金木犀の香りがする季節の中で
朝方、気持ちが良い風に吹かれながら
母親の車椅子、押しながら病院へ向かっていると
どこで咲いているのか
金木犀の香りが漂ってきた
ふと過ぎ去りし日々が脳裏をかすめる
母親に手を繋がれ保育園まで歩いた日々。
手が荒れ、かさかさだった。
熱が出て、少し離れた病院までおんぶされていた
母親の背の温もりとなんともいえない子守唄。
そして、時は過ぎ年老いた母の手を今度は
自分が手を繋ぐ、やはりかさかさ。
抱きしめてくれてた体、今度は自分が抱える。
でももう一度だけでいいから、あの頃のように、 ぎゅっと自分を抱きしめてくれたならと思う自分に
思わず苦笑い。
そして、金木犀の香りの中、病院に向かう。