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勇者の凱旋

 教会の鐘が鳴り響く。

 

 魔王討伐の報を携え、今まさに勇者が王都に凱旋したのだ。

 

 歓喜の声に王都は包まれる。

 美しく飾られた馬車の上から、勇者ルシエンは民衆に向かい手を振り続けていた。

 その傍らには王女エスカーシャの姿があった。


 春の桜のように舞い散る紙吹雪の洗礼を受けながら、ルシエンは気まずそうにエスカーシャに囁く。


「ねぇ、これ本当に良いのでしょうか。

本当は魔王を倒したの王女様なのに」

「いえいえ、私一人では倒せませんでした。

そもそもあの魔王は一人で倒せる相手ではないのです。

ルシエン様が魔王の写し身を受けてくれたから隙が生まれ、倒すことができたのです」

「う〜ん、でもそれなら僕じゃなくても誰で良かったんじゃないかなぁ」

「それも違いますわ。

ルシエン様が平凡であったからこそ、ミラージュの写し身の攻撃に耐えることができたのです。

これが他の勇者様だったなら、ゴーリオ様のように一撃で倒されていたでしょうし、私の攻撃も防がれたことでしょう」

「……、それって僕がすごく普通だってことだよねぇ〜」

「過ぎたるは及ばざるが如し、と申します。

それにルシエン様の良いところは強さではありませんから」

「僕の良いところって一体……?

僕はただ王女様から教えてもらったことをやって……」


 そこで、ルシエンは喋るのを止めた。

 エスカーシャがルシエンの唇に指を当て、止めたからだ。


「王女呼びは禁止です。

今後はエスカーシャとお呼びください。

あなたは私の旦那様になるのですから」

「えっ?! だって、僕にはそんな資格はないよ!」

「あら、魔王を倒した者が私の夫になるとお父様が宣言されたのをお忘れですか?

それとも私のことがお嫌いですか?」


 エスカーシャの問いに、ルシエンはなにも言えなかった。ただ、顔が真っ赤に染まる。


「資格なら、問題ありませんわ。

胸をお張りください。

だって、なにより私があなたを選んだのですから」


 エスカーシャはそう言うとルシエンの腕をぎゅうっと抱きしめた。


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