四天王② スクリーマー
四天王の第二の魔物、スクリーマー
やせ細った骸骨のような女性の姿をした怪物
その口から放たれる叫びは、音ではない
直接、心を揺さぶり、恐怖と後悔と罪悪感を呼び覚ます
精神攻撃
魔力に敏感な者ほどその影響を受けるという
魔法はほぼ効果がない
有効なのは距離を保った物理攻撃のみ
しかし、不用意に近づけば精神攻撃の餌食になる
自分を保てるかどうか、それが勝利を分かつ
王城には、
そのスクリーマーに挑んだ勇者たちの報告が続々と届いてきた。
【ベルトリアスの手紙】
”「……違う。
私は負けていない。
声が、聞こえただけだ。
いや、あれは幻聴だ。
私は正しい。私は――
なぜ皆、私を見ている?
静かにしろ。黙れ。黙れ黙れ黙れ――”
「……これは、一体、どうなっておるんだ」
「錯乱ですね。精神攻撃に完全にやられてしまったのでしょう」
「魔法の才能が高すぎたか」
「強い力の持ち主が必ずしも強い心を持っているとは限らない、ということですわ」
そして勇者と呼ばれている者が勇者にふさわしい心をもっているとも限らない。
「で、これはどうなるのだろうか?」
「とりあえず、今回はベリトリアス様はリタイア、と言うことだと思いますわ。
後に尾を引かねばよいですけど」
【ゴーリオの手紙】
”ぐおーーー!!
ぎゃーーー!!
頭がうるさい!!
でも次こそ勝つ!!
今度こそ本気出す!!”
「なんというか、前回と変わらんな」
「はい。書式も内容も、ほぼ同じですね。とりあえず、今回も折れてはいないみたいですけど」
「……単にうるさいだけのようにも思えるが」
【ガリオンの手紙】
”精神干渉型存在と仮定した場合、
防御魔導具の位相調整が――
いや、そもそも感情反射を遮断する
魔導回路を――
(以下、前回の倍以上の考察)」
「……これも読んだのか?」
「はい、一応。精神攻撃に耐える魔道具を作ろうとされているようです」
「また、10年計画かぁ……、この報告書、儂も読まんとだめかな?」
「立場上は、と言うところです。
一応眼鏡をご用意しましたが、使われますか?」
「うむ、……長いな。やっぱり止めておく」
お父様はガリオン様からの手紙をそっと脇にやられました。
「さようですか。まあ、読んでも読まなくても検討中であることには変わりはありませんから」
【ザインの手紙】
”距離を取っての斬撃。近づく必要などない。
遠距離から衝撃波で一方的に粉砕した。
叫び?
そんなもの、耳に入る前に終わっていた。
やはり俺が最強だ。
四天王など雑魚にしかすぎん。全部俺様が倒してやるから安心していろ」
「勝ったな。さすが剣聖と謳われているだけのことはある。
儂は最初からこの勇者だろうと思っておったのだ」
「前回の件は完全になかったことになっておりますね」
【ルシエンの手紙】
「戦いのあと、
その場所にぼろぼろの衣服と骨が残っていました。
たぶん、ずっと苦しかったのだと思います。
手厚く埋葬しました。
花も、少しだけ。
こういうのって、
悲しいですね」
「……これは、勝敗報告ではないな」
「はい」
「一体この勇者はなにをやっとるんだ。勇者は魔王を倒すのが責務であろう。
それを敵を手厚く埋葬するとか、意味が分からなん」
お父様はぶつぶつと文句を言われていました。
まあ、私はわからないわけでもないのですが。
この人は倒した後に残ったものもちゃんと見ているのね。
手紙をそっと胸に当ててみる。
不思議と胸が温かくなるのを感じた。
四天王 残り二体。




