第10話「アップデート」
モンツァ・サーキット。
Wisteria GPのピットでは完成した新パーツの装着作業が行われていた。
「新しいフロントウィングと新しいフロア。この2つを改善したからタービュランスの影響は減ると思う」
「OK。あ、あと、ドライバーの件は聞いてる?」
「あぁ、橘さんのこと?」
「そう。私の愛弟子」
その時、愛と同じレーシングスーツを着た女性がピットに入ってきた。
「お、恋華、似合ってるじゃない」
「そうですか?」
「じゃあわかってるね。」
「はい。」
「今回はパーツのデータ採取も兼ねてるからお願いね」
「了解です」
38号車が甲高い音を響かせながら走り出していく。
「ねぇ、愛」
「なに」
「なんでこのタイミングで練習走行規定の若手枠を選んできたの?」
「ん〜?私の感覚」
「なるほどね」
ピットサイドから愛とエンジニアは見守っていた。
「…うん、これなら来年任せても大丈夫だね。」
愛が今回ここで橘恋華を連れてきた理由は、来年のドライバーとして適任かを見極めるため。
練習走行が終わり、橘が戻って来る。
「恋華、どうだった?」
「乗りやすいですよ。V12エンジンって聞いたから重いのかな、って思ってましたけど結構走りも軽くて楽しいです」
「空力パーツの方はどう?」
真結が聞く。
「事前に聞いていた接近時の姿勢が乱れる問題も特に感じられなかったです」
「よかった。じゃあ空力パーツの問題は解決だね」
「じゃあ、愛、予選頼むよ」
「りょーかい」
38号車がモンツァ・サーキットを疾走していく。
「すごい!フロントウイングとフロアを変えるだけでこんなに変わるんだ!」
愛も、新パーツの進化具合を感じ取っていた。
『4番手!4番手!愛、いいタイムだよ!』
予選終了後、車両保管エリア。
「…ふ〜。キツイな…体がかなりやられる…」
あのクラッシュから復帰を果たしたが、実際のところ、大クラッシュの影響で体は大きなダメージを受けていた。
「愛〜!よくやった〜!」
「やったよ!4位!」
「表彰台上がれるかも!」
「だね!明日のレース期待してるよ!」
「任せてよ!」




