四天王③ レギオン 後編
数日後。
王城には、再び勇者たちからの報告が届いた。
どの手紙にも、同じ言葉が踊っている。
――勝利。
【ザインの手紙】
“レギオンは一か所に集まっていた。
俺様はその隙を逃さない。
極大剣撃をその中心に打ち込み一撃で撃破した
俺の剣術と戦術眼の勝利だ」
「やはり儂が見込んだ勇者だけのことはあるの。これなら魔王討伐も時間の問題であろう」
「そうでしょうか。ザイン様は自分より弱い相手にはとても強いかたにお見受けします。あと、とても忘れぽい方のようです」
そう答えながら、手紙の中身をもう一度思い出してみる。
(……集まっていた、ですか)
【ゴーリオの手紙】
“いっぱい集まってたからまとめてぶっ飛ばした!!
超スッキリ!!」
「勝ったと言っているのだろう。
いや、さすがだ。儂の言った通りになったの」
「……そうでしたっけ?
まあ、スッキリされたのならなによりです」
(こちらもなぜレギオンが集まっていたか書かれておりませんね。
理由なんて気にもしない、と言うところですか。
そもそも私の手紙を読んでくれたのやら)
【ベルトリアスの手紙】
“ベルトリアス様、体調回復せず
魔王討伐の継続困難“
「わっ?! これなに?」
「残念ながらベルトリアス様、リタイアのご様子です」
「ええ、本当? う〜ん、期待しておったのだがな。残念だ。
ま、他の勇者が倒しているから良いか」
「はい。気を取り直してまいりましょう」
【ガリオンの手紙】
”結果的に一か所に集結していたため、
僕が作った、天空火炎弓を使用して、一気に焼き払いました。
この魔道具の詳細と応用例は別紙三十枚参照”
「今回は魔道具の開発はしなかったのか」
「既存の魔道具に良いものがあったみたいですね」
「の割には手紙の枚数は前回よりも増えているぞ」
「既存の魔道具の応用例が全体の8割ほどでした。土木工事とかに応用できるとか書いてありましたね」
「いずれにせよ、
四天王の一角は討たれた。
勇者とは、こうあるべきだな」
と、お父様は満足そうに頷かれました。
その言葉はそのとおりなのですが、私は小さく唇を噛みます。
……誰も、どうして集まったのか、を気にしていない。
それが不満です。
レギオンがたまたま集まった? そんな馬鹿な偶然あるはずがないのです
どなたかが、私の手紙を読んで実行してくれたからこその勝利のはずです。
でもこの手紙を読む限り、だれも私の手紙のことなど気にしていられないようです。
その時です。最後の手紙が届きました。
【ルシエンの手紙】
”王女様の仰っていた通り、笛を吹いたらレギオンが集まってきました。
みなさんが攻撃している間、ずっと吹いていました。
途中でやめると散りそうだったので、ちょっと怖かったですけど、吹き続けました。
おかげで倒すことができました。村の人たちもみんな喜んでいます。”
手紙は、そこで一度区切られ、
最後に、少しだけ文字が小さくなっていた。
”これ、村で焼いてくれたパンです。
あと、笛のこと、ありがとうございました”
ああ、やはりこの人はちゃんと読んでくれたのだ、としばらくその手紙から目が離せませんでした
この人は、
功績を誇らない。
勝利を主張しない。
自分が倒したとも書かない。
ただ、頼まれたことを最後までやり遂げようとしている。
「相変わらず、意味不明な手紙を書いてくるの。
笛を吹き続けるとか。そんなことより、剣を振るとか、魔法を使うとかしてもらいたいものだ。
まあ、他の勇者様たちが優秀だから良しとするかの」
そっとその手紙を畳み、大事にしまう。胸が少しドキドキした。
そして、小さく微笑んだ。
「ええ、本当に優秀な勇者様が居られれますから、安心ですわ」
ベルトリアス様 リタイア 勇者残り4人
四天王 残り1体




