO CUPでAZUMIRacingを強豪に押し上げたドライバーだ。
作間のフォーミュラカーの扱いはベテラン顔負け。
しかし、まだ若手という部分が出る。
「作間さん、こんだけ詰められたらキツイでしょ?」
愛の言う通り、作間の走りに焦りが出てきた。
アスカリシケインに2台が差し掛かる。
作間先行、愛が追いかける展開。
第9コーナーまでは安定して脱出したが、第10コーナーでアウト側のグラベルにタイヤが取られる。
作間が姿勢を乱す。
その影響でストレートに向けての速度が伸びにくくなる。
「もらった!」
愛はとっさにKERSのスイッチを押す。
モーターパワーで加速していく。
10位に浮上。
ホームストレートを通過し、さあ、次のマシンだ。
と思った時、ステアリングのモニターに「RED FLAG」の文字が表示される。
「赤旗!?」
『最終コーナーで安達選手がクラッシュ!タイヤバリアにすごい速度で突っ込んだ!』
「結構やばめのクラッシュ?」
『そうだね。マシンがほぼタイヤバリアに埋もれてる』
『ピットに戻ってきて。』
赤旗が宣言されると、走行中のマシンは全車ピットに戻らなければならない。
その現場を通過した時、愛はあの日の自分に重なった。
それは鈴鹿サーキットで喫した大クラッシュの記憶。
「助けなきゃ。」
愛はピットに戻ってくるなり、安達のクラッシュの現場に走り出す。
「あ!ちょっと愛!戻ってきて!」
真結の制止も聞かずに一心不乱に安達のもとに走り出した。




